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 【松尾慈子】驚きである。タイトルが「どぶがわ」。そして読み始めると、登場するのは貴族階級らしい上品な4人のお嬢様たちや貴族からのパーティーへの招待状、テーブルに乗りきらないほどのごちそう。中でもとびきりおいしそうなのはフォアグラのソテー。それらは、現代のどぶがわで憩う老婆の夢想であると分かるのだが、夢と現実は交錯し、川のそばで生きる現代の人々の生活が淡々と描かれる、その自然な重なりぶりに舌を巻くのだ。

 舞台は高級住宅地と接する、悪臭漂う川沿いの町。話の核となる老婆は、孤独で、頑(かたく)なで、貧しく、みすぼらしい。けれども、夢の中で老婆は想像の翼を広げる。美しいお城に住む、仲の良い4人姉妹と女中。空想の中で、老婆は、慎み深い長姉の役だ。姉妹らは、おしゃべりを楽しみ、美容に悩み、パーティーに出るドレスを仕立てる。

 夢見る老婆は、小学生が投げたペットボトルが当たり、現実に戻される。臭気漂う川だが、老婆にとっては憩いの場所だ。ペットボトルを投げた小学生や、すれ違いざまに老婆の「フォアグラのソテー」というつぶやきを聞き、夫の好物だったと思い出す平凡な主婦、両親が離婚したために老婆の住むぼろアパートに母親と引っ越してきた元球児。川沿いに住み、老婆とすれ違う人々の生活が描かれる。

 夢の中で生きる彼女たちのセリ…

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