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外需依存変わらず景気対策に懐疑的な見方

2009年4月9日17時55分

 [東京 9日 ロイター] 鉱工業生産や日銀短観の先行き改善傾向に加えて、9日発表の2月機械受注が増加に転じた。政府による56兆円超の追加経済対策の効果も出てくるとみられ、金融市場の一部には景気底入れの期待感が浮上してきた。

 ただ、景気悪化の起点となった外需の動向や、国内の雇用・所得面での弱さに不透明感が強く、景気回復の時期やその後の展開に確かな手応えを感じている市場参加者は少ない。政府の対策が自律的な回復にそのままつながるとの見方もエコノミストの中でほとんどなく、輸出を左右する海外経済の動向次第という構図が続いている。

 <設備投資の底割れ回避> 

 9日に発表された2月機械受注を含め、最近の経済指標には、先行きの改善を期待させる兆しもいくつか出ている。 

 2月機械受注をみると、昨年12月から減少幅が縮小し、5カ月ぶりに前月比増加に転じ、設備投資が底割れするリスクが後退したとの見方が出てきた。クレディ・スイス証券・チーフエコノミストの白川浩道氏は「機械受注もそろそろ底入れしつつある可能性が高い」として、「設備投資の見通しを下方修正しなければならないかもしれないと考えていたが、その必要性は後退してきた」とみている。

 今月のけん引役は受注額でウエートの高い非製造業。非製造業からの受注額は2カ月連続で増加となった。日銀短観でも09年度設備投資計画は、製造業ほど落ち込んではいない。今回の世界的な金融危機や景気悪化の影響では、製造業への打撃が大きかったものの、非製造業への影響は相対的に小さかったためと見られている。

 ただ、中身をみると、船舶や鉄道車両など大型の発注が重なった要因もあるようだ。同統計が単月の振れの大きいことを考慮すると、持続力のある「増加」なのか、もう数カ月様子を見る必要がありそうだ。

 また、製造業は前年比でみるとまだ5割以上の減少となっており、受注額水準も過去最低を更新。機械受注全体で底打ち・反転との判断は時期尚早との声が大勢となっている。 

 <生産や輸出動向に明るい兆しも> 

 ただ、3月30日に発表された鉱工業生産速報では、3月と4月の予測指数がプラスに転じ、生産の底入れが近いとの思惑が浮上。輸出も中国やアジア向けの一部で回復の兆しが見えてきた。

 3月日銀短観では足元の業況感は大幅に悪化したものの、久しぶりに先行き改善を示した。

 背景には、海外で在庫調整が急激に進展してきたことや、主要国の大型景気対策で需要が出始め、世界経済全体で持ち直しの動きが見え始めたことがあるとみられる。

 日銀は8日公表した金融経済月報で、輸出や生産について「内外の在庫調整圧力が減衰するにつれて、減少テンポは緩やかになっていくと予想される」との判断を示した。こうした材料が設備投資まで波及するのかどうか。機械受注を見る限り受注額の外需はまだ前月比3割近い落ち込みとなっているが、もし輸出・生産が安定してくるとすれば、設備投資意欲も回復する可能性があり、今後の動きが注目される。 

 <追加経済対策、持続的効果に疑問符> 

 政府が10日にも正式発表する追加経済対策も、景気の自律的な底打ちを後押しする材料になると見られる。財政支出は15兆4000億円、事業規模は56兆円を上回り、補正予算としては過去最大規模となる見通しだ。

 景気に底打ちの兆しが確認されることに加え、主要国による経済対策が今後効果を発揮し始めると見込まれる点も考慮に入れると「4─6月期の国内景気情勢は、1─3月期に比べ改善すると予想される」(野村証券・チーフエコノミスト、木内登英氏)との見方も浮上している。

 ただ、対策の内容をみると、雇用のセーフティネットや環境対策のほか、公共事業の前倒しなど従来型の事業が含まれている。対策によって日本経済が持続的に力強い成長に回復できるとの見方は少ない。「単に需要の先食い、負担の先送りにつながってしまわないか、危ぐの念を表明してきたが、明らかになった経済対策の概要をみる限り、懸念は現実になりつつあるようだ」(みずほ証券・チーフマーケットエコノミスト、上野泰也氏)との厳しい見方もある。政策当局の中にも「外需が以前の水準に戻ることは想定できない。対策もそれを前提に考える必要がある」として、従来型の対策では日本経済の建て直しは難しいとの見方がある。 

 <懸念材料山積み、回復には距離感> 

 経済指標の改善や景気対策が打ち出されたといっても、景気が自律的に反転していくかどうかを見通す上で、懸念材料は多い。企業部門の回復には海外経済の持ち直しが不可欠だが、その前提条件となる欧米での金融不安はいまだ解決していない。国内でも、厳しい企業収益や資金調達環境が続いており、企業活動が正常化する状況にはない。家計部門では今後雇用・所得環境のさらなる悪化が予想されている。

 日銀ではこうしたリスクを踏まえて、当面は「国内民間需要はさらに弱まっていく可能性が高い」との判断を示した。

 ただ、景気悪化の起点である生産・輸出の落ち込みが和らいできたため、これが持続すれば年後半からの回復シナリオは維持できると見ている。今後景気が底入れするのか、あるいは二番底に陥るのか、日銀でも「海外情勢次第」だとみている。  

(ロイター日本語ニュース 中川 泉記者;編集 田巻 一彦)

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