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 海外には診断・薬の処方もできる看護師「ナース・プラクティショナー」がいることを知っていますか? この4月11~14日、米カリフォルニア州で開催された「がん看護学会」(ONS)の学術集会に参加し、初めてその存在を知りました。日本にも、日本がん看護学会があり、その学術集会には5千人以上のがん領域を専門にした看護師が参加をしていますが、アメリカの学術集会参加者数は約3700人。日本よりも小規模ながら、専門領域の幅広さやセッション、ポスターの数など、日本とは少し趣が違っています。患者目線でリポートします。

多様な専門性、ナース・プラクティショナー

 ONSは「Oncology Nursing Society」の略称。セッションに参加をして最初に驚いたのが、「なぜこんなに詳しい薬の話があるの?」ということでした。臨床試験の結果だけではなく、薬の仕組みや調剤方法、投与量や減薬の仕方など、「医療者、薬剤師向けの学会に参加したのか?」と思うほど詳細な内容だったのです。私は、思わずSNS上で、「アメリカの看護師さんには薬を処方する権限があるのですか?」と尋ねてしまったほどです。

 その背景にあるのが、日本のがん看護にはない「NP(Nurse Practitioner:ナース・プラクティショナー)」という資格をもった看護師の存在です。

 NPは、いわゆる生活支援や医師の補助といった看護に加えて、診断・診療や薬の処方ができ、医師と看護師の中間にあるような存在です。NPができる医療行為は州ごとに違っており、NPとして診療所を開設できる州もあるそうです。

 「診断・処方」という役割があるため、「副作用管理」についても、症状が発現する時期や判断材料だけではなく、対処に必要な手はずや薬の処方に関する知識も求められます。学会で薬に関する詳細なセッションがあるのも、こういったNPの役割が背景にあります。診断や処方は医師にしかできないと思っていたので、本当に驚きました。

 NPになるためには、大学院を卒業した上で、その専門分野の国家試験に合格する必要があります。また、2年おきの更新手続きも求められます。セッションのプログラムに「Contact Hours-1.50」というような表示がありましたが、更新に必要な認定単位数でした。

 アメリカの看護領域に関する資格の多様さは、学会参加者がつける名札でも分かります。例えば、ONSのブースでは、がん看護認定看護師や、がん看護専門看護師のほか、乳がんや血液・骨髄移植、小児がんに関する認定看護師など、それぞれの資格を表す名札シールが配布されていました。

 学会の抄録を開いても、例えば、肩書に「BSN, RN, OCN」とあれば、BSN(Bachelor of Science in Nursing:看護学学士)とRN(Registered Nurse:正看護師)、OCN(Oncology Certified Nurse:がん看護専門看護師)の三つのライセンスを取得しているということになります。

 このようにアメリカでは、看護師としてのキャリアデザインが多彩で、給与を含めた処遇の違いも明確です。そのプライドと責任感の重さが、名札の表示からも伝わってきます。

日本のがん専門看護師、認定看護師の仕組み

 日本にも、認定看護師と専門看護師という資格制度があり、認定看護師は、「緩和ケア」「がん化学療法看護」「皮膚・排泄(はいせつ)ケア看護」など、現在は21の分野に分かれています(2020年度からは19分野に整理されます)。

 資格取得には、看護師としての実務経験5年以上と、認定を受けようという領域での実務経験が3年以上必要です。その上で、それぞれのカリキュラムに基づいた半年間の研修を受け、試験に合格をすれば資格取得ができます。

 私も、認定看護師の研修機関で年に1回、お話しさせていただく機会を頂いていますが、実施機関が限定されているため、全国から看護師さんが集まって学ばれています。地方の方は、施設のそばに下宿するなど、本当に大変な環境で学ばれているのが実情です。

 (公社)日本看護協会HP認定看護師

http://nintei.nurse.or.jp/nursing/qualification/cn別ウインドウで開きます

 専門看護師は、「がん看護」「精神看護」「老人看護」など13の分野があり、資格取得のためには、認定看護師と同様の実務経験年数に加え、看護系の大学院で修士学を修了し、認定試験に合格しなければなりません。

(公社)日本看護協会HP専門看護師

http://nintei.nurse.or.jp/nursing/qualification/cns別ウインドウで開きます

 これらの資格を取得すると、診療報酬で評価される業務がいくつかできるようになりますが、アメリカのように、診断や薬の処方をすることは日本の医師法で認められていません。看護師などが特定の医療行為を実施できる36種類の「特定行為」が導入されていますが、全て「医師の指示の下」が前提です。日本看護協会などで制度の構築に向けた取り組みはありますが、アメリカでいうところのNPのような職種は日本にはありません。

 社会保障費の増加への対応や医療者の働き方改革の推進、過疎地域での医療問題などは、日本の課題でもありますから、NPのような役割の育成が必要なのではないかと感じました。

<アピタル:がん、そして働く>

http://www.asahi.com/apital/healthguide/cancer/(アピタル・桜井なおみ)

アピタル・桜井なおみ

アピタル・桜井なおみ(さくらい・なおみ) 一般社団法人CSRプロジェクト代表理事

東京生まれ。大学で都市計画を学んだ後、卒業後はコンサルティング会社にて、まちづくりや環境学習などに従事。2004年、30代で乳がん罹患後は、働き盛りで罹患した自らのがん経験や社会経験を活かし、小児がん経験者を含めた患者・家族の支援活動を開始、現在に至る。社会福祉士、技術士(建設部門)、産業カウンセラー。