うとうととして眼(め)が覚(さ)めると女は何時(いつ)の間(ま)にか、隣の爺(じい)さんと話を始めている。この爺さんは慥(たし)かに前の前の駅から乗った田舎者(いなかもの)である。発車間際(まぎわ)に頓狂(とんきょう)な声を出して、馳(か)け込んで来て、いきなり肌を抜いだと思ったら脊中(せなか)に御灸(おきゅう)の痕(あと)が一杯あったので、三四郎(さんしろう)の記憶に残っている。爺さんが汗を拭(ふ)いて、肌を入れて、女の隣りに腰を懸けたまでよく注意して見ていた位である。…[続きを読む]

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