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 気持ちに余裕がないと、イライラしがちになります。

 仕事が忙しかったり、人間関係がぎくしゃくしていたり、育児や介護など仕事以外にも負荷がかかっていたりして、余裕がなくイライラしやすいことが常態化すると、つい職場で不満や人の悪口ばかりを言ってしまいがちです。自分でイライラする材料を探しているような悪循環にさえ見えることがあります。今回は、そんなマイナス思考に陥ってしまったときに試して欲しい、三つのポイントをお伝えします。

 AさんとBさんは、新人スタッフを指導しています。

Aさん:先月就職してきたスタッフが、物品を片付けてくれたのはいいけど場所が違っていて困るのよ。

Bさん:片付けてくれるだけマシよ。私が教えているスタッフは使いっぱなしで片付けてくれないもの。

Aさん:この前は、記録も間違っていて大変だったわ。

Bさん:あるある。記録の指導も大変だよね。でも、Aさんは新人を根気よく教えてすごいね。

Aさん:そんなことないよ。指導係って仕事が増えるばかりで報われないわ。わかっていないのに勝手にやるから私の仕事が余計に増えるの。

Bさん:そうね、でも新人はほめて育てないとね。

Aさん:え? でもほめるところなんて見つけられないよ。

 

 Aさんは新人スタッフの仕事ぶりに不満があるようです。マイナスポイントばかりが目に留まり、その結果不満や悪口、相手へのダメ出しばかりしてしまっています。

 そんな時に試して欲しいポイントの一つ目として、良いところ・できているところに着目することを意識してみましょう。

 感情は、何かの出来事を自分の価値観に照らして意味づけすることで生じます。その出来事をどう捉えるかによって、生じる感情は変わってきます。この会話に出てくる出来事は、「物品が違う場所に置かれていた」「記録が違っていた」ということです。

 間違えていたことは問題かもしれませんが、視点を変えてみると、全てを指示しなければ動けなかった新人スタッフが自分で判断しながら仕事を覚えるプロセスとも捉えられるし、Aさんに迷惑をかけないように本人なりにがんばっているのかもしれません。

 

 二つ目のポイントとして、見つけた良いところを相手に伝えてみましょう。人を育てる時には「ほめて伸ばす」という考え方があります。私はほめるだけで人が育つとは思いません。やみくもに「すごい」「偉い」とほめちぎっても人の心に響くとは思えませんし、ほめられるために動く、逆を言えばほめられないなら働かないという人材を作ってしまうかもしれません。

 でも、いざという時に、ほめたり励ましたりすることは効果的です。本人ががんばったことや思い入れのあるところをほめる、何かしてもらったときに感謝を伝えるなどを意識してみましょう。

 

 いつもイライラしてダメ出しばかりという人は、人の良いところを見つけてほめることが苦手な場合があります。と同時に、その人自身もほめ言葉を素直に受けることができないということもあります。

 誰かからほめられたときに、「そんなことないです」「私なんか全然ダメです」「このぐらいのことは普通です」などと、せっかくのほめ言葉を打ち消すような対応をしている人は、否定せずに受け止めてみましょう。これが三つ目のポイントです。

 はじめは気恥ずかしい感じがするかもしれませんが、これも練習です。「ありがとう」と言って受け止めてみてください。「私をほめてくれる人などいない」と思っている人も、実は自分がほめ言葉を受け取っていなかっただけかもしれませんよ。

 

<アピタル:医療・介護のためのアンガーマネジメント・コラム>

http://www.asahi.com/apital/healthguide/anger/(アピタル・田辺有理子)

アピタル・田辺有理子

アピタル・田辺有理子(たなべ・ゆりこ) 精神看護専門看護師・保健師・精神保健福祉士

横浜市立大学医学部看護学科講師。大学病院勤務を経て2006年から看護基礎教育に携わる。アンガーマネジメントファシリテーターTMとして、医療・介護・福祉のイライラに対処するためのヒントを紹介する。著書に『イライラとうまく付き合う介護職になる!アンガーマネジメントのすすめ』(中央法規出版)がある。