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 みなさんは、年末年始をどのように過ごされましたか。まとまった休みになった人がいる一方で、仕事が忙しかった人、施設に入所している高齢の家族を一時帰宅させて、一緒に過ごした人もいたことと思います。それぞれの立場で大変な年末年始を過ごした方へのねぎらいと、介護にたずさわる皆さんにいきいきと過ごしてほしいという願いを込めてコラムを続けていきます。

 介護施設のように、休日でも交代で勤務しなければならない業種では、大型の連休の際、一部の人に勤務が集中してしまうことがあります。そんなとき、忙しさからイライラしやすくなる人もいるでしょうし、中には、シフト表を見ながら、チームのなかに夜勤や休日出勤が少ない人がいることを、不満に感じる人もいるかもしれません。

 でも、勤務が多様化するなかで夜間や休日は働けないという人もいるし、反対に時間外などの手当がつく仕事を率先してやりたいと考える人もいます。他人の夜勤の数をかぞえて「あの人は楽をしている」「私にばかり、大変な仕事が回ってくる」と自分と比較しても、不満が増すだけです。

 管理者の側も、多様な働き方を統一して完全に平等に勤務を調整することはできず、悩ましいところです。

 

 これまで相手の考え方を変えるのは難しいと書いてきましたが、相手の置かれた状況や出来事に対しても同じように言える場合があります。特に目の前の状況や出来事、身近に接する相手に対しては、不満や怒りが強くなりやすいものですが、簡単に変えられないこともあります。うまくいかない現実を前にして、不満ばかり言っていても状況が改善しないばかりか、自分の人間関係や信頼を失いかねません。できればそうした状況や出来事に揺さぶられない心の安定を保ちたいものです。

 「相手が間違っている」「相手の状況を変えよう」と考えがちな人は、まず、自分のことに注目してみましょう。他人に目を向けると不満が増しますが、自分に向き合って自分のことに集中できれば他人と比較する必要がなくなります。

 例えば、お正月に新年の目標や行動計画を立てた人もいると思います。これも自分と向き合う良い機会です。また、自分のできていることを書き出してみる、忙しかった日は「今日はがんばった!」と自分で自分をねぎらってみる、「私は利用者の希望を尊重したい」など自分が大事にしたいことを確かめてみることも自分と向き合う作業になります。

 

 もちろん、介護の現場が忙しい状況は変えられないから仕方がない、というつもりはありません。現場が負担を負い続けるといずれ破綻してしまいます。制度やシステムの改善、人材確保、業務の効率化など、国や職能団体、施設や部署などの単位で変えていく必要のあることも多くありますし、そのためには現場から声を上げていくことは不可欠です。

 自分に向き合ってみてもやっぱり勤務に納得できないと思えば、管理者などに自分の意見を伝えてみても良いと思います。ただし、自分の意見が絶対ではなく、相手が同意しない場合もあると心得ておくことが大切です。

 伝えた後は、自分の伝え方や伝えたという事実を自分で評価しましょう。誰かと比較して不満を増幅させたりせずに、自分に意識を向けて、自分のがんばりを認め、自分がいきいきと働き続けることに集中していきましょう。

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 このコラムでは、医療や介護の場面を取り上げながら、怒りやイライラといった感情との付き合い方を紹介しています。

 

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◆編集部から

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<アピタル:医療・介護のためのアンガーマネジメント・コラム>

http://www.asahi.com/apital/healthguide/anger/(アピタル・田辺有理子)

アピタル・田辺有理子

アピタル・田辺有理子(たなべ・ゆりこ) 精神看護専門看護師・保健師・精神保健福祉士

横浜市立大学医学部看護学科講師。大学病院勤務を経て2006年から看護基礎教育に携わる。アンガーマネジメントファシリテーターTMとして、医療・介護・福祉のイライラに対処するためのヒントを紹介する。著書に『イライラとうまく付き合う介護職になる!アンガーマネジメントのすすめ』(中央法規出版)がある。