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 登山の楽しみの一つに「山での食事」があります。最近は、コンビニで買った食材を携帯用ガスバーナーで調理した温かい「山ごはん」を楽しむ登山者が増えています。特に秋山や冬山では、温かい食べ物が冷えた体に活力をみなぎらせてくれます。今夏、出版され話題の「秒速!山ごはん」(山と渓谷社刊)の著者におすすめのレシピを聞きました。

 本の著者は、山と渓谷社山岳図書出版部の萩原浩司部長と、人気ブログ「山めし礼讃―山料理 山ごはんレシピの記―」を運営するげんさんの2人です。「最速30秒! 最長300秒でつくれる激ウマ山ごはんレシピを紹介します」が、キャッチフレーズです。萩原さんは、青山学院大山岳部OBの登山家としても有名です。NHKのテレビ番組(BS1)「実践!にっぽん百名山」の進行役を5年間務め、約150回出演しました。番組では登山技術だけでなく、「誰でも簡単にできる山ごはん」など山での食事を取り上げたところ、視聴者から予想以上の反響があったそうです。

 萩原さんは「子どもや初心者を山へ連れて行った時、一番の思い出は頂上の景色や達成感でなく、そこで食べたコンビニのおにぎりの味なのです」と言います。本を書くきっかけは、「ひと手間かけて、もっとおいしいものを食べれば、登山がさらに楽しくなる」と思ったのが理由です。

 最近は、携帯用のガスバーナーやクッカー(小型の鍋)、フライパンなどの調理器具が小型で軽量化が進んでいます。また、コンビニでは、サンマの蒲焼き(レトルト)やソーセージなど様々な食材がそろいます。例えば、インスタント麺に、こうした食材や調味料を加えて調理すれば、素早く手軽においしい山ごはんが作れます。

71品のレシピ、著書で紹介

 著書では、萩原さんとげんさんによる71品のレシピを紹介。著書「秒速!山ごはん」(山と渓谷社刊 定価=1400円+税)から、おすすめのレシピを紹介します。

【元祖! コンビニおにぎりツナチャーハン】

◎材料 コンビニおにぎり1個、ツナ缶1缶、マヨネーズ適量、しょうゆ適量

◎調理用具 フライパン

①フライパンにツナ缶を汁ごと全部とおにぎりを入れて、中火で炒める。おにぎりの海苔は、後から使うので、とっておく。

②ツナとごはんがよく混ざったら、マヨネーズを入れてよくなじませ、しょうゆを回しかける。

③ツナに少し焦げ目がつくくらい炒めたら、おにぎりから外した海苔をちぎってふりかける。

【ポテきん焼き】

◎材料 ベーコンポテトサラダ(コンビニ総菜)1パック、きんぴらごぼう(コンビニ総菜)1パック

◎調理用具 フライパン

①最初にフライパンにきんぴらごぼうを入れて、中火で軽く炒め、ポテトサラダを投入する。

②きんぴらごぼうとポテトサラダがよく混じるように、かき混ぜながらさらに炒める。お好みで七味唐辛子をふる。

【〃加糖〃文太郎しるこ】

※冬山登山がまだ一般的でなかった昭和初期、たった一人で厳冬期の北アルプスを縦走して世間を驚かせ、「不世出の単独行者」と呼ばれた加藤文太郎氏。新田次郎の「孤高の人」のモデルとなった加藤氏が愛したレシピを再現。

◎材料 スライスもち(3秒で柔らかくなるタイプ) 4枚、甘納豆100グラム、コンデンスミルク適量、水100ミリリットル

◎調理器具 シェラカップ(金属製の食器)

①シェラカップに甘納豆と水を入れ、沸騰する手前で弱火にして、スライス持ちを削り入れる。

②もちがとろとろになったら、コンデンスミルクを注入してさらに「加糖」する。

「山での楽しみ増やすこと目的」

 本で紹介されているレシピは、スピード重視です。調理時間は5分以内(事前の仕込みは含まず)。中には30秒を切る料理もあります。登山中は、特にランチの場合、食事の後も行動しなくてはならないので、長時間煮込むなどの手間をかけた料理は難しいためです。栄養価については、「日帰り登山のランチが基本なので、特に栄養価にはこだわっていません。山での楽しみを増やすのが目的です」と笑顔で答えてくれました。

 萩原さんのレシピでは、フライパンを使うケースが多いのですが、「フライパンだと調理器具がそのまま食器にもなるので、便利です」とのことです。食事後は、トイレットペーパーなどで拭いて、下山後に洗えば、水の節約にもつながります。

 「山ごはん」が人気を集める理由の一つに、テント泊のブームも一役かっているようです。北アルプス穂高連峰の登山基地として知られる涸沢で涸沢ヒュッテを営む山口孝さんは「ここ数年、ヒュッテ前のテント場では、1人用テントが増えています。山小屋泊まりでなく、山では1人でゆったりと過ごしたいという登山者が増えているのでしょう。テントや調理器具も軽量化が進み、かつてのような重荷を背負わなくても登山を楽しめるようになったからだと思います」と分析しています。

登山の疲れ吹き飛ぶおいしさ

 私も登山の際、携帯用ガスバーナーを持っていきますが、これまでは、湯を沸かしてインスタントコーヒーを飲んだり、カップ麺を食べたりする程度でした。

 11月中旬、長野県北部の飯縄山(1917メートル)に登った際、萩原さんの取材に触発され、山ごはんにチャレンジしました。コンビニで買った塩おにぎりとレトルトの豚汁を、小型の鍋にお湯を沸かして煮立たせるだけ。登山の疲れが吹き飛ぶおいしさでした。みなさんもぜひ、自分なりの「山ごはん」を考案して、実際に山で調理して味わってください。

<アピタル:近藤幸夫の山へ行こう・健康と安全>

http://www.asahi.com/apital/healthguide/climb/(近藤幸夫)

近藤幸夫

近藤幸夫(こんどう・ゆきお) 朝日新聞山岳専門記者

1959年。岐阜市生まれ。信州大学農学部卒。86年、朝日新聞入社。初任地の富山支局で、北アルプスを中心に山岳取材をスタート。88年から運動部(現スポーツ部)に配属され、南極や北極、ヒマラヤで海外取材を多数経験。2012年から日本登山医学会の認定山岳医講習会の講師を務める。現松本支局長兼山岳専門記者。