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 介護の仕事をしている、あるいは家族を介護している人のなかには、介護のイライラに悩まされている人もいると思います。

 手をあげてはいけないと頭ではわかっていても、イライラが募り、いつしかキツい口調になっていたり、介助が手荒になっていたり……。我に返って、鬼のように険しい表情の自分に気づいて激しい後悔に襲われる。そんな経験のある人もいるのではないでしょうか。なかには、何かのきっかけで「カッとなって」「一瞬、頭が真っ白になって」、言ってしまった・やってしまったという場合もあるかもしれません。

 アンガーマネジメントに取り組もうとするきっかけのひとつに「虐待を防ぐ」という意図があります。

 虐待はいけないと十分わかっているのに、何かのきっかけで自分を抑えられなくなってしまう。そんな状況に対して、「虐待はいけない」と諭しても解決は困難です。「怒ってはいけない」「イライラしてはいけない」という考えは、介護者を追い詰めてしまう危険性があります。自分のなかにさまざまな感情が生じるのは自然なことですから、感情を否定することはできません。

 研修などで「自分もいつか虐待してしまうのではないか」という不安を耳にすることがありますが、これも、介護する人にとって当然の不安だと思います。「介護がどんなに大変でも、絶対に手をあげたりしない」と断言するほうが、私は危ういと感じます。

 

 とはいえ、衝動的に不適切な行為に及んでしまった結果、その1回で人生が変わってしまうこともあり得るのです。衝動のままに声を荒げたり、乱暴な対応をしたりすることを防ぎたい――。

 そこで、アンガーマネジメントが役立つのです。イライラしても、ほんの数秒の間だけ反射を遅らせることができれば、冷静さを取り戻し、不適切な対応による失敗や後悔を防ぐことができます。

 アンガーマネジメントのテクニックはたくさんありますが、多くの人が使っていて効果的だと言われるひとつに、「魔法の呪文」というテクニックがあります。イラッとしたとき、自分を落ち着かせるために言葉を準備しておくと言うものです。

 

 思い起こしてみてください。

 あなたは、普段からイラッとした自分を落ち着かせるために、自分にかけている言葉はありますか?

 あなたが怒っているときに、誰かに言われて落ち着いた言葉はありますか?

 あなたは、怒っている誰かを落ち着かせるためにどんな言葉をかけますか?

 

 ・大丈夫。大丈夫。

 ・なんとかなるさ。

 ・大したことないさ。

 ・落ち着こう。

 ・気にしない。

 ・きっと明日は良い日になる。

 

 怒ったときに、勢いに任せた行動にでないために、その瞬間すぐに呼び起こせる言葉を準備しておくだけです。簡単なものがおすすめです。

 アニメの主題歌やCMのワンフレーズなど、メロディーが付いているほうが良い人もいるかもしれません。時代劇やドラマの決めゼリフなど、ちょっとしたユーモアで切り返すような言葉を準備しても良いでしょう。

 こうでなければならないと決まったものがあるわけではありませんが、人をおとしめ、不幸を願ったりするような言葉は避けるほうが良いと考えます。怒ったときに勢いで発してしまう言葉は、意図せず相手を傷つけてしまう場合があります。怒ったときに、チッと舌打ちする、「ふざけるな」「最悪だ」など、自分の口癖やパターンのある人は、直接相手に向かって言わなくても、表情や言動に現れます。

 

 イラッとしたとき、その瞬間の衝動で暴走するのを踏みとどまるのは自分自身です。怒っていないときに、あなたを落ち着かせてくれる言葉を考えて、ぜひ準備してみてください。

 

<アピタル:医療・介護のためのアンガーマネジメント・コラム>

http://www.asahi.com/apital/healthguide/anger/(アピタル・田辺有理子)

アピタル・田辺有理子

アピタル・田辺有理子(たなべ・ゆりこ) 精神看護専門看護師・保健師・精神保健福祉士

横浜市立大学医学部看護学科講師。大学病院勤務を経て2006年から看護基礎教育に携わる。アンガーマネジメントファシリテーターTMとして、医療・介護・福祉のイライラに対処するためのヒントを紹介する。著書に『イライラとうまく付き合う介護職になる!アンガーマネジメントのすすめ』(中央法規出版)がある。