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 反スタチンや反ワクチンといった医療のフェイク情報に注意を促す論説を米医学専門誌が連携して出しました。各SNS企業も医療についてのフェイク情報の対策をはじめました。たとえば、YouTubeは反ワクチンの内容の動画から広告を排除すると発表したそうです

 どの動画の医療情報が適切でどの動画が不適切かを、どういう基準で判断するのか。これはけっこう難しい問題です。それに、医学的に間違っている主張であっても発表する自由はあるはずです。SNSサイトは私企業のサービスではあるものの多くの人が利用しているという公的な性質も持っています。できれば検閲のようなことはしないほうがいいと思います。

 しかし、このままニセ医学情報を放置すると誰かの健康や命が失われかねません。規制しすぎもだめだし、自由にしすぎでもだめなのです。YouTubeの「広告を削除する」という対策は、落としどころとして悪くないと私は考えます。広告から得られる金銭的利益を目的に反ワクチン動画を制作・公開する動機を失わせる一方で、反ワクチン的な主張をする自由は保たれています。

 ワクチンに反対する人たちはときに、「製薬会社は金儲けのために効果がないばかりか害のあるワクチンを売りつけている」などと主張します。ただ、ワクチンに反対する人たちの一部も、金儲けのために正確ではないばかりか害のある情報を売りつけているのではないでしょうか。

 あるビジネスパーソン向けのニュース情報サイトに「世界保健機関(WHO)はインフルエンザワクチンには感染予防効果は期待できないと認めている」とありました。これは事実と異なります。WHOのサイトには明確に「ワクチンはインフルエンザの感染および重症な合併症を予防するもっとも効果的な方法です」と書いてあります。

 不安をあおるような医療のフェイク情報を掲載することで耳目を集め、アクセス数が伸び、広告収入を得ることができます。お金儲けが目的ではなく、人々の健康のために正しいと信じる医療情報を発信しようとしているのなら、WHOのサイトにどのような文言があるか確認する手間ぐらい惜しまないはずです。そのニュース情報サイトには、他にも「牛乳は超危険」「はしかは子供のうちにかかったほうがいい」「抗がん剤は寿命を縮める」といった情報が載っています。間違いを指摘しても、炎上してアクセスを集め、かえって相手の利益になりかねません。

 ただし、こうしたサイトも強制的に削除されるようなことがあってはならず、情報発信をする自由が保たれるべきだと私は考えます。ただ、広告収入目的のフェイク情報を少しでも抑制するために、こうしたサイトに広告を出している企業に情報をフィードバックし、本当に広告を載せるに値するコンテンツなのか検討してもらえるような仕組みができないものかと考えます。

※参考:反ワクチン情報の拡散防止、SNS企業が対策発表(http://www.afpbb.com/articles/-/3212955別ウインドウで開きます

《酒井健司さんの連載が本になりました》

これまでの連載から80回分を収録「医心電信―よりよい医師患者関係のために」(医学と看護社、2138円)。https://goo.gl/WkBx2i別ウインドウで開きます

<アピタル:内科医・酒井健司の医心電信・その他>

http://www.asahi.com/apital/healthguide/sakai/(アピタル・酒井健司)

アピタル・酒井健司

アピタル・酒井健司(さかい・けんじ) 内科医

1971年、福岡県生まれ。1996年九州大学医学部卒。九州大学第一内科入局。福岡市内の一般病院に内科医として勤務。趣味は読書と釣り。医療は奥が深いです。教科書や医学雑誌には、ちょっとした患者さんの疑問や不満などは書いていません。どうか教えてください。みなさんと一緒に考えるのが、このコラムの狙いです。

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