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 気温が下がり、インフルエンザが流行するシーズンになりました。患者さんがよく気にするのは、自分の病気がインフルエンザなのか、それとも普通の風邪なのかです。英語圏でも、インフルエンザは“flu”、風邪は“cold”と区別されています。インフルエンザと風邪は似ている病気ですが、それぞれ特徴があります。

 典型的なインフルエンザは、急激に発症し高い熱が出ます。また、鼻水・のどの痛み・せきといった症状に加え、筋肉痛・関節痛・倦怠(けんたい)感といった全身症状を伴います。一方、普通の風邪は比較的ゆっくり発症し、熱も出ないか、出ても微熱であることが多く、全身症状は乏しいです。

 インフルエンザの原因は、みなさまよくご存じのインフルエンザウイルスです。一方で、代表的な風邪の原因はライノウイルスやRSウイルスですが、細菌も風邪を起こす原因になります。一説によると、風邪の病原体は200種類以上あるとか。インフルエンザにはワクチンがありますが、現在のところ風邪には有効なワクチンはありません。

 インフルエンザには特異的な治療薬があります。インフルエンザウイルスが増殖する過程を阻害することで働きます。現在、タミフル、リレンザ、イナビル、ラピアクタ、ゾフルーザという5種類の薬が使えます。どの薬もインフルエンザによる症状のある期間を約1日間短くする効果があります。一方、風邪に対しては特別な治療法はありません。鼻水に対して抗ヒスタミン薬、せきに対してせき止めといった症状をやわらげる薬を使いつつ自然治癒を待つのが基本的な治療方針です。

 以上はあくまで典型例であって、例外はよくあります。とくにインフルエンザ迅速検査が普及してからは、インフルエンザっぽくないのにインフルエンザ陽性例がけっこうあることがわかってきました。高熱や全身症状がなくても、インフルエンザではないと断定することはできません。つまり、症状からはインフルエンザと風邪を厳密に区別できないのです。

 ただ、区別できなくてもそれほど心配する必要はありません。高齢者や持病があればまた話は違ってきますが、もともと健康な人のインフルエンザはほとんどの場合、風邪と同じく薬を使わなくても自然に治ります。症状がさほどつらくなければ、抗インフルエンザウイルス薬から得られるメリットは小さいです。

 インフルエンザの流行期の医療機関は混雑しています。受診すると待合室で感染する可能性も否定できません。高熱やつらい症状がない、軽度の風邪症状ならば、病院を受診せずに家で安静にして治すという選択肢もあります。もちろん、高熱やつらい症状があったり、症状が軽くてもなかなか治らなかったりする場合は医療機関にご相談してください。

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アピタル・酒井健司

アピタル・酒井健司(さかい・けんじ) 内科医

1971年、福岡県生まれ。1996年九州大学医学部卒。九州大学第一内科入局。福岡市内の一般病院に内科医として勤務。趣味は読書と釣り。医療は奥が深いです。教科書や医学雑誌には、ちょっとした患者さんの疑問や不満などは書いていません。どうか教えてください。みなさんと一緒に考えるのが、このコラムの狙いです。