2010年2月25日3時3分
新日本製鉄が計画しているステンレス業界の再編に対し、公正取引委員会が承認しない方針を固め、同社側に通知したことが分かった。業界の公正な競争が制限され、顧客の不利益になる可能性があると判断したとみられる。新日鉄側は不服とし、審査の継続を求める予定だ。
複数の関係者によると、公取委は今月前半、新日鉄側に審査を打ち切る考えを伝えた。新日鉄は昨年、公取委に審査を申し入れ、公取委の承認を得たうえで再編にとりかかる予定だった。
再編計画は、ステンレス大手の日新製鋼に対する新日鉄の出資比率を現状のほぼ2倍の20%に引き上げて「グループ化」する▽日新製鋼が新日鉄の子会社「新日鉄住金ステンレス」(NSSC)に新たに20%出資することが柱。業務面でも、NSSCと日新製鋼で生産品目の集約化やOEM(相手先ブランドによる生産)供給などを進め、設備の効率化を目指す。
公取委は、資本関係が深まれば、ステンレス製品だけではなく、普通鋼など他の鋼材まで販売調整が及ぶ恐れを懸念。NSSCに20%出資する住友金属工業に対し、普通鋼の資料の提出などを求めた。
新日鉄側は「普通鋼は直接関係がなく、審査の対象を超えている」などと拒否。公取委は審査に必要な資料が得られないことなどを理由に、審査の手続きをこれ以上、進めない考えを伝えたという。新日鉄側は計画の見直しを迫られる可能性がある。
海外のステンレスメーカーは大型化が進み、年間生産量は300万トン前後に達している。しかし、国内では、最大手のNSSCと日新製鋼を加えても、百数十万トン程度にとどまる。新日鉄側は、大型化が進む海外メーカーに対抗するためには、再編による規模拡大が必要だと訴えてきた。
一方、建材用鋼板の販売をめぐり、価格カルテルを結んでいたとして、新日鉄の別の子会社や日新製鋼などが昨年9月、独占禁止法違反(不当な取引制限)の罪で東京地裁から有罪判決を受けた。鉄鋼業界が繰り返し同法違反に問われてきたことも、公取委の姿勢をより慎重にさせたとみられている。(益満雄一郎)