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 新しい年になり、お正月休みも終わりましたね。子どもさんたちもいつもの園・学校での生活にも慣れた頃でしょうか?新学期で疲れが出る頃、はやるのがインフルエンザです。各地で流行が本格化し、私のクリニックでも患者さんが増えてきました。

 インフルエンザかもしれないと疑うのは、発熱したときが多いでしょう。普通の風邪だと、39度あっても意外に子どもは元気なことがあります。また、発熱するスピードも37、38度と徐々に上がってくることが多いものです。

 しかし、インフルエンザは気づいたときには39度を超えていたり、既にぐったりしていたりします。急激な高熱と関節痛や筋肉痛、頭痛が特徴です。言葉で「つらい」と言えない小さい子でも、痛みを感じているのかもしれません。他には、鼻水やせき、気持ちが悪くなったり吐いたりといった消化器症状が出る場合もあります。

迅速診断、いつ受けると確実?

 小児科に行くと、いつ熱が出始めたか聞かれることでしょう。私は「37.5度を超えたのは何時ごろ?」ととても具体的に尋ねます。日本の医療機関では、インフルエンザの迅速診断キットを持っているところが多いのですが、発熱して12時間以上経っていないとキットを正確に使えません。

 経験上8時間くらいでも陽性が出ることがありますが、細い綿棒を鼻の奥に入れる検査です。「注射より嫌だ」と言う子どもが多く、やるなら確実に検査したいのです。家族内にインフルエンザの人がいて同じ症状だとか、周囲で流行しているというときには検査をしないこともあります。

 検査ができないからと言って、早く小児科にかかってはいけないということはありません。症状を和らげる薬、例えば解熱鎮痛薬や去痰薬(たんを切りやすくする薬)などを出されることがあります。

抗インフル薬も万能ではない

 インフルエンザになると、すぐに抗インフルエンザ薬を飲まなければと思う人が多いかもしれませんが、実はほとんどが自然治癒します。5〜7日間、安静にして水分を十分に取ることができれば、抗インフルエンザ薬は必須ではありません。

 2009年に新型インフルエンザのパンデミックがあった際、世界保健機関(WHO)が抗インフルエンザ薬のタミフルを地域住民の健康を守るために必要不可欠な医薬品リストに入れていました。タミフルは、発熱から48時間以内に内服を始めると熱が早く下がると言われていました。しかし、その後の調査でタミフルは、熱やつらい症状のある期間を8時間〜1日弱短縮するのみで、肺炎など重い合併症を予防することがないとわかり、リストから外されました。

 他の抗インフルエンザ薬、リレンザ、イナビルも効果は同様です。点滴の抗インフルエンザ薬は、通常入院するような重症例にしか使われないし、新しい薬であるゾフルーザも発熱期間の短縮はタミフルと差がありませんでした。

 インフルエンザは、もともと呼吸器や心臓の病気のある人や、高齢者、乳幼児では、合併症を起こして重症化するリスクがあり、注意が必要です。頻度は少ないものの、5歳未満では、インフルエンザ脳症、中耳炎、のどがはれ呼吸困難などになるクループ、肺炎を起こすこともあります。ですが、基礎疾患のないもともと健康なお子さんの場合、個人的には抗インフルエンザ薬の必要性をあまり感じません。

 吸入薬であるイナビルは1回吸えばいいので便利だと言われていました。ですが、吸入がうまくいかずこぼしてしまったり、せき込んで出てしまったりした場合、保険診療上、再び処方して吸入し直すことができません。うまく吸入できたとしても、熱が下がらないとか一度下がったけれどもまた熱が上がってきたという際に、また抗インフルエンザ薬を使うということもできません。

 インフルエンザは前述の通り、消化器症状が出ることがあります。ゾフルーザのように1回だけ内服すればいいという薬も、インフルエンザの症状で嘔吐してしまった場合に、飲み直すことができないので治療法としては確実性に欠けるのではないでしょうか。そして、確実に服用しても1日早く解熱するかどうかなのです。

 発熱は、ウイルスに対する免疫が働いているということなので、必ずしも熱を下げなければいけないわけではありません。38.5~39度以上の発熱で、ぐったりしているようであれば解熱剤のアセトアミノフェンを使うこともあります。

自宅での看病、ポイントは?

 抗インフルエンザ薬を使っても使わなくても、かかった子を看病するときには、以下のような点をおさえましょう。

 まず、必要なときにいつでも横になれるよう、家の中で静かに過ごします。すぐに水分が取れるように、飲み物を用意しておきます。多少おなかを壊していても、飲み物や食べ物はおかゆや離乳食のようなものでなく、いつもどおりでかまいません。食事を嫌がる際には、水分だけ補給しましょう。

 また、特に発熱して48時間以内は注意深く見守ります。意味のわからない行動や言動があったり、ろれつが回らなかったりすることがあります。以前、10代の子にこういう症状が表れて問題になり、タミフルを内服したせいではないかと言われていましたが、今では薬の服用の有無によらずインフルエンザにかかった時に起こりうると考えられています。呼吸が苦しい、けいれんする、意識がおかしいという場合はすぐに医療機関にかかりましょう。

 重症化してしまうリスクを考えるとやはり、インフルエンザワクチンは受けておいたほうが安心です。WHOは、生後6カ月から5歳未満は優先的にインフルエンザワクチンを受けるべきだと言っています。

 真冬から春先まで流行するB型インフルエンザもありますから、今受けても遅すぎることはありません。足りなかったワクチンも入荷が追いついてきました。お近くの小児科や内科に聞いてみましょう。

<アピタル:小児科医ママの大丈夫!子育て>

http://www.asahi.com/apital/column/daijobu/(アピタル・森戸やすみ)

アピタル・森戸やすみ

アピタル・森戸やすみ(もりと・やすみ) 小児科医

小児科専門医。1971年東京生まれ。1996年私立大学医学部卒。NICU勤務などを経て、現在はさくらが丘小児科クリニックに勤務。2人の女の子の母。著書に『小児科医ママの「育児の不安」解決BOOK』(内外出版)、共著に『赤ちゃんのしぐさ』(洋泉社)などがある。医療と育児をつなぐ活動をしている。