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郵政改革、ペイオフ議論に波及 「利点ない」民間は冷淡

2010年4月3日1時25分

図:  

 ゆうちょ銀行の預け入れ限度額の引き上げなど郵政改革案の余波が、金融機関の預金者を守る「ペイオフ」のあり方に押し寄せている。官製金融の肥大化に猛反発する民間金融機関への配慮から、亀井静香金融・郵政改革相らが次々に「ペイオフ見直し」を口にし始めたが、民間側は「利点は乏しい」と冷めている。

 亀井氏が預金保護の上限引き上げに繰り返し言及し始めたのは2月下旬。ゆうちょの預け入れ限度額の大幅な引き上げを目指していた時期だ。

 「暗黙の政府保証が付いたゆうちょの限度額が引き上げられれば、民間から預金が流出する」との反発が強まる中で、特に影響を受けやすい信用金庫や信用組合に配慮したためだった。だが、信金・信組から「手厚い保護が必要なのかと預金者から思われ、逆に信用力が傷つく」と反対され、思惑は外れた。

 議論は収まったかに見えたが、ゆうちょ限度額の2千万円への引き上げ方針が3月末に決まった直後から、亀井氏は預金保護の上限引き上げに再び言及。原口一博総務相が1日、「預金保険料の引き下げ」に踏み込むと、亀井氏は2日の記者会見で「金融庁として柔軟に検討する」と連携してみせた。

 預金保護の範囲を広げるなら、将来の払い戻しリスクに備え、むしろ保険料の引き上げを検討してもいいはず。2大臣の「ペイオフ見直し」を生命保険に例えると、「保険料を値下げする一方、保障内容は充実する」ということに等しい。この時期の相次ぐ発言は、ゆうちょの預け入れ限度額の大幅引き上げの「見返り」を民間金融機関に示し、民業圧迫の批判をかわそうとの狙いがあると見られる。

 保険料率の引き下げは、金融機関にとって一見、良い話のように映る。メガバンクが毎年支払う保険料は数百億円に達し、この負担が軽くなれば、増益要因になるからだ。

 もともと、料率引き下げは郵政問題に関係なく今年度中にも議論になると見られていた。

 1990年代の金融危機以降、金融機関の破綻(はたん)が相次いだことから、保険料を積み立てた預金保険機構の基金は赤字続きだった。機構は96年度、緊急措置として保険料を前年の7倍に引き上げてから据え置き、年間5千億〜6千億円の保険料収入で赤字を穴埋めしてきた。

 だが、最近は大型破綻が減り、赤字が解消するめども立ってきた。10年度の保険料率は3月、現行の0.084%を続けることを決めたばかりなので、仮に変更するなら来年度からになる。

 ところが、金融機関側は、政府の誘い水に冷ややかだ。「預金保護の上限を引き上げるなら、保険料も引き上げないと理屈に合わない。それなのに『保険料を引き下げてもいい』と言う。その場しのぎだ」と、地方銀行の幹部は話す。

 保険料の引き下げで積み立てが不足したまま、将来、金融危機が再発し「穴」を開けてしまえば、それを埋めるのは民間金融機関。ある大手行幹部も「中長期的に見れば料率引き下げの利点はない」と言い切る。郵政問題の「決着後」も、政府と金融機関との平行線の議論が続きそうだ。

    ◇

 〈ペイオフ〉金融機関が破綻した場合に、一定額の預金を守るため、預金保険機構に積み立てられた基金から預金者に払い戻す制度。金融機関が毎年、預金量に応じて保険料を機構に支払う。現在の保険料率は0.084%。保護の範囲は、1金融機関ごとに1人あたり元本1千万円までとその利息。それを超える部分は、破綻金融機関の財産状況に応じて支払われる。利息が付かない決済用預金は全額保護される。

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