2009年5月21日1時10分
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電動モーターがペダルを踏むのを助ける電動アシスト自転車が「快走」を続けている。08年の国内出荷台数は、50cc以下の原付きバイクを抜いた。ヤマハ発動機が世界で初めて市場に投入して15年余り。人気のすそ野は性別や年代を超えて広がっている。
東京都目黒区にある電動自転車専門店「ASSIST(アシスト)」。週末には1日100人を超す人が足を運ぶ。1台10万円前後と一般自転車の2倍を超える価格だが、3年前にオープンしてから売り上げ台数、金額とも年間約2割増のペースが続く。
アシストの運営会社社長の飯泉正順さん(54)は「お年寄りや幼稚園の送り迎え向けというイメージがあったが、スポーツタイプなどデザインや車種も増えた。若い女性や、通勤に使いたいという男性の関心も高い」と話す。
日本自動車工業会や自転車産業振興協会によると、08年の電動自転車の国内出荷台数は約31万5千台で、不況で落ち込む原付きバイク(約29万5千台)を初めて追い越した。
さらに法改正で昨年12月には、アシスト力を従来の2倍まで高められるように規制が緩和された。景気悪化も追い風だ。燃料費や駐車代を嫌い、自動車やバイクから乗り換える人が増えているのだ。
大阪市東淀川区で映像関係の仕事に携わる中生雄二さん(51)も昨年12月、約12万円する大手メーカーのスポーツタイプの電動自転車を購入した。4キロ離れた職場との往復や、10キロ以上ある取引先への行き来にも利用している。
これまで車やバイクを使っていたが、ガソリンや駐車代に毎月5万円前後かかっていた。今ではほぼゼロだ。「風を切るさわやかさは、車にはない。目的地で駐車場を探す時間も省け、金銭的にもすでに元が取れた」と満足げだ。
日本郵便は、リヤカーの付いた電動自転車を06年から導入。現在、127台が集配作業などに使われている。東芝エレベーターも04年から全国で300台近くを保有し、保守点検に利用している。
環境意識の高まりなどから、今後も利用企業は増える見通し。国内トップシェアのパナソニックは「欧米などにも積極的に展開していきたい」と話している。
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〈電動アシスト自転車〉 リチウムイオン電池などを使い、電動モーターでペダルをこぐのを助ける自転車。1回の充電にかかる電気代は10円程度で、最長約40キロ走れるタイプが主流。93年にヤマハ発動機が「PAS」を一部地域で発売したのがはじまり。現在パナソニック、ヤマハ、三洋電機などが手がけている。