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 「超加工食品」という言葉を聞いたことがありますか? カップ麺や袋入りスナック菓子、炭酸飲料などが典型的な超加工食品。がんや死亡率、肥満との関連を調べた研究結果が最近発表されていて、欧米ではBBCやガーディアン、ニューヨークタイムズ紙など大手メディアが論文の内容を報道し、英国の政府機関が解説を発表するなど、話題になっています(※1)。日本でも、週刊誌が「食べてはいけない超加工食品」という切り口で取り上げたりして、食に関心の深い人の間で注目が集まっています。果たしてどういうものなのか、体に影響があるのか、調べてみました。

 超加工食品は、食品を加工の度合いで分類した場合に最も加工程度が高いランクに入る食べ物。ブラジル・サンパウロ大学公衆衛生学部の研究者らが考案したNOVAという食品分類法に基づいています。(※2)

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 この分類に沿って超加工食品の消費量に着目し、がんにかかるリスクの関係を調べたフランスの研究結果が、昨年2月に発表されました(※3)。フランスの成人約10万人(うち女性が約8割)を平均5年間にわたり追跡調査。食事中の超加工食品が占める割合の高さと、がん全体、乳がんのリスクの上昇との間に関連が認められました(割合が10%多いと、がん全体のリスクが12%、乳がんのリスクが11%上昇)。前立腺がん、結腸直腸がんには有意な関連が認められませんでした。

 また今年5月には、死亡リスクとの関連をみた論文が発表されました(※4)。スペインの20歳から91歳の約2万人を対象に、超加工食品を食べる量に従って4つのグループに分け、全死亡率との関連をみたところ、最も多い人のグループは最も少ないグループよりも死亡のリスクが高く、摂取量が増えると死亡率が比例して上昇するという結果でした。

 米国では、超加工食品とカロリー摂取、体重増との関連をみる実験が行われ、今年5月に公表されました(※5)。健康な20人に、超加工食品の食事とそうではない食事をそれぞれ2週間ずつ食べてもらったのです。参加者は自分が食べたいだけ食べ、食べた量が記録されました。結果、超加工食品を食べた人は、エネルギー摂取量が非加工食品の人に比べて1日約500キロカロリー多く、2週間で平均0.9キロ体重が増えました。非加工食品を2週間食べた人は平均0.9キロ減りました。

 超加工食品は悪い食べ物、と思いたくなる内容です。ただ、論文や資料を読んでいると、そう簡単な話ではないように思えてきました。

 一番疑問に思ったのは、超加工食品の定義。とてもざっくりとしていて、多種多様な食品が含まれる。論文で報告された現象が何を意味するか、考えることが難しいのです。

 加工度で分類するとしつつも、「普通の料理には使わない素材を含む」と原材料に言及しています。工業的に生産された原材料を指しているのか、とも解釈できますが、だとすると、その条件に当てはまりそうな原材料は山のようにあります。こうした素材を一つでも含んでいれば素材を五つ使っていなくても超加工食品なのか。

 食品の事例で、アイスクリームがあげられていましたが、家でも作れますし、小さな洋菓子店、食品メーカーなど多様な作り手がいます。使う原材料の多さ、種類は作り手によって違うはず。アイスクリームであるなら超加工食品とするのか、作り手で分類するのか。でも食品メーカーによっても製品には違いがあるでしょう。飲食店で出てきたアイスであっても業務用商品を盛りつけた場合があるし、既製のソフトクリームミックス(原液)で作ったソフトクリームはどうなる・・・?

 他の研究者からも「超加工食品という用語は不健康な食品というイメージを作り出すには便利だが、特異性がなく、公衆衛生に対する情報を発信したり、栄養上のアドバイスをする上で有用ではない」といった指摘が出ています(※6)。

 NOVA分類を発表した研究者の解説文(※2)を読むと、さらに次のように説明しています。超加工食品にだけ含まれる素材を使う目的は、グループ1の食品や料理の感覚的な品質を模倣するためであるか、最終製品の望ましくない品質を繕うためであると。

 また、超加工食品はすぐに食べたり飲んだりできる商品であり、未加工食品や最低限加工した食品に取って代わりやすい。共通する特性として、とてもおいしく洗練されていて、魅惑的な包装で、子どもや青少年に対し様々な媒体でアグレッシブなマーケティングを展開しており、健康を意識した売り文句がついていて、高い収益性があり、多国籍企業によるブランディングが行われている、と。

 ここまで読んでくると、提唱者らの思考の方向性が分かります。加工の度合いばかりではなく、加工の意図や製造者の属性、販売方法など社会的側面も含めて超加工食品というカテゴリーを考えているのだと。背景には、工業的食品加工技術の発達で加工食品が普及し消費が増加するのと軌を一にして、肥満や糖尿病などの生活習慣病が急増している現状があります。狙いは、加工食品の摂取と病気との関係を明らかにすること。世界の成人の8人に1人以上が肥満とされるほど肥満の問題は世界的に深刻です。各国から論文が相次いで出ているのも、こうした問題意識が共有されているからなのでしょう。

 ただ、こうした主観的な要素を含んだ分類では、何らかの現象が確認されても、そこから研究を発展させて影響を与えている要因やメカニズムを科学的に割り出すことができるのか。例えば何らかの栄養素、化学物質、加工の手法など・・・。今の段階では、私は頭をひねらざるを得ません。こうした論文を根拠に、何らかの教訓を引き出そうというのは、時期尚早ではないかと思います。

 とはいえ加工食品に頼り過ぎれば、野菜や果物の食べる量が減ったり、エネルギーや塩分の量が増えてしまったりと食事のバランスが崩れやすくなるだろうとは常識的に想像できます。これは加工食品に限った話ではなく他の食品でも同じですが、過度に食べれば弊害が出る可能性がある。健康な食生活には、多様な食品をうまく組み合わせるのが大事。ごくごく当たり前の結論ですが、そう思います。

 「超加工食品」という言葉は新顔ですが、「健康に悪い」あるいは「健康に良い」とされる様々な食品が話題になり、はやりすたりを繰り返しています。食べることは誰しも毎日必ず行う生活行動だけに、見聞きしたことを誰でも簡単に採り入れやすい。興味を持つ人が多く、人を動かしやすい話題なのだと感じます。ただ、ある仮説に基づいて研究が始まってから、多数の研究結果が出て、事実かどうか確認されるまでには、長い時間がかかります。食と健康の分野に関しては、流行の最先端を追いかけるより、奇をてらわない定番のアドバイスを尊重する方が、結局は健康への近道ではないでしょうか。

 

関連リンク

※1 欧米メディアの記事から

BBC:Ultra-processed food linked to early death

https://www.bbc.com/news/health-48446924別ウインドウで開きます

ガーディアン:Ultra-processed foods may be linked to cancer, says study

https://www.theguardian.com/science/2018/feb/14/ultra-processed-foods-may-be-linked-to-cancer-says-study別ウインドウで開きます

ニューヨークタイムズ:Why Eating Processed Foods Might Make You Fat

https://www.nytimes.com/2019/05/16/well/eat/why-eating-processed-foods-might-make-you-fat.html別ウインドウで開きます

※2 NOVA分類の説明:NOVA. The star shines bright

https://worldnutritionjournal.org/index.php/wn/article/view/5別ウインドウで開きます

※3 がん関連の疫学調査(フランス):Consumption of ultra-processed foods and cancer risk: results from NutriNet-Sant? prospective cohort

https://doi.org/10.1136/bmj.k322別ウインドウで開きます

※4 死亡率との関連調査(スペイン):Association between consumption of ultra-processed foods and all cause mortality: SUN prospective cohort study

https://doi.org/10.1136/bmj.l1949別ウインドウで開きます

※5 カロリー摂取、体重増との関連調査(米国):Ultra-Processed Diets Cause Excess Calorie Intake and Weight Gain: An Inpatient Randomized Controlled Trial of Ad Libitum Food Intake

https://doi.org/10.1016/j.cmet.2019.05.008別ウインドウで開きます

※6 expert reaction to two studies looking at highly processed foods and cardiovascular disease

https://www.sciencemediacentre.org/expert-reaction-to-two-studies-looking-at-highly-processed-foods-and-cardiovascular-disease/別ウインドウで開きます

<アピタル:食のおしゃべり・トピック>

http://www.asahi.com/apital/healthguide/eat/

(大村美香)

大村美香

大村美香(おおむら・みか) 朝日新聞記者

1991年4月朝日新聞社に入り、盛岡、千葉総局を経て96年4月に東京本社学芸部(家庭面担当、現在の生活面にあたる)。組織変更で所属部の名称がその後何回か変わるが、主に食の分野を取材。10年4月から16年4月まで編集委員(食・農担当)。共著に「あした何を食べますか?」(03年・朝日新聞社刊)