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 何かの出来事に遭遇して怒りが生じたとき、その瞬間はカチンときて激しく怒ってしまったけれど、後で思い返せばそこまで怒るような出来事でもなかった、ということはありませんか。

 怒りの感情は誰もが経験します。そして時に私たちを揺さぶり、つい余計なことを言ってしまう、乱暴な対応をしてしまう、必要以上に叱責(しっせき)してしまうなど、不適切な言動を招くことがあります。

 カチンときた勢いで反射的に怒ってしまうのを防ぐためには、衝動をコントロールする方法を身に付けておくことが肝要です。

 

 怒りに反射しないため、またその怒りがおおごとか、たいしたことでもないのか、という程度を見極めるために、怒りに点数をつけるという方法があります。

 点数は10点満点でつけます。

 怒っていない状態を0点、もっとも強い怒りを10点とします。野生の動物なら敵に襲いかかるぐらいの状況です。

 カチンときたときに、勢いに任せて何かの言動にでる前に「この怒りは何点だろう」と考えてみるのです。ここでつける点数は主観的なものですから、この出来事は何点でなければならないと言う事はありません。ほんの少し反射的な言動を遅らせられれば成功です。何点だろうと考えるだけで数秒が過ぎます。それだけで冷静さを取り戻すことができます。

 

 点数をつけ続けると、怒りの強さを意識することができます。怒りの強度には幅があります。しかし、なかには怒ると一気に沸点に達する、怒りのスイッチがオンとオフしかないという人もいます。ひとたび火がついたら一気に10点満点という人も、毎回「この怒りは何点だろう」と問いかけてみると怒りに強弱が見えてきます。「この前の出来事は5点だったけど、それに比べたらたいしたこともないから今回は3点」というように前の出来事と比較するようになり、徐々に点数が下がってくるようです。些細なことに色をなして怒るということもなくなるでしょう。

 感情の強弱を数値化することは、あまり馴染みがないかもしれませんが、たとえばペットボトルのサイズが500ミリリットルとか、2リットルといわれたら、大体このくらいの大きさだとイメージできますよね。天気予報で、明日の最高気温は30度と言われれば熱中症に注意しなければと思い、20度なら半袖では肌寒いと服装を考えるでしょう。

 感情も数値化してみると、強さの程度を客観視できます。入所者や利用者など介護する人に対して、職員に対して、あるいは家族に対してなど、相手によって怒りを強く感じやすい人がいるか、出勤前の急いでいるとき、夜勤明けで疲れているときなど、時間帯の傾向があるかなど、あとから分析することもできます。自分の傾向を知ると対策を立てることにも役立ちます。

 

 怒りの強弱は言葉で表すこともできます。なんとなく違和感が残る、もやっとする、という程度のものから、はらわたが煮えくりかえる、激怒、憤怒などの強い怒りまで、言葉も程度に幅があります。

 日本語は表現の豊かな言語で、「怒り」を表す言葉にも多くの表現があります。ところが怒ったときに「うざい」「ムカつく」「最悪だ」などワンパターンな口癖ばかりという人もいるようです。これもスイッチがオンとオフしかない状況に近いように思います。できれば、点数と程度を示す表現を紐付けておくと、点数と一緒に表現力にも幅が出るでしょう。

 この怒りは何点だろう、イラッと?ムカつく?腹が立つ……? 表現を探るだけでも、売り言葉に買い言葉で不適切な言動に出て後悔するという悪循環を断つことができるのではないでしょうか。

 

<アピタル:医療・介護のためのアンガーマネジメント・コラム>

http://www.asahi.com/apital/healthguide/anger/(アピタル・田辺有理子)

アピタル・田辺有理子

アピタル・田辺有理子(たなべ・ゆりこ) 精神看護専門看護師・保健師・精神保健福祉士

横浜市立大学医学部看護学科講師。大学病院勤務を経て2006年から看護基礎教育に携わる。アンガーマネジメントファシリテーターTMとして、医療・介護・福祉のイライラに対処するためのヒントを紹介する。著書に『イライラとうまく付き合う介護職になる!アンガーマネジメントのすすめ』(中央法規出版)がある。