[PR]

 赤ちゃんへの授乳や離乳食についての国の指針「授乳・離乳の支援ガイド」が、この春改定されました。離乳食をどうやって進めるかは、多くの親御さんが悩むところです。私はクリニックでお母さんたちの質問になんでも応じる育児相談をやっていますが、質問が多いのは離乳食やアレルギーについてです。また、離乳食を作るのが大変だと感じている人も多いようです。今回、新しくなった国のガイドにはどんなことが書かれているのでしょうか。 

 「授乳・離乳の支援ガイド」(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_04250.html別ウインドウで開きます)は、妊産婦や子どもに関わる医療機関や自治体の保健師向けに作られ、保護者に指導する際の根拠となるものです。この春、12年ぶりに改定されました。

離乳食の開始は遅い方がいいの?

 今回のガイド改定のポイントは、アレルギー予防の観点から離乳食の開始を遅らせないようにすること、卵などアレルゲン(アレルギーの原因)となる食べ物も適切な時期に始めることなどが盛り込まれた点です。

 アレルギーについては多くの親御さんが心配していて、「乳製品はいつから食べさせていいのか」、「卵を離乳食に使っていいのはいつからか」という質問を受けることはとりわけ多いです。

 環境省が行っている「子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査、2014年時点の暫定結果)」では、離乳食の最初に与える米は8割の保護者が生後6カ月までに食べさせていました。一方で、アレルギーの原因になりやすいことが知られている卵は、8割以上の親が生後7〜8カ月以降に与えていました。「卵を初めて与えるのは1歳過ぎてから」と思っている人もいるようです。 

 今回のガイドでも、離乳食を始める目安の時期は5〜6カ月としたうえで、アレルギー予防にはならないので開始は遅らせないようにとしています。

アレルギーの原因となる食品も遅らせない

 では、卵や乳製品など、アレルギーの原因になりやすい食品はいつから食べ始めるのがいいのでしょうか。

 ガイドでは、子どもが離乳食に慣れてきたら、野菜、果物、豆腐、白身魚、固ゆでした卵黄などのように種類を増やしていくとあります。その後、さらに卵は全卵へ、肉類、豆類、海藻といったように種類を増やしていきます。「特定の食物の摂取開始を遅らせても、食物アレルギーの予防効果があるという科学的根拠はない」ということが明記されました。 

 卵黄を試す時期は離乳食初期(5~6カ月)、さらに、離乳食中期(7~8カ月ごろ)には卵黄1〜全卵の3分の1まで与えるように目安が示されています。また、ヨーグルトや塩分・脂肪分の少ないチーズも、離乳食に用いても良いとあります。これらは、1日2回の食事になる前、生後7〜8カ月までの説明として出てきます。ただし、牛乳を飲用として与えるのは、鉄欠乏性貧血の観点から1歳以降が望ましいと記されています。

 「アレルギーを起こしやすい食材は遅く」というのは、一時期広く言われていましたが、現在では根拠がないとされ、ガイドにもはっきり書かれました。むしろ、アレルゲンは皮膚から体内に入った時の方がアレルギーを発症するリスクが高まることから、肌荒れをそのままにし、食品の摂取を遅らせることの方が良くありません。

写真・図版

 ちなみに、母親が妊娠中や授乳中にアレルギーになりやすい食品を避けていることも多いのですが、子どものアレルギー予防にはならないことが新しいガイドにも示されています。

 子どもの食事で特定の食品を過剰にとったり、あるいは避けたりすることは、アレルギー予防の効果はありません。両親や兄・姉に食物アレルギーがあるなど、アレルギー素因のある子どもに、普通の育児用ミルクではなくアレルギー用ミルクをあらかじめ飲ませることも勧めていません。食事制限をする場合でも医師に相談した上で必要最小限であるべきです。

 離乳食は徐々に食材の幅を広げ、バランスよく食べさせるのが望ましいのです。ただし、食物アレルギーとすでに診断されている場合や、明らかな湿疹があるような場合には医師に相談しましょう。

 アレルギーに関しては、ずいぶん以前から専門家である医師の間では次々に新しいことがわかっていました。それが、ここ10年あまりでだいぶ、保護者を支援する立場の人たちにも浸透してきました。

 12年ぶりの改定によって、こういった様々な新しい知見を親たちにどう伝えたらいいかが盛り込まれました。乳児を育てている人、またその周囲の人や、子育てに関心がある人もぜひ、読んでみてください。

<アピタル:小児科医ママの大丈夫!子育て>

http://www.asahi.com/apital/column/daijobu/(アピタル・森戸やすみ)

アピタル・森戸やすみ

アピタル・森戸やすみ(もりと・やすみ) 小児科医

小児科専門医。1971年東京生まれ。1996年私立大学医学部卒。NICU勤務などを経て、現在はさくらが丘小児科クリニックに勤務。2人の女の子の母。著書に『小児科医ママの「育児の不安」解決BOOK』(内外出版)、共著に『赤ちゃんのしぐさ』(洋泉社)などがある。医療と育児をつなぐ活動をしている。