第4回 消費者が支えるCSR
前回までをお読み頂いたみなさんは、CSRが企業だけ、あるいは企業と行政だけにまかせておける問題ではないことにお気づきでしょう。私たち消費者も、企業や行政の行動に目を光らせ、CSRをきちんと要求していく一方で、応分のコストを負担する責任と義務を負うべきときが来ているのです。
例えば、ある製品のメーカーが環境に配慮しているかどうかをチェックし、たとえ割高でも、配慮しているメーカーのものを選ぶ。そうした具体的な消費行動が、企業の環境対策やCSRを強く後押しすることは言うまでもありません。逆に、今は不景気で生活が苦しいから、環境に悪いことは分かっていても、安いほうに飛びつくというのでは、CSRを理解していない企業と同じことです。
また、「SRI(Socially responsible Investment 最近はSustainable & Responsible Investmentともいう)」、すなわち社会的責任を考えた投資がさかんに行なわれるようになっています。資金を運用するにあたり、投資先の企業を、CSRに力を入れているかどうかという基準を加えて選定するのです。こうしたSRIは、アメリカで250兆円、EUで300兆円とも言われ、世界の大きな流れとなっています。ところが、わが国のSRIはわずかに1兆円程度。経済の規模から考えて、これはあまりにも小さい。本当なら、こうした消費行動や投資行動を通じてCSRに真面目に取り組む企業に資金が集まり、その業績があがり、CSRがさらに充実するという好循環を作っていかなければならないのです。その意味では、やはり、日本人全体が、この問題に対して意識を高める必要があるようです。
それに加えて、消費者が企業や行政と対等に渡り合うためには1人1人の小さな声を大きな声にまとめ上げるNPO、NGOを育てる必要もあると思います。この部分でも、わが国は他の先進諸国に後れを取っているのではないでしょうか。
- 末吉竹二郎
-
国連環境計画 金融イニシアチブ特別顧問
東京大学経済学部卒業後、三菱銀行入行。三菱銀行ニューヨーク支店長・取締役、東京三菱銀行信託会社(N Y)頭取、日興アセットマネジメント副社長を経て、国連環境計画金融イニシアチブ特別顧問に就任。著書に『最新CSR事情』(泰文堂)、『有害連鎖』(幻冬舎)、『カーボンリスク』(北星堂書店)など。TBS「みのもんたの朝ズバッ!」月曜レギュラーコメンテーターとしても活躍中。