[PR]

 今年10月にアメリカ疾病対策センター(CDC)は、風疹にかかったことがなく、風疹ワクチンも打っていない妊婦は日本に渡航しないようにという勧告を出しました。外国人渡航者を増やしたい日本にとっては、イメージダウンとなる残念な事態です。CDCの同時期に出された勧告は、コンゴのエボラ出血熱、ナイジェリア・シリアのポリオなども日本の風疹と同じ警戒レベル2となっています。今、日本の風疹流行はそのくらい危機的状況です。

 そういった影響もあったことと思いますが、日本医師会が、厚生労働省に風疹ワクチンについての要望をしました。ワクチンを確保し、これまで打つ機会のなかった人が全員受けられるようにしてほしいという内容です。

 11月現在、今年の風疹感染者が1800人を超えていますが、昨年1年間の10倍以上となる1千人を超えようとしていた9月に厚労省の出した対策が、来年度の2019年4月に風疹の抗体検査を無償にするというものだったからです。予防接種率の低い30~50代の男性が、新たに無償化されます。

 報告される風疹感染者の多くが30~50代の男性ですが、その人たちはそもそも風疹ワクチンを打つように言われたことがない世代でした。当時は自然感染すればよいという考え方もあり、医療関係者でなければ、風疹はワクチンで防げるということを知る機会はなかったでしょう。怠慢やワクチン忌避のために、感染してしまったわけではないんです。当時の厚生省の方法、女子だけに風疹ワクチンを受けさせるというやり方がダメだったのです。他の国でも、女子だけに予防接種をしてダメだった歴史があります。

 感染予防には風疹ワクチン、あるいは麻疹・風疹混合ワクチン(MRワクチン)を受けている必要があります。なかには、1回では抗体が十分にできない人もいます。そういう場合でも生涯で2回ワクチンを受ければ、予防効果があると言われています。大人は1カ月あければ2回目を打てます。

 厚労省が先頭立ってワクチンを推進しないものの、市区町村では風疹抗体検査や予防接種の費用を助成する動きがあります。ぜひ、お住まいの地域の広報やホームページを確認し、保健所などにお問い合わせ下さい。

働き盛りの男性への対策は

 自民党は、小泉進次郎厚生労働部会長が提唱し、すべての所属議員に風疹抗体検査を受けるよう通達しました。また、感染者の多い30~50代の男性と言えば働き盛りです。小泉氏は、経団連に協力を要請しました。予防接種歴を確認し、風疹にかかった恐れのある従業員は休ませて、医療機関に行くよう促してほしいというものです。厚労省の発表したものより、実際的な方法だと思います。

 さらに、国民民主党は10月30日に抗体検査をせずに、MRワクチン接種を国会議員、議員秘書、党職員を対象として行いました。これは、ワクチン接種率を高め、感染者を増やさないためには最良のやりかたです。

 風疹抗体価を調べる場合、医療機関に行って採血する必要があります。通常、検査結果が出るまでに数日間かかります。そして結果を聞きに行き、抗体価が低い場合にはその場で、あるいは別の機会にワクチンを受けます。最低でも2回、クリニックや病院に行かなくてはいけません。

 一方、風疹にかかったことがあるか、ワクチンを受けたことがあって、抗体が十分ある人に更にワクチンを打ったらどうなるでしょう?まったく問題ありません。より抗体が上がり確実に感染を予防できます。

 そして、ワクチンの製造会社は風疹単体ワクチンを作ることを終了し、今後はMRワクチンだけにする予定です。実際、風疹だけのワクチンは手に入りづらい状況です。今年のゴールデンウィークには、麻疹が流行していたように、麻疹も風疹も感染者が広がる素地が残っています。検査をせずにワクチンを打つなら、医療機関に行くのが1回で済みます。働き盛りの忙しい人達にはベストな方法であることがおわかり頂けるでしょう。

風疹の怖さ知って クラウドファンディングも

 そうは言っても、なかなか医療機関がやっているときに足を運んで予防接種をすることは気が向かないという人は多いことと思います。病気でもなんでも、体験した人の話はより身近に感じることができますね。最近、よくメディアに取り上げられる先天性風疹症候群の方のお母さんの声を聞いてみましょう。https://youtu.be/YQhn3gultPM別ウインドウで開きます

 いま、より多くの人に風疹ワクチンに対する関心を持ってもらおうと、患者会によるクラウドファンディングが行われています。沖縄での実話、先天性風疹症候群の聴覚障がい児のためのろう学校「北城ろう学校」を舞台にした関西芸術座「遥かなる甲子園」の公演が2019年1月14日大阪で、2月24日に東京で行われます。一定額以上の寄付をするとリターンとしてチケットがもらえます。https://readyfor.jp/projects/hand-in-hand別ウインドウで開きます ぜひ、サイトをチェックしてみて下さい。

 私は先日、「『ワクチンは危険で受けるべきではない』という運動をする人達の主張は、ここがおかしい」というテーマで話すトークイベントに参加しました。ワクチンの重要性を理解している人たちで会場がいっぱいだったことに感動しました。風疹についてもより多くの人がワクチンの大切さを知ってくれるよう願います。

国立感染症研究所 風疹Q&A(https://www.niid.go.jp/niid/ja/rubellaqa.html別ウインドウで開きます

<アピタル:小児科医ママの大丈夫!子育て>

http://www.asahi.com/apital/column/daijobu/(アピタル・森戸やすみ)

アピタル・森戸やすみ

アピタル・森戸やすみ(もりと・やすみ) 小児科医

小児科専門医。1971年東京生まれ。1996年私立大学医学部卒。NICU勤務などを経て、現在はさくらが丘小児科クリニックに勤務。2人の女の子の母。著書に『小児科医ママの「育児の不安」解決BOOK』(内外出版)、共著に『赤ちゃんのしぐさ』(洋泉社)などがある。医療と育児をつなぐ活動をしている。