今日の“先生”はエンジニア!
中央区立明石小学校のパソコン教室。6年生は“先生”たちに元気よく挨拶しながら入ってきた。今日は、現役のエンジニアのボランティアによるロボットを使った授業。

先生は日本IBMの新井靖さん
さすがにエンジニアが“先生”だけあって、プレゼンソフトとプロジェクターを駆使したハイテク授業がスタートした。「今日みんなが勉強することは3つあります」と大きな声で呼びかけているのは、日本IBMの新井靖さん。スクリーンには「(1)エンジニアってどんな人? (2)プログラムってどんなもの? (3)ロボットはどうやって動くの?」という文字が次々と映し出されていく。テンポの良い先生からの問いに元気に答える子どもたち。この対話の中から次々と答えが導かれていく。「プログラムを使ってコンピューターを動かし社会に役立つことをする人」がエンジニアだとわかると、「今日は、みんなにエンジニアになってもらうからね!」と新井先生。子どもたちの顔に驚きと期待の表情が浮かぶ。

やったね。できた!
次は、プログラミングの第一歩。新井先生は生徒にとって身近なスーパーのレジのシステムを例に、「コンピューターを動かす命令の組み合わせ」がプログラムであると解説した後、面白そうなゲームが始まった。IBMが科学技術センター協会などと共同で開発した「TryScience」というサイトでも体験できる「ロボットに命令しよう」というゲームだ。ルールは自分で命令を組み立ててロボットに有毒廃棄物を拾わせ、安全な場所に捨てさせるというもの。さすがにゲーム世代。すぐに「できた!」「終わった!」との声が上がる。プログラミングの感覚はもう十分理解できたようだ。
さあ、どんなロボットができるかな?

組み立てるのって楽しい〜
ウォーミングアップの後は、いよいよロボットとご対面だ。理科室に移動し、各机に置かれた「ROBOLAB」の箱を前にどよめきが起こる。開けるとなかに部品がいっぱい。ロボットも自分で組み立てるのか! 先生の説明が終わらぬうちに、動き出す手。あっという間にロボットたちは完成する。誰かが、机の上に貼られたビニールテープのコースに気づく。なんと、このコースに沿ってロボットたちを動かすのだという。初級から上級までレベルは3段階。初級コースは直線、中級は90℃の曲がり角、そして上級はSとRの形となっている。「コースからはみ出ても、ゴールで止まらなくてもアウトです!」という先生の声が響く。

動き方のデータはしっかりと記録
ロボットを抱えてパソコン教室に戻った子どもたちに、新井先生は「ロボットを動かすポイントは、向き、時間、強さの3つ。さあ、どうする?」と問いかける。さっきまで元気いっぱいだった子どもたちは急に静まり返ってしまった。そこで、とっても重要なヒントが詰まった練習問題が配られる。子どもたちは専用のプログラミングソフトを立ち上げ、この練習問題に沿って、向き、時間、強さの数値を入力し、ロボットに命令を出してはその動き方のデータを真剣な表情で記録していく。新井先生やボランティアの先生方は優しくアドバイスをして回っている。
ロボットに命令できるなんてびっくり!

さあ、上手く走るかな!?
練習が終われば、今度は実践だ。各机ではロボットが動く度に歓声と悲鳴が上がる。「一番大事なことは結果の確認です。必ずどうして失敗したかを考えてから修正を行うこと!」との指導が入る。試行錯誤が繰り替えされるうちに、自信がうかがえるようになっていく子どもたち。1段階クリアするごとに認定シールをもらうと笑顔がこぼれる。さすがに終盤ともなると、上級コースの周りには大きな人だかりができ、みんなのテンションは最高潮に。しかし、無情にも授業の終了時間がきてしまう。「もう少し時間があれば…と悔しい思いをしている人もいると思いますが、限られた時間で結果を出すのもエンジニアの仕事なのです」。
ロボットを片付けながら、子どもたちは「ものすごく楽しかった。将来エンジニアになってもいいかも!」「ロボットに命令できるなんて本当にびっくり!」と目を輝かせていた。

とっても楽しかったよ!
授業を終えた新井靖さんに今日の感想を伺うと、「今日はクラスの反応やまとまりが良かった」。「真剣に取り組む子どもたちの顔を見ると、心身ともにリフレッシュします」。この活動の立ち上がりからのメンバーである井上真奈さんは、「先生方からは、是非またよろしくお願いしますという嬉しいお言葉をいただきました。こういう活動は継続が大事。これからも発展させていきます!」。
2005年のスタート以来、「ROBOLAB教室」の授業は子どもたちに科学の楽しさを鮮明に印象づけているはずだ。