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 このコラムでは、ADHDの30代女性・リョウさんが、初めての子育てに対して夫とともに奮闘する様子をお伝えしています。が、前回から引き続き番外編。今回も「子どもの夏休みの宿題をいかに計画的に進めるか」という特集をご紹介しています。

 

 ところで、子どもはなぜ、夏休みの宿題を計画的にできないのでしょうか。その原因には次の三つが考えられます。

子どもが夏休みの宿題につまずく原因
 その1:ゴールおよびゴールまでの工程の全体像が把握できていない
 その2:時間当たりの作業量の見積もりが甘い
 その3:1カ月という長いスパンの時間感覚が不正確

 前回は、自由研究や工作を例に、1番目の対処法として、ゴールまでのステップを細かく書き出す、ということをお伝えしました。今回は2番目の「時間当たりの作業量の見積もりが甘い」について、国語や算数のドリルを例に解説します。

そのドリル、1日で全部できる?

 みなさんこんな経験はありませんか?

 子どもが大好物の食べ物を前に、たとえばカレーを目の前にして、食べ始める前に「わーー! もっと食べたい。もっとよそって!」と大盛りを要求したのに、おなかいっぱいになって食べられなくなる。

 同じように、ご自身がバイキングに初めて行ったときのことを思い出してください。

 あれも、これも、いろいろ少しずつ食べてみたいとお皿にたくさんとったものの、思ったより食べられない。

 どちらも、「見積もり」が不正確であったことが原因で起こったことになります。

 これと同じように、夏休みの宿題でも子どもの見積もりは経験不足のため、どうしても甘くなりがちです。

 「ぼく、このくらいのドリルなら1時間で全部できるよ!」

 「やる気になれば、自由研究なんて1日でできるだろう」

 このような具合です。

 ここで、親が「できるわけないでしょ。ちゃんと早めにしなさい」と言ったところで、子どもの側からすれば「わかってないな、うるさいな」とやろうとしないかもしれません。

 大人なら、見積もりが甘くてギリギリもしくは締め切りに間に合わなかった後味の悪さや、焦りに駆られながら宿題をこなす疲労感、宿題しなくちゃなと思いながらテレビやゲームに興じるときの後ろめたさを知っているものです。だからこそ、「早めに」と子どもにはアドバイスしたくなるのですね。

 子どもとしては、「早めにやらないとどうなるのか知らない」「実際急げば、すごいスピードでできちゃうはず」と思っているので、やる気にならないし、不安にもならないでしょう。

 どうしますか? 一度はギリギリの泣きそうな夏休み最終日を体験させるのも人生。でも下手をすると、「宿題はギリギリ間に合わなくても、怒られはするけどなんとかなる」「いざとなれば、誰かがやってくれる」という経験を人生早期でしてしまうかもしれません。完璧主義の治療にはよいかもしれませんが、この先その子どもの自己コントロール力はなかなか育たないでしょう。そのまま大人になってしまっては、社会適応ができにくくて困るのは目に見えています。

 どうせなら、最初から「計画的に宿題をやり遂げる」体験をさせたいものです。そのための手順をしっかり身につけてもらいたいものです。

「10分チャレンジ」で作業量を体感する

 ではどうすればいいのか。

 子どもに、宿題をやるのには時間がかかることを「体感」してもらうのが一番です。

 「ためしに1ページやってみて、何分かかるか測ってみよう」

 「10分でどのくらいできるのかやってみてから計画を立てよう」

 こんな実験を提案するのです。

 「10分チャレンジ」などとネーミングすると、ゲーム感覚でのってくれるかもしれません。そして実測値に基づいて計画すれば、大幅にずれることはありません。

 子どもにとっても親に頭ごなしに「あなたが1日でドリル終わらせることなんて無理」と言われるより、実際試してみて、それをもとに計画を立てようと言われる方が、中立的ですね。

写真・図版 

すきま時間を活用、10分を積み重ねれば…

 中には「10分チャレンジ」だと喜んで集中してやるけど、その最初の10分と同じスピード感で50分は宿題を 続けられないという子どももいるでしょう。いえ、それが普通でしょう。

 その場合には、10分刻みで計画を立てるのも手です。

 1日のどこでもいいので、すきま時間で小刻みに10分を何度かとって、合計30分を確保するというのもいいかもしれませんね。

 たとえば、家族で外食にいくときにも、課題を持って行きます。レストランで料理を注文して、出てくるまでのすきま時間にちゃちゃっとやってしまいます。

 友達と公園で遊ぶ約束をしていて、約束時間の10分前に家で終わらせてから行くというのもいいでしょう。

 好きなテレビ番組が終わってテレビを消したらすぐに開始して、10分だけがんばるというのもいいでしょう。お風呂を掃除して、お湯をためている間の10分でも。

 既に子どもの生活の中にある定時のスケジュール(食事、風呂、好きなテレビなど)にくっつける形だと無理なく続きますよ。

 10分達成ごとにカレンダーにシールを貼っていくのもいいでしょう。

夏休みの宿題のコツその2(ドリルの場合)
 10分あたりの作業量を正確に見積もって、隙間時間を活用する

 次回は3番目の原因「1カ月という長いスパンの時間感覚が不正確」について解説していきます。

 

<お知らせ>

 コラムでご紹介したような時間管理について、やさしいエッセー風にまとめた本もあります。時間を大切に使って夢を叶えるための方法が、ディズニープリンセスのお話になぞらえて紹しています。

「ディズニープリンセス 夢を叶える時間術」(講談社)中島美鈴 著

https://www.amazon.co.jp/dp/4065147174/別ウインドウで開きます

<お知らせ>

 「かなめクリニック」(北九州市)におけるオンライン診療は現在のところ、予約枠が全て埋まっており、新規受付はいたしますが、待っていただくことになりますのでご了承下さい。

<アピタル:上手に悩むとラクになる・生きるのがつらい女性のADHD>

http://www.asahi.com/apital/healthguide/nayamu/(アピタル・中島美鈴)

アピタル・中島美鈴

アピタル・中島美鈴(なかしま・みすず) 臨床心理士

1978年生まれ、福岡在住の臨床心理士。専門は認知行動療法。肥前精神医療センター、東京大学大学院総合文化研究科、福岡大学人文学部、福岡県職員相談室などを経て、現在は九州大学大学院人間環境学府にて成人ADHDの集団認知行動療法の研究に携わる。他に、福岡保護観察所、福岡少年院などで薬物依存や性犯罪者の集団認知行動療法のスーパーヴァイザーを務める。