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 住んでいた賃貸住宅が契約更新を迎えたのをきっかけに、昨夏に実家へ引っ越しました。久しぶりに始まった母との生活、半年が過ぎて何とかペースが固まってきました。

 ある朝のこと。母が「体重計に乗ったら、体重が減っていたわ」と嬉しそうに言いました。なぬー。ヨガを楽しみにスポーツクラブに通ったり、友だちとランチに出かけたりと、幸い元気いっぱいですが、母は立派な後期高齢者。低栄養だとかフレイルという言葉が頭をよぎり、「もう、痩せるのが健康的なお年頃じゃないのよ、むしろ逆なんだから!」と思わず厳しく言ってしまいました。食べる量が少なくなってきているのかな……。

 さしあたって問題が発生しているわけではないし、病院へ、というほどではないけれど、食べ方、食生活に疑問が浮かぶ。こんな時、栄養の専門家と話ができたらいいのに。そう思いました。

 どこへ行ったら、栄養の相談ができるのか。調べてみると、最近は管理栄養士のいる調剤薬局が増えているようです。その中の一つ、首都圏に145店を展開している「薬樹」(神奈川県大和市)の「健ナビ薬樹薬局 成瀬」(東京都町田市)を訪ねました。

 JR横浜線成瀬駅近くにあるこの店には、岩崎由紀子さんをはじめ3人の管理栄養士が勤務、同店だけでなく町田市内の8店舗をカバーして栄養相談に対応しています。

 入り口に置かれたパネルには、手描きで「管理栄養士がいます!食事・運動などのお悩み・気になることがあったら、お気軽にご相談ください★」の文字。

 相談は無料で、「『痩せたい』、『骨によい食事はどんなもの?』、『健康診断で良くない値が出た』など、色々な相談があります」と岩崎さん。60、70代が中心で、男性よりは女性が多いとのこと。どんな食生活をしているかなど、相談者の話をじっくり聞き、解決のために何ができるかを考えます。「やってみようとご本人に思っていただくことが大事。できること、身近で実行に移せそうなことを、一緒に見つけるようにしています」。当面の提案をして、「また1カ月後に」と次回を予約、相談を継続する事例もあります。

 外食や総菜を買うことが多い相談者なら、家の近くの飲食店のメニューを確かめ、「この店でどんぶりものを食べるなら、小盛りのどんぶりと野菜サラダを頼んでみては」「あのスーパーは、少なめのご飯パックがあります」といった具体的な話をすることもあるそう。地域にあり近所の人が通う薬局ならではの強みだと感じます。

 相談に来た方から、「食生活を変えたおかげで検査の数値が改善した」「薬を減らすことができた」と報告をもらう時、「良かった!」と感じると岩崎さん。一方で、提案しても「できなかった」と本人に言われることが続き、なかなか事態が改善しないことも。「このままではまずいという危機感が薄い方は行動を起こしにくい。動機付けを重視しています」

 岩崎さんら管理栄養士は、相談のほかにも、食と健康に関する講座や運動の講座、ウオーキングイベント、骨密度や内臓脂肪などの測定会といったイベントも企画。イベントがきっかけになって栄養相談につながることも。また、生活習慣病関連で周辺の医療機関から「薬を使う前にまず、生活を改善してみて」と栄養指導を受けるよう紹介され、やってくるケースもあるそうです。

 薬樹では会社全体で81人の管理栄養士がおり、全店で栄養相談ができる態勢を整えているといいます。古明地広挙・広報室長は「目指すところは、健康をサポートする薬局です。地域の人の健康支援には薬だけでなく、食や運動といった側面も大切」と言います。栄養相談と栄養指導(医師の指示によるもの)を合わせ、一月当たりの件数は、全社集計で千件以上になるそう。同社では、年会費5千円で健康づくりのサポートをする会員制度「健ナビ倶楽部」も展開しています。

 薬局に管理栄養士を配置する動きの背景には、薬局が単に薬を出すにとどまらず、地域住民の健康を支援する役割を求められていることがあります。薬局側としても、顧客獲得のためにサービスの幅を広げ、継続的に通ってもらおうとしています。

 このほか、日本栄養士会が進めている「栄養ケア・ステーション」でも栄養相談が受けられます。栄養ケア・ステーションは、管理栄養士・栄養士が在籍して食と健康に関わるサービスを行う拠点。栄養相談や、生活習慣病予防のために生活習慣の改善を促す特定保健指導、栄養教室、食育活動といった業務を行っています。各都道府県で栄養士会が置いているほか、昨年から認定制度もスタート、全国で現在198カ所あります。

 同じ「痩せたい」という相談でも、10代の成長期とメタボに悩む中年では大違い。いかにそれぞれの事情に合わせたプランを立てられるか。取材してみて、相談を受ける専門家の対応力も試されるものなのだと気付かされました。健康に過ごすためにその人に合った助言が得られるよう、生活について気軽に話ができる場所がさらに充実して、身近に増えていってほしいと感じます。

<アピタル:食のおしゃべり・トピック>

http://www.asahi.com/apital/healthguide/eat/

(大村美香)

大村美香

大村美香(おおむら・みか) 朝日新聞記者

1991年4月朝日新聞社に入り、盛岡、千葉総局を経て96年4月に東京本社学芸部(家庭面担当、現在の生活面にあたる)。組織変更で所属部の名称がその後何回か変わるが、主に食の分野を取材。10年4月から16年4月まで編集委員(食・農担当)。共著に「あした何を食べますか?」(03年・朝日新聞社刊)