第6回 「サステナビリティ」とCSR(2)
前回のコラムで「サステナビリティ」について説明したが、ここでポイントになるのは「地球の限界」という捉え方である。このままの経済社会の延長線上では、地球上の人口増加のスピードに食料や水、エネルギーの需要は追いつかず、近い将来には地球の生態系(生命維持システム)がオーバーシュートし崩壊してしまうと言われている。
この「地球の限界」の警鐘が鳴らされたのは、1972年に遡る。ローマクラブという世界25カ国70名で組織された民間のシンクタンクがMITのメドウズ博士らに委嘱したコンピュータシュミレーションが元になっている。結果として導かれたのは、
「世界人口、工業化、汚染、食糧生産および資源の使用と現在(当時)の成長率が不変のまま続くならば、来るべき100年以内に地球上の成長は限界点に達するだろう」という科学的予見であった。
すでに私たちは、当時から40年近い歳月を無駄遣いしてしまったばかりか、最悪の終末に向かってスピードアップしているのが現状だ。もちろん、この元凶には、悲しいかな、世界を豊かにしようとグローバルに活動範囲を広げた企業の姿が浮かび上がってくる。だからこそ早急に、今の「地球の限界突進型ビジネスモデル」を「地球の持続可能性挑戦型ビジネスモデル」に変えなければならない。それこそが、企業に寄せられる次世代からの期待そのものであり、CSRのゴール(目的)になるべきものである。
例えば、その企業が存続するためにも近い将来に
・ 現在のビジネスは資源循環型か?
・ これから起きるかもしれない原材料の高騰や調達不足に対する策があるか?
・ 環境問題を解決する技術開発(イノベーション)が可能か?あるいは、その技術を使った社会システムへの転換が可能か?
・ 世界中の飢餓・貧困に始まる経済格差の問題を解決することが可能か?
などを自社でまずは自問自答してみる必要があるだろう。まさに「本業におけるCSRの実践」とは、その企業の事業そのものの見直しにもなり得るような、こうした問題提起から始まる。
CSRは、企業側から見れば、企業の生き残り(サバイバビリティ)策であり、社会・環境問題を無視する企業は社会から認められないという考え方かもしれない。一方、社会側から見れば、次世代に向けたよりよい社会創りのために、様々な問題に取り組む企業こそ存続に値する企業という見方だ。次世代のニーズを考えた商品づくりや技術開発、システム構築が求められる。もちろん、企業が単独でできる範囲は限られてくるから、社会との連携や協働という方法が有効となってくるだろう。
- 薗田綾子
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兵庫県西宮市生まれ。
甲南大学文学部社会学科卒業。1988年、女性を中心にしたマーケティング会社クレアンを設立。1995年、日本初のインターネットウィークリーマガジン「ベンチャーマガジン」を立ち上げ、編集長となる。そのころから、環境ビジネスをスタート。1996年 「地球は今」10巻シリーズを創刊。
現在は伊藤忠商事、住友林業、富士ゼロックスなど延べ約240社のCSRコンサルティングやCSR報告書の企画制作を提供。
NPO法人サステナビリティ日本フォーラム事務局長、NPO法人社会的責任投資フォーラム理事、有限責任中間法人環境ビジネスウィメン理事などを務める。