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 B型肝炎と一口にいってもさまざまです。あまりにも激しい免疫反応が起きるため、ときには大量のステロイドが必要になるほどの劇症肝炎もあれば、免疫反応が起きない「B型肝炎キャリア」の状態もあります。なぜこのような違いが生じるのか、あまりよくわかっていません。

 B型肝炎ウイルスの感染後、劇症肝炎ほどは強くなく、かといってキャリアになるほど弱くなく、適度な強さで免疫が起きると、一時的に肝炎が起きますが最終的にはウイルスは排除されます。成人が感染しても多くの場合は治癒してしまうのはそのためです。一部、ウイルスを排除しきれずに、慢性B型肝炎に移行する場合があります。B型肝炎ウイルスにもいろいろなタイプがあり、近年は慢性化しやすいタイプのウイルスが増えてきました。

 慢性B型肝炎では、劇症肝炎よりもずっと弱くはありますが、肝細胞の破壊が長期間続きます。肝細胞は再生能力がありますので、数年や十数年は自覚症状がほとんど出ません。肝臓が「沈黙の臓器」と言われるゆえんです。しかし、徐々に肝臓はしだいに硬く、小さくなっていきます。

 慢性肝炎は最終的には肝硬変になります。肝機能に一定以上の障害が起きてはじめて、黄疸(おうだん)や腹水、肝性脳症といった症状が現れます。また、食道静脈瘤(りゅう)といって、肝臓へ流れる血液がとどこおって食道の静脈に流れ、コブのように膨らみます。食道静脈瘤が破裂すると血を吐き、一昔前までは肝硬変の患者さんの主な死因の一つでした。長年の炎症によってDNAが損傷を受けますので、肝細胞ががん化することもあります。

 ずっとB型肝炎キャリアの状態であれば肝炎は起きず、肝硬変にはなりませんが、肝細胞がんになることはあります。B型肝炎ウイルスが増殖する過程において、ウイルスが肝細胞のDNAに組み込まれて遺伝子に異常を起こすからです。症状がないまま肝細胞がんになり、気付いたときには進行していた、なんてこともあります。B型肝炎は、C型肝炎と比べて肝硬変にならないまま肝細胞がんになりやすいと言われています。

 B型肝炎ウイルスに感染しているかどうかは血液検査でわかります。治療法も進歩しており、ウイルスの増殖を抑える抗ウイルス薬や、免疫を活性化してウイルスの排除を目指すインターフェロン治療があります。一生に一度は、肝炎ウイルスに感染しているかの検査を受けることをおすすめします。費用を補助している自治体も多くあります。

 治療法が進歩したとは言え、感染しないことが一番です。成人の主なB型肝炎ウイルスの感染経路は性行為です。肝炎に限らず性行為で感染する病気は多くあり、安全なセックスを心掛けましょう。また、患者さんに刺した注射針をうっかり自分に刺す事故が起きることがありますので、病院で働く人にも感染のリスクがあります。

 B型肝炎はワクチンで予防できます。私は医学生のころにB型肝炎ワクチンを接種しました。私の勤務する病院では、患者さんの血液を接する機会のある職員に対してはB型肝炎ワクチンの接種をすすめています。治療も感染予防も進んでいます。将来はB型肝炎によって苦しむ人はずっと少なくなるでしょう。

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アピタル・酒井健司

アピタル・酒井健司(さかい・けんじ) 内科医

1971年、福岡県生まれ。1996年九州大学医学部卒。九州大学第一内科入局。福岡市内の一般病院に内科医として勤務。趣味は読書と釣り。医療は奥が深いです。教科書や医学雑誌には、ちょっとした患者さんの疑問や不満などは書いていません。どうか教えてください。みなさんと一緒に考えるのが、このコラムの狙いです。