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 2ヶ月振りのコラムです。お休みをいただいていた間、小児がんの晩期合併症であるリンパ浮腫の治療に専念していました。5週間の入院治療を経て、だいぶむくみも取れて、身体も軽くなり、日常生活にも馴染んできました。今回は、昨年12月の記事に書いた「リンパ浮腫の手術を検討する件」のその後をご報告するとともに、入院生活とその後の生活で、私がどのようにむくみを解消してきたのかについて記します。

 これまでのコラムでもご紹介してきましたが、リンパ浮腫は、リンパの流れが停滞することで起こるむくみのことです。がん治療の後遺症として代表的なものですが、私の場合、体がむくむ→体重が増える→重粒子線の副作用で弱くなった骨盤が折れる→寝たきりになるという悪循環になりかねず、何とかむくみを避けなければなりません。

 そのため、「リンパ管細静脈吻合(ふんごう)術(以下、LVA)」というものを検討するべく、関東の病院を受診したのが昨年12月のことでした。この手術は、流れの滞っているリンパ管を切って、静脈につなぎ直してリンパの流れの停滞を解消しようとするものです。手術の適応を判断するためには、現状を正しく把握することが重要だと言われています。どこで流れが滞っているのか、はたまた良好なのか等を知るために、リンパ管を可視化する検査を行いました。

 肝心なLVAの適応は、否……。治療方針は不透明になってしまいました。麻痺した足への適応の難しさと、思いの外きれいなリンパ管が残っていたという二点から、現状では手術に見合った状況ではないとのことでした。リンパ管が残っている場合、手術よりも圧迫やドレナージと言われる保存的療法が効果的なのだそうです。しかし、それができないから外科的療法を検討しはじめたわけで、結局、頭を抱える結果となってしまいました。

着衣で圧迫、むくみを減らす

 こうなったら、骨盤を骨折して以来諦めていた着衣による圧迫を再び模索するしかありません。着衣で圧迫することで、皮下組織内の圧力を高めて、リンパ液がたまるのを防ぐことを目指すものです。ただし、着圧の効果と弱くなっている骨盤への負荷を天秤にかけなければならず、険しい道のりになりそうです。それなりの圧をかけるからむくみを抑えることができるのであって、無理なく着用できる圧で、はたして効果が望めるのか……。

 何にしても、骨盤が折れては元も子もありません。まずは昨秋から6キログラム増えたむくみを減らすことが先決でした。2年前の入院治療の経験から、ドレナージや圧迫をすれば確実に減ることは分かっています。きれいなリンパ管が残っているなら、なおさら効果が期待できるはず! ということで、約1カ月の期間を捻出し入院の計画を立てたのでした。

目指せ! すっきり上半身

 今回の入院目標は、二つありました。まずは、なるべくたくさん上半身のむくみを減らすこと。全身むくんでいる中で、なぜ上半身かと言うと、骨盤への負荷軽減が最優先事項だからです。極論を言えば、足がむくんでも骨盤骨折に影響はないので、後回しという判断をしました。

 治療の中心は、1.ドレナージ、2.圧迫、3.圧迫下での運動の3本柱です。入院中はセラピストの方が着衣より強力な弾性包帯でしっかりと圧迫してくれるので、骨盤を気にすることなく、日に日に腕の軽さを実感することができます。

 そして、もうひとつの目標は「弾性着衣」探しです。弾性着衣は、きついストッキングやスリーブなどを日常生活で着続けることで、むくみを抑えることを狙うものです。ただし、弾性着衣は圧迫が目的なので、着る際に力が必要です。もろくなった骨盤に負荷がかからずに着ることができるものを見つけなければなりません。サンプル品を日毎に試して、ああでもないこうでもないと、毎日計測する腕の周径と照らし合わせながら、効果と使用感を見極めていきました。

減らなくても維持さえできれば……

 最終的には下肢4種類、上肢5種類の計8種類を試したことになります。上肢、下肢ともに、弾性着衣のひとつ「エアボウェーブ」という商品に落ち着きました。今回の試行錯誤で一番の収穫は、エアボウェーブで周径を維持できると判明したことに尽きます。

 もちろん、着衣でも減らしていけるのが理想ですが、増えずに維持できるだけで御の字です。入院中に減らせるだけ減らして、エアボウェーブで維持をする。そして、むくみが増えないうちに再び入院して減らす、維持する。このサイクルを繰り返せば、理論上、段階的にむくみを減らしていくことができます。むくむ前の身体に戻せるかもしれないと、再び少しの希望が見えてきました。

 入院の成果を数字で表すと、右腕マイナス3センチ、左腕マイナス4センチ、右足マイナス4センチ、左足マイナス4センチといった具合で、体感的にもかなり軽くなったのを実感しています。3月半ばに退院してからは、両腕と左足にエアボウェーブ着用が加わっただけで、仕事や普段の生活は今まで通りです。

 ひと月半が経過した現在でも、むくみはひどくならずに維持できているみたいなので、上々の滑り出しと言えるでしょう。このまま続けていけそうな気がします。根本的な治療が難しいリンパ浮腫ですが、焦らず、少しずつでも減らしていければいいのかもしれないと思い直したところです。もう少しゆったりとした心持ちで付き合っていこうと思います。

<アピタル:彩夏の〝みんなに笑顔を〟>

http://www.asahi.com/apital/column/ayaka/(アピタル・樋口彩夏)

アピタル・樋口彩夏

アピタル・樋口彩夏(ひぐち・あやか)

1989年、東京生まれ。中学2年の時、骨盤にユーイング肉腫(小児がん)を発症。抗がん剤、重粒子線などの治療を経て、車いすでの生活に。「いつ、誰が、どんな病気や障害をもっても、笑顔で暮らせる日本にしたい!」を目標に日々、奮闘中。当事者の視点から建設的に伝えることをモットーに執筆・講演も行っている。

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