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 気持ちに余裕のない時は、普段ならそれほど気にならないようなことにもイライラしたり、ささいなことが目についたりします。

 例えば、

 ・仕事が忙しくて私も周りのスタッフもピリピリしている。

 ・先月就職したスタッフが物品を片付けてくれたけど、場所が違う。記録も間違っている。私の仕事が余計に増える!

 ・入所者の家族からいろいろ要求される。納得できないけど反論しても場の雰囲気を悪くするだけ、そう思って我慢してしまったけれど、むしゃくしゃして気が収まらない。

 こんな時は、つい口調がキツくなったり、乱暴になったりしてしまいがちですが、そこには思わぬ危険が潜んでいます。患者や利用者への対応の場面では虐待につながるかもしれませんし、職員に対してもハラスメントやいじめなどが生じるかもしれません。また、仕事に集中できず効率が低下し、医療や介護の現場では許されない、思わぬミスや事故につながる危険性があります。

 そうならないようにするには、自分自身をマネジメントすることが大切です。

 前回は、体調を整えるという視点から、「睡眠」の話をしました。今回は、感情の安定という視点から、「リフレッシュリスト」について紹介します。手軽にできる自分にとってのリフレッシュ法のリストを日頃から準備しておくという方法です。

 自分にとって心地良いこと、楽しいこと、好きなことなどを考えてみてください。それをあらかじめ準備しておいて、イライラしがちなときや気持ちに余裕がないと感じたときに意識的に実践してみてください。思いつくものをメモして持ち歩いても良いでしょう。

 

 ところで私は先日、自分のリフレッシュ法のリストをひとつ追加しました。それは、海辺で波の音をきくことです。

 先日、出かけた先で、少し早く到着して乗り継ぎに時間があったので、近くを散策することにしました。駅から数分歩くと海岸があって、遠くに釣りをしている人が見えました。砂浜に降りてみたら、足が砂沈む感覚が何とも懐かしく、往来する車の音に代わって波の音がとても大きく響いてくるのです。

 実はこのところ、いつにも増して慌ただしく、仕事に追われているような気がしていました。仕事をしながら、あるいは歩きながら、「次はあれをやらなければ」「あそこへ連絡しなくては」「あの書類も明日が締め切りだ」など次々と何かが頭をかすめるのです。あれもこれもと考えているので仕事の効率も下がるし、いろいろと抱えているところに割り込みの業務が入るとイラっとしたりします。

 そんな中で、ふと砂浜の海岸に降り立ったときの感覚は、一切の雑念が一掃されたような、何とも新鮮な感覚でした。寄せては返す波の複雑な動きをじっと見つめて、ザザーン、ザザーンと繰り返される波の音を聞き、そして足の裏に砂を感じるのです。ほんの数分のことだと思います。あれこれ考えずに、いまこの瞬間に集中することで嫌な感情をリセットした体験でした。

 考えてみると、私にとって嫌な感情をリセットするためのリストには、自然に触れることがいくつかあります。例えば、空を見上げて雲が流れていく様子をながめるのが好きです。雨が降ったときのにおいを感じたりします。花が咲く前につぼみがふくらむ様子や梅の木に実がつく様子を観察したりします。日常のなかに季節を感じると何だか得した気分になります。

 

 リフレッシュの方法は人それぞれに違います。皆さんが心地よいと感じられるのはどんなときですか?

 深呼吸、ストレッチ、散歩、音楽、アロマ、読書、料理、あるいは何かを飲むとか食べるとか、自分に合うものを考えてみてください。

 

<アピタル:医療・介護のためのアンガーマネジメント・コラム>

http://www.asahi.com/apital/healthguide/anger/(アピタル・田辺有理子)

アピタル・田辺有理子

アピタル・田辺有理子(たなべ・ゆりこ) 精神看護専門看護師・保健師・精神保健福祉士

横浜市立大学医学部看護学科講師。大学病院勤務を経て2006年から看護基礎教育に携わる。アンガーマネジメントファシリテーターTMとして、医療・介護・福祉のイライラに対処するためのヒントを紹介する。著書に『イライラとうまく付き合う介護職になる!アンガーマネジメントのすすめ』(中央法規出版)がある。