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 もう完成間近なのに、最後の詰めの作業が苦手でやる気をなくしてしまう……。そんな「完成させたくない病」に悩んでいるADHDの女性リョウさんとその夫。

 前回は、企画書の見直し作業をするのに新鮮味がなく飽きてしまうという夫が、克服するための対策をあれこれ実践しました。前回はオフィスの外で行うものが多かったので、今回はオフィス内で取り組んでみたちょっとした工夫を中心にご紹介します。

アイデアその1:立ったまま作業する

 立ったまま会議をすると、効率的に進んで早く終わるという話を聞いたことはありませんか。リョウさんの夫はそれを応用してみました。資料が社内から持ち出せず、カフェ利用が難しいという場合に役立ちそうな方法です。

写真・図版

 リョウさんの夫はついつい貧乏ゆすりをしてしまうクセがあります。あまり意識したことはありませんでしたが、その他にも隣の席の人から「よく動く」と言われています。リョウさんの夫は、見直し作業にうんざりしたら、会社の廊下の一角の自動販売機の近くにあるちょっとしたテーブルに移動します。そして、体をふらふらさせながら取り組むと、気分も変わってよかったようです。

アイデアその2:社会的なプレッシャーを利用する

 「◯日までに資料をお持ちしますので」などと、取引先や上司などに期限を明言して「やります宣言」をしてしまうことで、社会的なプレッシャーを自分で設定します。相手からしても、はっきりと期限を伝えてもらえるので安心して一緒に仕事を進めやすくなるわけです。

 リョウさんの夫は「やります宣言」をとにかく活用しました。こうして期限のあいまいな仕事に対しても、自分でプレッシャーをかけることでやる気を出すことができました。特に上司からは喜ばれました。

 リョウさんの夫は、オフィスの内外でやってみた対策が功を奏し、苦手な見直し作業がはかどり始めました。ほかにも、いくつかの方法をご紹介しておきます。

アイデアその3:アプリで進捗状況を管理する

 「タスク管理」などのキーワードで検索すると、スマホやパソコンで使える色々なアプリが見つかります。進捗状況をデータ化するだけでなく、励ましの言葉をくれる機能があるものや、中には、似た目標に向けて匿名の複数人でチャレンジし、全員が達成するとご褒美がもらえるような社会的な要素を盛り込んだアプリもあります。フリーランスの方、そんなにしょっちゅう上司に進捗状況を報告するわけにはいかない方には、心強い味方です。

アイデアその4:校閲ガールや厳しい審査員なりきる

 学生時代に、テストの見直しをするときには「採点者になったつもりでやってみよう」と言われたことがありませんか。それと同様に、「なったつもりで」企画書を見直すのです。以前、ドラマで話題になった「校閲ガール」になりきるのはどうでしょう。この方法は向き不向きがありますが、気分を出すためにあえて鉛筆をもって挑む人もいらっしゃいます。

アイデアその5:ベタにご褒美作戦

 オーソドックスですが、「この作業を終えたら、ご褒美にチョコ」のように、仕事中にも手軽に自分に与えられるご褒美を用意します。いつも得られるものではなく、でもなるべく小刻みに自分に与えられるご褒美がベストです。大きなご褒美を欲しい方は、to doリストにチェックボックスをつけたりシールを貼ったりして、それが10たまったらもらえる仕組みにするとよいでしょう。

    ◇

 いかがでしたか? 仕事に飽きてしまう方向けのアイデアを出してみましたが、ひとつでもヒットすれば幸いです。誰にでも苦手な仕事、気乗りのしない仕事はありますが、あれこれ試しながら乗り切っていきたいものですね。

 テストの見直しや絵の最後の仕上げなどを嫌がるお子さんは多いものです。お子さんには、アイデアを一緒に考える場を親子で設けることをお勧めしています。最初のうちはお子さんもアイデアを出せないかもしれませんが、親であるみなさんがあれこれひねり出す姿を見て、自然と工夫する姿勢が身につくはずです。「物事には、気合で乗り切る以外の、いろんな方法があるんだな」と気付かせることができれば、有意義な指導だと思いませんか。

生きるのがつらい女性のADHD
仕事も恋愛もつまずいてばかり……。
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<アピタル:上手に悩むとラクになる・生きるのがつらい女性のADHD>

http://www.asahi.com/apital/healthguide/nayamu/(アピタル・中島美鈴)

アピタル・中島美鈴

アピタル・中島美鈴(なかしま・みすず) 臨床心理士

1978年生まれ、福岡在住の臨床心理士。専門は認知行動療法。肥前精神医療センター、東京大学大学院総合文化研究科、福岡大学人文学部、福岡県職員相談室などを経て、現在は九州大学大学院人間環境学府にて成人ADHDの集団認知行動療法の研究に携わる。他に、福岡保護観察所、福岡少年院などで薬物依存や性犯罪者の集団認知行動療法のスーパーヴァイザーを務める。