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政府債務(借金)に苦しむ欧州の国々に、中国が盛んに進出している。イタリアには中国人経営の「工場団地」が出現し、港湾や道路などインフラ投資も進む。財政難などの弱点をついて存在感を増す中国に、地元では期待と懸念が交錯する。
■中世からの織物の街で「格安に革ジャン生産」
イタリアの古都フィレンツェから約20キロ。なだらかな丘陵に赤茶色の屋根の家々が連なるプラート市の郊外に、漢字の看板を掲げた建物群がある。「プロント・モダ(既製服)」と書かれたイタリア語の隣に漢字で「公司(会社)」。中国系移民が経営する洋服の卸問屋だ。
店内には革ジャン、ニットのコート、スカートが並ぶ。1着6.5ユーロ(約700円)からと格安だが、女性店員は「プラートで縫製したメード・イン・イタリーよ」と胸を張る。路上にはオーストリアやハンガリーなど欧州各地から買い付けに来た車が並ぶ。
プラートにある中国人経営の衣服工場は約3千。人口19万人のうち中国人は不法移民を含め4万人以上とされ、人口比では欧州最大のチャイナタウンだ。
中世から続く織物の町に最初の異変が起きたのは約20年前。浙江省温州から来た中国人が工員として地元の衣服工場で働き始めた。10年ほど前からは自分で工場を起こす者が出てきた。そして近年、「我も」と一獲千金を夢みる同胞が温州などから殺到している。
成功の秘密は安い原料と労働力。生地は本国から格安で輸入する。解雇しにくく、休日が多いなど手厚い雇用法制で守られるイタリア人は雇わない。かわりに移民を長時間働かせて急な注文にも応じることで、欧州全域から中東まで販路を拡大した。最近は中国向けの輸出が増えている。中国の新興中産層にとって、「イタリア製」のブランドは大きな魅力だ。