写真・図版 中国河北省の中小都市、タク州市にあるマンションの1室を購入したズーさんは、北京まで通勤できる鉄道を建設する約束を開発業者が果たさなかったため、住宅ローンの支払いを打ち切った。写真は同市で3月撮影(2021年 ロイター/Lusha Zhang)

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 [タク州(中国) 2日 ロイター] - 中国河北省の中小都市、タク州市にあるマンションの1室を購入したズーさんは、北京まで通勤できる鉄道を建設する約束を開発業者が果たさなかったため、住宅ローンの支払いを打ち切った。

 会計の仕事をしながら補償請求運動をしているズーさんを含め、3人の買い手にロイターが話を聞いたところ、業者の対応に腹を立てて昨年ローンの支払いをやめた買い手は1000人前後に上る。

 「私は何か悪いことをしたわけでないのに、なぜこんな目に遭わなければならないのか」とズーさんは憤る。

 一方、中国南西部の雲南省にある風光明媚(めいび)な都市、大理市では、小規模企業経営者のリーさんが、2年余りもマンション住宅引き渡しで待ちぼうけを食わされている。現在は両親も同居する形で家族で狭い借家に暮らすリーさん。「開発業者は2018年末から都合4回も引き渡しを延期している。彼らへの信頼は、もう完全に失せた」とあきれ顔だ。

 大理市のリーさんともう1人の買い手によると、開発業者からは建設業者への支払い資金がないため、住宅の鍵を渡すことができない状態だと説明された。開発を手掛けた大理海東開友投資は、ロイターのコメント要請に応じなかった。

 ロイターは、タク州市のマンションを開発した上海上場の華夏幸福基業股分有限公司にもコメントを求めたが、回答はない。この会社は約57億ドルの債務でデフォルトを起こした、と報じられている。

 ズーさんやリーさんの苦労の背景には、中小都市で商売をする不動産開発業者が多額の債務を抱えて、どんどん首が回らなくなっているという状況がある。業者の多くは不動産市場が過熱気味だった16年から18年にかけて野放図な借り入れを進めた結果、今になって過剰債務と需要急減、規制厳格化という「三重苦」に見舞われている。

 アナリストによると、こうした問題はより小規模な都市に限定されている。大都市の需要は衰え知らずのため、大手の上場不動産開発業者の事業は引き続きうまく回るだろうという。

 一方で、今後は不動産セクターのデフォルトが増加し、金融機関や地方政府にも悪影響が及ぶのではないかとの懸念も示している。

 上海の不動産コンサルティング会社、同策房産諮詢のシニアアナリスト、ソン・ホンウェイ氏は「恐らく今年はデフォルトが増え、市場はどの業者の債務が多く、どの業者の案件が小規模な都市に集中しているかを見極めようとするはずだ」と述べた。

 <デフォルト連鎖懸念も>

 中国国家金融・発展実験室(NIFD)のデータによると、昨年の不動産開発セクターの社債デフォルトは、前年から4倍増の266億元。今年も3月半ばまでに、華夏幸福基業の案件を筆頭に87億元に達したとされる。

 不動産開発セクターで今年に返済期限を迎える国内市場とオフショア市場の社債総額は、さらに42%増える見込み。規模では過去最大の9000億元に達する見通しだ。

 規制当局が今年になって信託基金など影の銀行(シャドーバンキング)を含めた不動産向け融資規制のため、債務/キャッシュ比率、債務/資産比率、債務/エクイティ比率の新たな上限を導入したことで、開発業者には重圧がさらに加わっている。

 こうした業者によるデフォルトの危険性によって生じる潜在的な金融システムリスクをアナリストらは懸念する。しかし、そのリスクがどれぐらいの大きさか見極めるのは至難の業だという。

 北京のZhixin Investment Research Instituteのエコノミストチームは、リポートで「借入比率が大きく、資本回転率が低調な一部の不動産業者は、短期債務返済の面で相対的に高い圧力に直面している。引き締め的な金融環境が今後、資金繰りのひっ迫につながり、不動産業者から信託基金、第三者の理財商品運用業者にまたがるクロスデフォルト(デフォルトの連鎖)が起きる可能性がある」と警告した。

 別のアナリストは、開発業者が支出を抑えることで新規開発プロジェクトの落ち込みが長期化すれば、土地売却で資金を調達する傾向のある地方政府が、債務返済能力で影響を受けるのではないかとみている。

 ロイターが政府統計に基づいて計算したところ、中国全体で見れば住宅価格はなお上昇基調を維持しており、昨年の上位70都市の平均上昇率は4.9%だった。

 ところが、中国社会科学院のデータでは、最も規模が小さい19都市の住宅価格は、ピークだった17年と18年に比べて2桁の下落率を記録した。恒常的な人口流出に悩み、地元経済の先行きが明るくない多くの小規模都市では、住宅在庫が40カ月超分の販売数に匹敵する水準まで積み上がっていることが、調査会社CRICのデータで確認できる。

 住宅開発が途中で投げ出される問題が相次いでいることを受け、山東省煙台市や雲南省の紅河ハニ族イ族自治州、曲靖市の少なくとも3つの地方政府は、プロジェクト完成までの日程を当局が管理することになり、新規案件への監督強化にも乗り出した。

 それでも買い手の立場は、ほとんど改善していない。

 タク州市のマンションを買ったズーさんは北京で働くため、今も北京に居住。自分たちのローン支払い打ち切りがマンション業者の華夏幸福基業を交渉のテーブルに引っ張り出すきっかけになってくれればと期待している。

 これまでズーさんや他の買い手は何度も善処を求めたり、抗議したりして奮闘してきた。しかし、事態は全く進展していない。ズーさんは、そこそこの規模の都市で持ち家に住む夢は消えたのか、と自問している。

 (Lusha Zhang 記者、Ryan Woo記者)