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 感染症と自己免疫疾患は密接な関係があるということを、前回まで説明してきました。ピロリ菌を除菌すると血小板の減る病気が改善し、扁桃(へんとう)を取り除くと腎臓の病気が治りますが、今回は治療ではなく予防の話です。

 「リウマチ熱」という病気があります。よく聞くリウマチ(関節リウマチ)は高齢者の病気ですが、リウマチ熱はまったく違う病気で、5~15歳の子どもに多く発症します。心臓、関節、皮膚、神経系に炎症が起き、症状は発熱に加え、胸痛や息切れ、ひじやひざなどの大きな関節の腫れや痛み、発疹や皮下結節、けいれんのような体のふるえなどです。リウマチ熱は急性の疾患で症状の多くは一時的なもので回復しますが、心臓の弁が冒されると心臓弁膜症になり、何十年も後に症状が出ることもあります。

 リウマチ熱は、のどの「溶連菌(溶血性連鎖球菌)」の感染の数週間後に起こります。リウマチ熱は細菌そのものではなく、細菌に対する免疫系の反応が自分の体を攻撃することが原因です。大事なポイントは、リウマチ熱が起こる前に溶連菌感染を治療することで、リウマチ熱を予防することができることです。

 普通の風邪に対して抗菌薬は効きませんが、溶連菌による咽頭(いんとう)炎や扁桃炎は抗菌薬による治療が必要です。普通の風邪はのどの痛みの他に鼻水やせきといった症状も出ますが、咽頭炎や扁桃炎はのどの痛みが中心です。突然に高熱が出たり、首のまわりのリンパ節が腫れて痛んだりといった症状も溶連菌感染を示します。疑わしい場合は迅速検査や培養検査が行われます。

 抗菌薬を使うことで症状が早く治りますが、それだけではなくリウマチ熱の予防が重要ですので、症状が改善したからと抗菌薬を飲むのを勝手にやめたりせず、指示された期間はしっかり飲んでください。一般的には10日間の内服が必要です。

 素晴らしいことに、日本をはじめとした先進国では、リウマチ熱は激減しました。抗菌薬による治療のほかに、衛生環境の改善のおかげです。以前は、リウマチ熱のために心臓病を患っている患者さんがたくさんいましたが、最近ではだいぶ少なくなりました。これからもどんどん減っていくでしょう。

 とは言え、リウマチ熱は撲滅できたわけではありませんし、ワクチンもありません。リウマチ熱の原因となる溶連菌は、保育園や学校などの集団生活の場で、接触や飛沫(ひまつ)で感染します。局地的に流行することもあります。発熱やのどの痛みのある子どもとの接触を避けたり、ふだんから手洗いを行ったりといった対策が必要です。

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アピタル・酒井健司

アピタル・酒井健司(さかい・けんじ) 内科医

1971年、福岡県生まれ。1996年九州大学医学部卒。九州大学第一内科入局。福岡市内の一般病院に内科医として勤務。趣味は読書と釣り。医療は奥が深いです。教科書や医学雑誌には、ちょっとした患者さんの疑問や不満などは書いていません。どうか教えてください。みなさんと一緒に考えるのが、このコラムの狙いです。