
政府と日銀24年ぶり「ドル売り・円買い」
外国の通貨(お金)に比べ、日本の円の価値が下がる「円安」が続いています。ドルに対する円の価値が歴史的な水準まで下がり、政府と日本銀行は9月、ドルをたくさん売って円を買う「為替介入」をしましたが、今も状況は変わりません。円安の主な要因や為替介入のしくみについて、第一生命経済研究所のシニアエグゼクティブエコノミスト、新家義貴さんに聞きました。(前田奈津子)
日本の円、アメリカ(米国)のドルなど、世界ではたくさんの種類の通貨が使われています。異なる通貨を売り買いする場を外国為替市場といいます。
異なる通貨に対して日本の円の価値の動きを表すときに「円安」「円高」という言葉を使います。たとえば円を200ドルにかえたい場合、1ドル=100円のときは2万円が必要です。1ドル=125円なら2万5千円が必要になります。円の価値が下がるので、円安ということになります。1ドル=80円なら1万6千円が必要です。円の価値が上がるので、円高です。

「円安のときに原油や食料品を輸入すると、多くの円が必要になります。そのため商品などの値段が上がり、家計にも影響が出る」と新家さん。いま、円安になっている主な要因は「米国が金利を引き上げたために、日本との差が大きくなっていること」と指摘します。
この金利は政策金利と呼ばれます。お金を発行する中央銀行が一般の銀行とお金をやりとりするときの利息を指します。
政策金利が上がると、一般の銀行は会社や個人とのお金のやりとりで決めている金利を引き上げるようになる、とみられます。すると、設備にお金をかけようとする会社や家を買うためなどにお金を用意しようとする個人は、銀行からお金が借りにくくなります。こうして、ものを売ったり買ったりする活動がおさえられ、物価が下がることが見こまれます。
米国では物価が上がっているため、金利を上げています。日本は景気がよくならず、金利も上がっていません。円安ドル高が予想されると、円を売って価値の高いドルにかえ、預金する人などが増えるとみられます。
朝小プラスまなび
デメリット ← 円安 → メリット
輸入品の値が上がり家計に影響/日本の製品が海外で売りやすい
政府と日本銀行は9月、約24年ぶりに、ドルを売って円を買う為替介入をしました。およそ3兆円規模とされます。
為替介入は、為替相場に影響を与えるために、外国為替市場で通貨を売り買いすることです。日本では財務大臣の指示で、日本銀行が行います。円高をおさえるための「ドル買い・円売り」と、円安をおさえるための「ドル売り・円買い」があります。
この時期に為替介入をしたのは、急激な円安に歯止めをかけるためでした。新家さんは「一時的に効果はあった」とみていますが、この先の市場の動向に注意する必要があると考えます。
円安がさらに進めば、為替介入をする可能性はありますが、通貨の価値は市場で決められるのが望ましいとされます。
今月17日に一時、1ドル=149円台まで円安が進みました。鈴木俊一財務大臣は18日、為替介入について、「過度な変動があった場合は、適切な対応をとるという考えは、いささかも変わりない」と話しました。
円安にはメリットもあります。日本の製品が海外で売りやすくなったり、日本を訪れる外国人観光客の増加につながったりします。
新家さんは「為替相場は生活にも影響するので、ニュースで伝えられる数字の動きに注目してください」と話しています。
(朝日小学生新聞2022年10月19日付)

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