現在位置:
  1. asahi.com
  2. ニュース
  3. ビジネス
  4. トピックス
  5. 経済を読む
  6. 記事

製紙業界、破談続き シェア重視の再編、行き詰まり

2009年4月6日0時29分

写真:北越製紙の最新鋭生産ライン=新潟市北越製紙の最新鋭生産ライン=新潟市

図:紙の内需と実質GDPの動き紙の内需と実質GDPの動き

 経営統合を検討していた総合製紙2位の日本製紙グループ本社と段ボール最大手のレンゴーが、提携関係を解消しました。製紙トップの王子製紙による北越製紙の買収失敗に続く破談です。その背景には、シェア重視で進められた過去の再編の効果に懐疑的な見方があります。一方で、将来の「紙離れ」を予感し、現状に安住できません。業界の苦悩は深そうです。

■効率進まぬ2強

 日本製紙とレンゴーが業務提携を結んだのは07年3月。段ボール業界3位の森紙業グループなどを買収し、拡大路線を突き進む王子製紙の「対抗軸」をつくる狙いがあった。古紙をはじめとする原材料の共同調達などで経営効率を高めながら、「最終的には経営統合する方向で一致していた」(日本製紙幹部)。

 状況が一変したのは昨年末。関係者によると、経済危機が深刻化するなか、レンゴーは、7900億円余の連結有利子負債(08年末時点)を持つ日本製紙の財務体質を懸念。当初定めた2年間の提携期間のうちに統合の決断を迫る日本製紙側に反発した。

 一方、日本製紙側には「長々と統合交渉を行うのは、人材など資源の無駄遣い」(経営企画本部)との考え方があった。円高は遅れていた海外展開を進める好機でもある。提携期限が近づいても合意できない状況を前に、統合を白紙に戻すことにした。

 製紙業界では、06年に王子製紙が北越製紙の買収を断念した。

 王子は、新潟工場に最新の製紙ラインを計画する北越を傘下に収め、老朽化した自社設備を廃棄し、値崩れにつながる過剰供給能力を抑える青写真を描いた。独立にこだわる北越に対し、王子は株式公開買い付け(TOB)に踏み切ったが、日本製紙や大王製紙が「反王子連合」を結成し北越株を取得。三菱商事も北越の第三者割当増資を引き受け、王子のTOBは成立しないまま終わった。

 再編が相次いで頓挫した背景には、規模で勝る王子製紙が利益率では北越より低いという「逆転現象」がある。日本製紙とレンゴーの比較も同じ。08年3月期の売上高に対する営業利益の割合(連結ベース)は北越製紙4.8%に対し、王子製紙は3.2%。レンゴー2.9%に対し、日本製紙は2.7%だ。

 再編を繰り返して規模を拡大したものの、「シェア争いを優先して老朽化した設備を廃棄せず、効率化が進まなかった」(業界関係者)とされる。中堅メーカーにとって、2強との合従連衡はバラ色に映らなかったというわけだ。

■内需落ち込みは深刻

 とはいえ、製紙業界が今後も再編なく、生き残れるとの見方は少数派だ。北越製紙は3月27日、業界14位(08年生産ベース)の紀州製紙を10月1日付で完全子会社化し、社名も「北越紀州製紙」に変えると発表した。再編の動きが再び加速する可能性がある。

 背景には強烈な危機感がある。日本製紙連合会の芳賀義雄会長(日本製紙社長)は2月末の記者会見で「業界に明るい話はない。需要低迷が長引くつもりで生産能力削減を速やかに考えなければいけない」と語った。

 同連合会によると、09年の紙の内需は前年比8%減の2826万トンに落ち込む見通し。減少率は統計が今の形になった88年以降で最大。深刻なのは、紙需要の減少が「景気悪化だけでなく、人口減やペーパーレス化など構造的な要因」(芳賀会長)を抱えていることだ。業界全体の2割の生産設備が余剰とされる。

 製紙業界を震え上がらせているグラフがある。05〜07年は実質国内総生産(GDP)が平均2%伸びたのに、国民生活や産業活動の向上と足並みをそろえて増えてきた紙の内需は、ほとんど横ばいだったのだ。

 世界同時不況によるコスト削減の流れは「紙離れ」を一気に加速させる可能性がある。例えば、NEC情報システムズが開発した端末の画面で資料の閲覧やメモ書きができるシステムは、すでに十数社が導入。会議で紙が不要になった。今年1月には株券の電子化も完全実施された。

 需要増が見込めない中、王子製紙と日本製紙の2強は、中国での新工場建設や豪製紙大手の買収など、海外での新規需要の開拓に活路を見いだそうとしている。だが、単価が安い製紙業界は輸送費負担が重く、典型的な「内需依存型産業」。本拠地である国内市場での収益体質の強化は、避けられない課題だ。(大日向寛文)

PR情報
検索フォーム
キーワード:


朝日新聞購読のご案内