拡大する写真・図版イラスト・ふくいのりこ

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 すっかり秋めいてきました。食欲の秋、読書の秋、芸術の秋……。みなさまはどんな秋をお過ごしでしょうか? これまで、私の排尿管理にまつわる話をお伝えしてきました。新たなスタイルにも慣れて、やっぱり自宅が一番! と、入院から開放された喜びを実感する毎日です。前回、前々回は、私自身の話でしたが、一連の中で感じた問題点がありました。きっと私だけではなく、同じように困っている人もいるのではないでしょうか。

 自己導尿に欠かせないアイテムのひとつに、カテーテルがあります。細い管を尿道へ挿入する使い方はすべてに共通していますが、その形状はさまざまで、いくつかのメーカーがそれぞれ数種類ずつ商品展開していて、それなりにたくさんあるわけです。その中から、どれを使うのかというと、答えは「かかりつけの病院が取り扱っているもの」というのが現状です。ともすれば、種類があることを知らない多くの患者は、そこに疑問を持つことさえできないかもしれません。かつての私がそうでした。

 けれども、身体の状態によっては、カテーテルを選ばなければいけない場合があります。たとえば、頸髄(けいずい)損傷で手指が思うように動かない人はコシのあるカテーテルが向いていたり、先端に角度がついているものがよい人もいたり、女性でも男性用の長いカテーテルがよいこともあります。ただ単に使いづらいのではなく、使えないというレベルで困ることがあるのです。

きっかけは隣のベッドの患者さん

 今回、バルーン留置から導尿に切り替えるにあたって、私もカテーテルを選ばざるを得ない状況に置かれました。骨盤骨折以降、ほとんど前屈ができなくなっているため、導尿動作にも制約が生じていたのです。かかりつけ病院の扱うカテーテルでは不十分でしたが、(入院当時の)主治医に相談をしてみても「うちには、これしかないから、頑張って」と言われるだけで、何の解決にもなりません。

 隣のベッドにいた患者さんに教えてもらった情報を入り口にインターネットで調べ、使えそうな製品を提示しました。やはり「うちにはない」ということから、隣の人が処方してもらった病院へ紹介状を書いてくれることになりましたが、その紹介状に書かれていたのは「患者のカテーテルに対するこだわりが強いため」という紹介理由でした。好き好んで難癖をつけているのではなく、整形外科や小児科などの主治医も認める至極全うな理由で違うカテーテルを使いたいと言っているにもかかわらず、「こだわりが強い」と受け取られてしまう……。必要性を一番理解してほしい泌尿器科のドクターに、こう言われてしまったら八方塞がりです。

 このように、悪気はないままに「うちには、これしかない」と視野が院内に留まってしまうことは、ありがちです。多くの患者は、初めて直面する事態で右も左も分かりません。カテーテルに種類があることも知らなければ、病院から言われたものを〝使える〟ように努力しようと思うのが患者心理です。もっと快適に使える製品があったとしても、そこに疑問を持つことさえできないでしょう。こういった現状があるからこそ、脊髄(せきずい)損傷の仲間内ではカテーテルの情報交換がごく当たり前に行われています。なんのカテーテル使ってる? それいいね、病院教えて。そんな会話のおかげでQOLが上がることもありますが、横のつながりを持てた今だからこそで、かつての私は情報難民でした。

 また、病院によって取り扱っている製品が異なることは本質的な問題ではありません。どこの病院にどのカテーテルがあるのかが分からないから困ってしまうのです。今回は、たまたま隣の患者さんがいたから紹介先病院が明確になったけれど、そうでなければ、手当たり次第に電話をかけて問い合わせるしか方法がありません。メーカーが卸している病院を教えてくれれば早いですが、医療機関からの問い合わせにしか回答しないところもあるようです。

欠かせない横のつながり

 医師が患者の状況を適切に見極め、ニーズをきちんと理解し必要なものにつなげてくれる……。

 一見、当たり前のようなことだけれど、それが実現し得ない現状があります。自分の身体にあった製品を使うことで、トイレ事情が見違える人が潜在的にたくさんいるような気がしてなりません。ただでさえ、他人に打ち明けにくいトイレの悩み。人知れず苦労している排尿障害の方がいたら、かかりつけ病院処方の製品だけでなく他の選択肢もあることを知ってほしいです。

 情報難民にならないためには、主治医とのコミュニケーションが重要なのは本より、横のつながりも欠かせません。私の場合、排泄(はいせつ)障害に関しては、脊損のネットワークに支えられています。はじめは、同じ車いすユーザーといっても、事故で脊損になった人と病気でなった私では訳が違うと、切り離して考えていました。

 しかしながら、小児がんの中では、車いすになる人も少なければ、排泄障害が出る人もまたまれな存在です。患者会で悩みを話しても、思いを共有できる人はおらず、結局はひとりで抱え込む日々でした。そんなとき、わらにもすがる思いで訪ねた車いすユーザーの同好会……。原因はさておき、車いす・排泄障害という共通項に目を転じたとき、道が開けたのでした。先入観を取り払って、まずは色々な人に困っていると、こぼしてみてもいいのかもしれません。有益な情報は、意外なところに転がっているかも!?

<アピタル:彩夏の〝みんなに笑顔を〟>

http://www.asahi.com/apital/column/ayaka/(アピタル・樋口彩夏)

アピタル・樋口彩夏

アピタル・樋口彩夏(ひぐち・あやか)

1989年、東京生まれ。中学2年の時、骨盤にユーイング肉腫(小児がん)を発症。抗がん剤、重粒子線などの治療を経て、車いすでの生活に。「いつ、誰が、どんな病気や障害をもっても、笑顔で暮らせる日本にしたい!」を目標に日々、奮闘中。当事者の視点から建設的に伝えることをモットーに執筆・講演も行っている。

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