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 皆さんは、どんな夏をお過ごしですか?

 夏季休暇を取っても家のことに追われ、家族旅行に行って人混みと暑さで疲労がたまり、帰省ラッシュの渋滞にイライラ……。休みが明けて仕事に出てきたら、仕事が積み上げられている。「この書類は、急ぐのだからほかの職員に頼んでくれたら良かったのに」「物品が足りない? 業者も事務も休みになるのだから消耗品は多めに補充しておいてよ」

 家庭でもイライラ、仕事でもイライラ、何もかもが私を苛立たせると感じられて、感情にまかせて、目につくままに当たり散らしてしまった人もいるかもしれません。

 仕事がうまくいかないときに子どもにきつく当たってしまい、あとで反省するという声を聞くこともあります。仕事のイライラを抱えたまま家に帰って子どもを厳しく叱りつけてしまったり、家でのイライラを職場に持ち込んでしまったりする。怒りの感情をうまく扱えないと、本来怒っている事象と無関係な人に怒りをぶつけてしまうことがあります。いわゆる八つ当たりです。

 八つ当たりされるほうは迷惑な話です。

 相手がなにやら不機嫌で怒っているということはわかるけど、何を怒られているのか、こちらはどうしたらよいのかわからないという状況になります。例えば、日ごろ「手のあいた人がやっておいて」というのに、その仕事をやっておいたら「私が確認してからやろうと思っていたのに勝手にやらないで」などと言われてしまう。これが上司なら、同じことをしているのに何も言われない日もあれば、厳しく怒られる日もある、と言うような状況に対して、スタッフは何をどう改善すればよいのかわかりません。

 これは機嫌が悪いときだけの話ではありません。チームとしてのルールから逸脱したときやミスがあったときに、機嫌が良いからといって「今日は大目に見てあげよう」などと言われては秩序が維持されなくなってしまいます。上司の機嫌に左右されるとなれば、スタッフは上司の顔色をうかがいながら働くしかありません。

 

 チームワークがケアの質に直結する医療や介護の現場では、こうした状況に陥らないように、一人ひとりが感情のマネジメントを意識しておく必要があります。

 自分の機嫌に左右されて、必要以上に怒ったり、許せないのに目をつぶって怒らなかったりしてしまう。そうならないようにするために、それぞれの場面や出来事が怒ることなのか否かという判断基準をもち、その基準に照らして考えるようにしましょう。

 「急ぎの書類は机の上に置かないで直接報告してほしい」「連休前の物品の補充は必要な数を確認してほしい」など、基準は人それぞれですから、正解不正解はありません。ただし、その基準が身勝手なものでないかどうかは省みる必要があります。自分にとって都合がいいか悪いかだけでなく、施設の利用者や同僚にとって必要だから、という視点をもつことができると、周囲の理解も得やすいでしょう。そして、基準に照らして、怒るときは毎回怒り、怒らなくて良いことには機嫌にかかわらず怒らずにやり過ごすようにしましょう。

 自分がどうしてほしいと思っているのかという基準と理由をあらかじめ周囲のスタッフにも伝えることで、自分の判断基準も整理され、一貫性のある怒り方になるのではないでしょうか。

 

<アピタル:医療・介護のためのアンガーマネジメント・コラム>

http://www.asahi.com/apital/healthguide/anger/(アピタル・田辺有理子)

アピタル・田辺有理子

アピタル・田辺有理子(たなべ・ゆりこ) 精神看護専門看護師・保健師・精神保健福祉士

横浜市立大学医学部看護学科講師。大学病院勤務を経て2006年から看護基礎教育に携わる。アンガーマネジメントファシリテーターTMとして、医療・介護・福祉のイライラに対処するためのヒントを紹介する。著書に『イライラとうまく付き合う介護職になる!アンガーマネジメントのすすめ』(中央法規出版)がある。