暑い日が続きますね。猛暑は体力を消耗し、汗をかけば不快になります。
とはいえ、「暑い」と言ったところで気温が下がるわけではないとわかっているのに、世の中にはこの暑さに腹を立てる人もいるようです。「この暑さ勘弁してよ」と暑さに対して腹を立てたり文句を言ったりするのです。
しかし、怒っても何も変わらないものごとに対して怒るのは、うまい対処とは言えません。天候や気温は私たちの力では変えることができません。ですから暑さを受け入れて上手に涼を取り、できる範囲で対策するのです。
医療や介護の現場もしかりです。怒ることで改善が期待できるのなら上手に怒れば良いし、怒っても何も変わらないのなら、それは怒る必要のないことです。
たとえば仕事とはいえ夏場の入浴介助などは過酷ですし、訪問看護、訪問介護などでは夏場の移動や冷房のないお宅への訪問など、辛いこともありますよね。でも、怒ったところでこうした環境を変えられるものではありません。
日常的な場面ではどうでしょう。怒りは身近な人や出来事に対して強くなりやすいという性質があります。職場の同僚や家族は、自分にとって身近で、一緒に過ごす時間が長く、いつも言っているのだからわかってくれているだろうと相手に対する期待も高まります。
身近であるがゆえに、他人になら気にならないことでも、身内には厳しい目で見てしまう。他の部署の出来事なら「よくあること」と受け流せるのに、自分が対応しているときには怒りを抑えられない。でもやっぱり、怒ったところでそう簡単に相手を変えられるわけではありません。
ここでひとつ大事なポイントは、感情も行動も自分が主体的に選んでいるということです。環境や何かの出来事や誰かの言動は、感情をゆさぶるきっかけにはなるかもしれませんが、怒りの感情や怒りがわくような場面に身を置くという行動を、選んでいるのは自分自身です。
傍(はた)目には「そこまで嫌なら辞めればいいのに」と思うほど不満や文句ばかり言いながらも仕事を続けているような人は、なんだかんだ言っても仕事を続けることを自分で選択しているのです。そう考えると、怒って過ごすことよりも、その状況を楽しく過ごすことを選択するほうが賢明です。
不満や文句をおかずに食事をするより、味わうことに集中するほうがきっと美味しく食べられるし、大変なことを嫌々するよりも、自分をねぎらい励ましながらするほうが、頑張れるような気がします。
職場にせよ家庭にせよ長い時間を過ごす場だからこそ、居心地の良い場にしたいものです。
不毛な怒りに振り回されず、必要なことにだけ上手に怒りながら、まだまだ続く夏の暑さを楽しんで乗りきりましょう。
<アピタル:医療・介護のためのアンガーマネジメント・コラム>
http://www.asahi.com/apital/healthguide/anger/(アピタル・田辺有理子)
横浜市立大学医学部看護学科講師。大学病院勤務を経て2006年から看護基礎教育に携わる。アンガーマネジメントファシリテーターTMとして、医療・介護・福祉のイライラに対処するためのヒントを紹介する。著書に『イライラとうまく付き合う介護職になる!アンガーマネジメントのすすめ』(中央法規出版)がある。
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