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 「うつぶせで寝てしまったときに、仰向けに直さないといけないでしょうか?」と聞かれることが、外来でよくあります。せっかく寝た子の向きを変えたら、起きてしまう可能性もありますね。かといって、うつぶせ寝は乳幼児突然死症候群(SIDS)のリスクがあると聞くと心配でしょう。

 SIDSは、病気を持っていたり感染症にかかっていたりしない、なにも予兆のなかったお子さんが突然亡くなるという原因不明の病気です。リスクと考えられるものを除いておく他に、予防法がありません。よく知られているリスクが、うつぶせ寝です。

 うつぶせになった後に、自分で仰向けに向きを変えることができるくらい月齢・年齢の進んだ子は、うつぶせで眠っているからといって家庭でも仰向けにしなくても大丈夫です(厚生労働省【乳幼児突然死症候群(SIDS)について、よくあるご質問】https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000181942_00001.html別ウインドウで開きます)。

 ただ、1歳未満のお子さんは、不慮の事故で一番多いのが窒息です。顔が埋まるほど柔らかい敷布団を使ってはいけません。顔にかかって取れなくなるような掛け物を使うのもよくないですし、よだれかけや衣服のひもは取って寝かせます。仰向け寝でもSIDSが起こることがありますが、うつぶせ寝のほうがやはりリスクが高いので、寝返りが自由にできない月齢の小さい子は仰向けに寝かせましょう。

母乳やたばことの関連は

 また、母乳栄養の赤ちゃんの方がSIDS の発症率が低いという調査があります。ただ、母乳しか与えていないからSIDSにならない、人工栄養(粉ミルクだけ)だったら突然死をするというわけではありません。

 2015年の1年間、SIDSで亡くなった赤ちゃんは96人。同年のアンケートで、生後3カ月の時点で混合栄養を除く「人工栄養」と答えた人は10.2%、出生数から推計すると10万人以上の赤ちゃんが人工栄養だったと考えられます(厚生労働省平成27年度乳幼児栄養調査結果の概要https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11900000-Koyoukintoujidoukateikyoku/0000134460.pdf別ウインドウで開きます)。仮に亡くなった赤ちゃん全員が人工栄養だったとしても、ミルクしか飲んでいない子の1千人に1人弱の割合。母乳を飲まずに育った子でもほとんどがSIDSになりません。

 母乳栄養がいいことは当然わかっているけれど、周囲から母乳を与えるよう大きなプレッシャーを感じている母は多いものです。母乳が出ないからといって悲観せず、他のリスクを減らすようにしましょう。それぞれのご家庭で、母乳をあげるために努力できる時間、その努力を支えてくれる家族や正しく指導してくれる人がいるかどうか、知識、社会的状況は違うのですから。

 たばこも、SIDSのリスク要因と言われています。子どもには不必要であるだけでなく、SIDSのリスクを4倍にし、将来の気管支ぜんそく、心筋梗塞、発がん性にも影響します。お母さんだけでなく同居している人は、禁煙してほしいですし、無理でも本数を減らすなどしましょう。

添い寝やおくるみは?

 危険要因であるかはっきりとわかっていませんが、添い寝とSIDSの関連が話題にされることも多いです。 ただ、日本を含むアジアは昔から家族一緒に同じ部屋で寝る文化です。他の先進国と比較し、日本ではSIDSが少なかったことから、硬い敷布団や重くないかけ布団など赤ちゃん用の寝具を使えば、一緒に寝ることは危険ではないのではないでしょうか。ソファーのような柔らかいところに一緒に寝ることはよくないようです。

 スワドリング、おくるみ、おひなまきと呼ばれるものは、布でしっかり包んで赤ちゃんがよく眠れる、落ち着くと言われています。仰向けで、大人が目を離さずに見ていられればいいでしょう。しかし、スワドリング中に突然死で見つかった症例が22例報告されています(NPO法人SIDS家族の会 http://www.sids.gr.jp/riskfacter_sids.html別ウインドウで開きます)。赤ちゃんの顔に何かかかったり、何かの拍子でうつ伏せになってしまったりした場合、赤ちゃん自身の手の自由、体の向きを変える自由が奪われていますから、危険です。温め過ぎも突然死の原因の一つではないかと考えられていますから、私は避けたほうがいいと思います。

 赤ちゃんが寝ている間、特に小さいうちは、何かと神経を使いますね。私も長女が生まれてしばらくは、呼吸をしているかどうかを確かめたものです。意外に知られていないものに、感染症で無呼吸になるということがあります。RSウイルス感染症や百日咳は、通常、発熱や咳が出ますが、月齢が小さいとなにも症状が出ないまま無呼吸で発見されることがあります。ワクチンで予防できるものはすべて受け、SIDSのリスク要因を避けて、寒い冬を乗り切りましょう。

<アピタル:小児科医ママの大丈夫!子育て>

http://www.asahi.com/apital/column/daijobu/(アピタル・森戸やすみ)

アピタル・森戸やすみ

アピタル・森戸やすみ(もりと・やすみ) 小児科医

小児科専門医。1971年東京生まれ。1996年私立大学医学部卒。NICU勤務などを経て、現在はさくらが丘小児科クリニックに勤務。2人の女の子の母。著書に『小児科医ママの「育児の不安」解決BOOK』(内外出版)、共著に『赤ちゃんのしぐさ』(洋泉社)などがある。医療と育児をつなぐ活動をしている。