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 4月から、お子さんを保育園や幼稚園に入れるという人も多いでしょう。初めて子どもを保育園に預ける、幼稚園に通わせるので、不安だというご両親もいると思います。生活が一変するので、いろいろな心配や疑問がありますね。

 私も、産休明けに働き始めるとき多少なりとも葛藤がありました。「本当は仕事をせずに家にずっと居たほうがいいのではないか」、「私が見ていないところで娘になにかあったらどうしよう?」と不安に思ったし、「3歳までは母親が子どもの面倒を見るべきだというのはどのくらい正しいのかしら」といぶかしみました。

小さな子を預けるのは良くないこと?  

 「3歳までは常に家で母親の手で育てないと、その後の成長に悪い影響がある」という考えは、3歳児神話と呼ばれてきました。でもこの考え方は、以前にコラムで触れた通り、すでに否定されています。(https://www.asahi.com/articles/SDI201806100231.html) 

 3歳児神話の発端は、1951年にイギリスの精神医学者ボウルビイが、戦争孤児や家族と切り離された子どもの精神発達の遅れについて報告し、子どもが育つ過程で養育者との間に愛着関係が築かれることが大切だと提唱したことにあるようです。

 でも、ボウルビイは母子関係こそ大事だと言ったわけではないのです。日本でも母性の役割が育児書などで強調される中で3歳児神話として広まったようですが、98年の厚生白書では、「少なくとも合理的な根拠は認められない」と言及されました。

 厚生白書には、重ねてこのようにも書かれています。「母親が育児に専念することは歴史的に見て普遍的なものでもないし、たいていの育児は父親(男性)によっても遂行可能である。また、母親と子どもの過度の密着はむしろ弊害を生んでいる、との指摘も強い。欧米の研究でも、母子関係のみの強調は見直され、父親やその他の育児者などの役割にも目が向けられている」(https://www.mhlw.go.jp/toukei_hakusho/hakusho/kousei/1998/dl/04.pdf別ウインドウで開きます

 今は共働き世帯が増え、両親が働いていれば保育園や周囲の人の助けがないとそうそう子育てできるものではありません。もしも、周囲に「子どもが小さいのに預けるなんて…」と非難する人がいても気にしないようにしましょう。どのみちそういう人は、何も助けてはくれないのです。子どもを預けて働くか、専業主婦世帯になるかというのは、家庭によって事情が違います。

卒乳は無理にしなくても

 保育園に預けるにあたり、まだ授乳中という人もいるでしょう。母乳育児をしている場合、卒乳を考えることもあるかもしれませんが、赤ちゃんがほしがっていてお母さんも続けたいと思っているのに無理にやめる必要はありません。

 入園しても、搾乳した母乳を届けたり、職場が近ければ授乳をしに行ったりする方法もあります。ただ、搾乳した母乳を与えてくれる園は多くはないようです。かけあってみてだめならば、日中はミルクにして、朝出かける前と帰宅後の夕方や休日に母乳にすれば、母乳育児は続けることもできると思います。日中も搾乳しておけば、母乳の分泌を保つことができます。

 入園を機に卒乳する場合は、事前に夜や日中など一定の時間は授乳をやめたり、1日の回数を少しずつ減らしたりすることで、徐々に母乳の割合を減らしていきます。粉ミルクに変えることになっても、決して悪いことではありません。それまで授乳を頑張った自分をねぎらいましょう。

予防接種、受けられるものは早めに

 入園すると、最初はいろいろな病気にかかると聞くこともあると思います。かかりやすい病気はなんといっても風邪です。

 特に初めの数カ月は、「今までこんなに熱を出すことはなかったのに」と不安になる人も多いくらい、ウイルス感染を繰り返すことがあります。冬に多いRSウイルスによる細気管支炎、インフルエンザや、冬から春にかけて多いロタウイルス胃腸炎がまだはやっていることもあるでしょう。従来は夏に多い感染症ですが、春から初夏にかけてりんご病、水ぼうそう、おたふく風邪といったものもあります。

 入園して体調を崩すことがあると、予防接種もスケジュール通りにいきません。受けられるものは入園前に済ませておきましょう。おたふく風邪ワクチンは任意接種なので、自治体からのお知らせは来ませんが、2回受けておきましょう。水ぼうそうワクチンの2回目、B型肝炎ワクチンの3回目は忘れがちです。3歳からの日本脳炎ワクチンは済んでいるでしょうか?1歳と就学前の1年間に受ける定期接種のMRワクチンは、麻疹も風疹も今話題になっています。集団生活を始める前に受けておきましょう。

 娘が保育園に入った後、私が入園前に心配していた、見ていないところで子どもがいじめられたり、事故にあったりしたらどうしようということは杞憂に終わりました。小児科医の私は、病気や医療については多少知っているものの、育児に関しては、研修を受けたり日々勉強したりしている保育園の先生のほうが詳しかったのです。娘は保育園にすぐに慣れ、家庭ではできないような遊びや行事を楽しみました。家ではとても小食で困っていたのに、お友達と一緒に食べる給食は完食したと書いてあり驚きました。

 4月からの登園を心配している親御さんは、心配なことがあったら保育園・幼稚園に質問や相談をしましょう。もちろん、病気や健康に関わることであれば、かかりつけの小児科医に尋ねてみてくださいね。

<アピタル:小児科医ママの大丈夫!子育て>

http://www.asahi.com/apital/column/daijobu/(アピタル・森戸やすみ)

アピタル・森戸やすみ

アピタル・森戸やすみ(もりと・やすみ) 小児科医

小児科専門医。1971年東京生まれ。1996年私立大学医学部卒。NICU勤務などを経て、現在はさくらが丘小児科クリニックに勤務。2人の女の子の母。著書に『小児科医ママの「育児の不安」解決BOOK』(内外出版)、共著に『赤ちゃんのしぐさ』(洋泉社)などがある。医療と育児をつなぐ活動をしている。