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 むくみがひどくて、身体が重い、やる気が起きない、洋服が入らなくなった・・・。2年前、私は「がん治療の影響で生じるリンパ浮腫」を発症し、体のむくみに悩まされることになりました。一時は、自宅でのセルフケアで制御できていたものの、ある事情で、ここ数か月で再び悪化しています。日々の体重の増減に伴って、体調の浮き沈みが激しい今日この頃――。がん経験者のリンパ浮腫に関する情報が多くないことに悩む一人として、発症から2年の経過と今後についてまとめます。

 リンパ浮腫とは、リンパの流れが停滞することで起こるむくみのことを言います。乳がんや子宮がんなどの手術や放射線治療でリンパ系を損傷した場合や、がんの化学療法の後遺症として起きるもので、リンパ管で水分やたんぱくがうまく回収されなくなります。

 私のむくみの症状が目立つようになったのは、2016年5月のことでした。車いす生活で座った姿勢が長いことから、常に下半身はむくんでいたけれど、一層ひどくなり、体幹や上半身へとむくむ範囲が広がっていきました。このとき、体重は69キログラムまで増えていました。

 車いすになってから体重を計る機会が減っていたので正確なところは分かりませんが、10数キロ増えたことは間違いありません。2016年11月にリンパ浮腫と診断されて以後、1カ月の入院治療に加えて、退院してからもセルフケアに励むことで、2018年9月時点でマイナス12キロの57キロまで減らすことに成功していました。

重要な毎日のセルフケア

 リンパ浮腫の治療では、毎日のセルフケアが重要だと言われています。リンパ管に回収されるべき物質は日々、生産されているため、病院だけの対応では追いつかないのです。無理なく続けられるような習慣として、自分の生活の中に落とし込んでいく必要があります。

 セルフケアの方法が、ドレナージ(排出)と圧迫療法と言われるものです。ドレナージは「用手的リンパドレナージ」と言われ、むくみのある場所の皮膚に手をあてて、マッサージをするようにして、手のひら全体で皮膚表面をスライドさせるような要領で行います。末梢(まっしょう)のリンパ液がきちんとリンパ節へ流れ込むように導くことが目的です。

 圧迫療法は、皮下組織内の圧力を高めることで、リンパ液がたまるのを防ぐ効果があります。弾性ストッキングや弾性スリーブなど「常に身に着ける系」と、夜寝ている間に両手両足を弾性包帯でぐるぐる巻きにする「ミイラ系」に大別されています。

 弾性ストッキングや弾性スリーブは毎日着用するのが基本ですが、圧迫が強いだけに着用するのは至難の業です。とくにストッキングは、私の場合、足が麻痺(まひ)しているため、はく動作に逆らう力がありません。足も一緒に持ち上がってしまい、コツがいるうえに結構な力技でもありました。また、夏場であれば、暑さとの戦いでもあります。季節柄、肌の露出が増えるため、圧迫着衣が見えないようにと、おしゃれとの葛藤があるのです。

圧迫療法できず体重が・・・

 しかし、私には積極的な治療ができない事情があります。リンパ浮腫の治療を始めて4カ月ほど経ったとき、再び骨盤を骨折しました。小児がんの晩期合併症でもろくなっている私の骨盤にとって、弾性ストッキングをはくことは重すぎる負荷だったようです。リンパ浮腫の治療において、根幹となる圧迫療法ができないというのは致命的でした。それ以降は、圧迫着衣は厳禁となり、ドレナージが私にできる唯一のセルフケアとなってしまいました。

 するとこの2カ月で、みるみるうちに6キロも体重が増え、セルフケアの限界を感じ始めてきました。毎朝の体重測定が日課ですが、計るまでもなく増えているのが感覚的にわかります。私の場合、両手両足のむくみで収まっているうちは、まだ良いけれど、体幹のむくみが顕著になると急につらくなってくるのです。

 身体が重い、やる気が起きない、洋服が入らなくなる、という悪循環・・・。積極的な保存治療(圧迫療法やドレナージ)ができないからには、これ以上の改善は見込めません。このまま体重が増えれば、骨盤への負荷も高まり、さらなる骨折を引き起こしかねません。

がん仲間のSNSに光明

 なにか手を打たなくてはと思案していたとき、「リンパ管細静脈吻合(ふんごう)術」なる治療が目を引きました。きっかけは、がん仲間がSNSに投稿していた手術リポートでした。オペ前後の写真を比較すると、効果は一目瞭然です。

 この手術は、流れの滞っているリンパ管を切って、静脈につなぎ直しちゃおうという理屈です。リンパ管は身体の中を巡り巡って、最終的には左鎖骨あたりで静脈へ合流する仕組みになっているので、合流する場所が少し早くなるだけというシンプルな発想のようです。私に合うかどうかは分からないけれど、検討する価値はあるだろうと少し希望が見えてきた気がします。

 手術に適合するのかどうかを含めて専門医へ相談をするべく、早速、動き始めました。がん仲間の体験談によると、医師としても人間的にも素晴らしい方だということから、主治医を紹介してもらうことに。そして、その医師によると、麻痺を伴うリンパ浮腫は難しいうえに症例も少ないとのことです。

 どうなるか未知数ではあるけれど、麻痺のない上半身には効果が期待できることから、まずは検査をしてみようという運びになったのでした。少しでも良い方向へ進む道筋が見えればいいなと思うとともに、皆さんへよいご報告ができることを、私自身、楽しみにしています。

<アピタル:彩夏の〝みんなに笑顔を〟>

http://www.asahi.com/apital/column/ayaka/(アピタル・樋口彩夏)

アピタル・樋口彩夏

アピタル・樋口彩夏(ひぐち・あやか)

1989年、東京生まれ。中学2年の時、骨盤にユーイング肉腫(小児がん)を発症。抗がん剤、重粒子線などの治療を経て、車いすでの生活に。「いつ、誰が、どんな病気や障害をもっても、笑顔で暮らせる日本にしたい!」を目標に日々、奮闘中。当事者の視点から建設的に伝えることをモットーに執筆・講演も行っている。