写真・図版 2月4日、為替スワップ取引を介したドル調達コストが過去最低水準まで低下し、為替ヘッジ後の米国債のリターンが久々に魅力的な水準まで上昇する中、年金など一部投資家を除いて、国内勢の米債投資は盛り上がりに欠ける。写真は都内で2013年2月撮影(2021年 ロイター/Shohei Miyano)

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 森佳子

 [東京 4日 ロイター] - 為替スワップ取引を介したドル調達コストが過去最低水準まで低下し、為替ヘッジ後の米国債のリターンが久々に魅力的な水準まで上昇する中、年金など一部投資家を除いて、国内勢の米債投資は盛り上がりに欠ける。背景にはコロナ関連融資など国内の資金需要が強まっていることなどがあるとみられる。

 <外債投資、「必要性が低下」>

 財務省の統計によれば、国内勢の海外中長期債投資は1月に暫定値で約2.5兆円と昨年11月につけた月間のピーク5兆円からは半減の水準にある。

 マーケット・ストラテジィ・インスティチュート代表の亀井幸一郎氏は「最近の米国債入札では、プライマリー・ディーラーの入札が過去平均を下回っても入札結果は順調だったので、日本を含めた海外勢の引き合いがもっと強いと予想していた」と述べる。

 金融界には独自の事情があるようだ。

 三菱UFJリサーチ&コンサルティング主席研究員の廉了氏は「コロナ対策融資など、金融機関にとって国内での資金の使い道が開けたことで、あえてリスクをとって外債に投資する必要が低下している」と指摘する。

 日銀の統計によると、全国の民間銀行と信用金庫が企業や個人向けに行った融資は昨年12月の平均残高で577兆6393億円となり、比較ができる2000年以降で最も多くなった。

 特に新型コロナウイルスの影響で資金繰りが厳しい中小企業や個人事業主向けの融資が多い地方銀行や信用金庫では、融資の残高が増加を続け、「コロナ禍でバランスシートに占める貸し出しの比重が高まっている」(国内銀)という。

 <ドル調達コストは過去最低>

 国内勢が外債投資をする際のドル調達コストは、足元で過去最低水準となり、ドル建ての証券投資には近年まれにみる好環境が到来している。

 3カ月物の円投/ドル転スワップを利用したドル調達コスト(為替ヘッジコスト)は現在28ベーシスポイント(bp)付近と過去最低レベル。日本勢が米10年国債に投資した場合、ヘッジコストを差し引いても約83bpのリターンを確保できる。

 ヘッジコストを加味した米国債の投資リターンは、2018年11月から昨年4月までマイナス圏に沈んでいたが、米連邦準備理事会(FRB)が昨年3月23日に無制限の量的緩和(QE)を導入して以降、短期金利が徐々に押し下げられ、米国債の投資リターンはプラスに転じた。

 さらに、FRBが昨年3月末に拡充した他中銀に対するドル融通の流動性スワップでは、84日物のドル資金を33bpで調達できるため、スワップ取引では同水準が事実上の「シーリング」となって、ドルの調達コストの上昇を抑えている。

 ただ、リスク資産投資には株式市場という「ライバル」もいる。

 FXプライムbyGMO、常務取締役の上田眞理人氏は「リスク資産投資という観点からは、国内株が比較的好調なので、この程度の日米金利差拡大で、あえて外に出る(米債に投資する)必要がないのではないか」とみている。

 また、安くなった為替ヘッジコストは、元々ヘッジ比率が低めな投資家にとってはインセンティブとなりにくい。

 前出の財務省統計によれば、国内年金勢の投資動向を反映する信託銀行の信託勘定は昨年1年間に海外中長期債を16兆9688億円買い越し、全投資家の買い越し額(20兆7078億円)の82%を占めた。

 国内年金勢の中でも最大規模の年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は為替ヘッジ付き外債投資を2019年から始めたばかりで、他業態に比べてヘッジ比率は低いとみられる。

 一方で、主にヘッジ付き外債投資を進めてきた銀行等の海外中長期債の買い越しは昨年4兆2925億円と、2019年の実績(8兆6545億円)から半減した。

 <米国債保有で存在感増すFRB>

 米国財務省の対米証券投資統計によると、日本を含む海外投資家の米国債保有残高が昨年11月まで4カ月連続で減少した。保有残高トップの日本は1兆2600億ドルで、前月の1兆2690億ドルから減少した。

 民間投資家による対米債券投資がさほど盛り上がらない中で、存在感を増しているのがFRBだ。

 FRBは1月27日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で、市場で浮上し始めたテーパリング(QEの段階的縮小)の思惑を一蹴。FRBの米国債保有残高は1月27日時点で過去最高の4兆7661億ドルと1年間で倍増し、テーパリングどころか、QEを堅持していることが分かる。

 「米新政権の経済対策で、今後一段と大量の米国債発行が予想される中で、国内復興需要に応える各国の民間金融機関は、これまでのように余剰資金の大半を米国に投じるわけではない。こうした中で、FRBは米国債の投資環境に今後も大きな影響を及ぼしていくだろう」(前出の国内銀)との声も出ている。

 

 (森佳子 編集:内田慎一)