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食品業界、ブラジル開拓 日本企業、富裕層に照準

2010年4月4日1時59分

写真:日本食材店の「エンポリウン・オリエンタル」で、サーモンの手巻きずしとキュウリの細巻きを買ったネウザ・メルカダンテさん=サンパウロ、平山写す日本食材店の「エンポリウン・オリエンタル」で、サーモンの手巻きずしとキュウリの細巻きを買ったネウザ・メルカダンテさん=サンパウロ、平山写す

図:  拡大  

 日本の食品業界が、ブラジルに熱い視線を向けている。輸出に関心を寄せる企業が増え、貿易額も増す傾向にある。現地での店頭価格は高くなりがちだが、ブラジルは近年、富裕層や中間層が購買力を高めている。そこをターゲットにしようというわけだ。

 サンパウロの中心街パウリスタ大通り沿いに、日本食材の店がある。「エンポリウン・オリエンタル」。白人の女性ネウザ・メルカダンテさん(73)が、サーモンの手巻きずしとキュウリの細巻きを手に取った。週に1度は弁当や日本食材を買いに来る。「おせんべいも孫の好物なの」

 客の8割が非日系のブラジル人だ。売り上げの2割は、焼き魚弁当やいなりずしなど日本食の弁当で1日150食ほどが売れる。エドゥアルド・ゴトー店長(38)は、「『コアラのマーチ』など日本のお菓子は大人気だが、なかなか仕入れられない」と話す。

 高級スーパーマーケット「ポン・ジ・アスカル」の一角に、日本食品のアンテナショップが2月19日から3月10日まで設けられた。日本酒や粉末の日本茶、ドレッシング、みそ、クッキーの詰め合わせなどが並んだ。

 もともとサンパウロは、約100万人の日系人社会があり、1千近く日本食レストランがあるといわれ、日本食が浸透している土地柄ではある。だが、最近のターゲットは、日系人よりむしろ、購買力が高まった一般のブラジル人だ。

 白人のブラジル人医師夫婦は「日本食は大好き」と8品を無造作にかごに入れた。日本円換算でドレッシング1瓶が約2千円、1人分のアイスクリーム約900円と、値段は日本の3倍近いが値札を見もしない。

 ブラジルへの輸出を望む企業が参加したミッションが2月下旬、サンパウロを訪れ、企業と商談をしたり、消費者の市場調査をしたりした。日本貿易振興機構(ジェトロ)の企画で、参加したのは青森県のみそ製造、宮崎県の食品製造など19社。西山酒造場(兵庫県)の西山周三社長(37)は「国内市場は少子化で衰退する一方。新市場を開拓したい」と期待を寄せた。

試食会で「ゆずごまみそドリンク」を試したカメラマンのマルセロ・リゾさん(35)は「ぜひ家で友人を招いて飲ませたい」。

    ◇

■輸出急増、調味料が人気

 ブラジル開発商工省によると、2009年の日本からの食料品輸入額は約407万ドルで、約214万ドルだった06年からほぼ倍増した。ソース、みそなどの調味料が最も多く、日本酒などが続く。

 ジェトロへのブラジルに関する日本企業からの問い合わせは07年は649件だったが、09年は2145件に急増した。工場の進出や製品の輸出に関する具体案など、質問内容は様々だ。

 日本企業が一般のブラジル人向けに生活雑貨や食品、アパレルを売ろうとするのは最近のことだ。とくに08年の金融危機以降、こうした動きが目立っているという。ジェトロの須藤徳之理事は「日本の地方経済で活況の場所はなく、中小企業は市場を外に求めている。ブラジルのような新興国で急速に伸びる所得層は、新しい物を買いたがる」と説明する。

 民間の経済研究所「ジェトゥリオ・バルガス財団」の調査によると、ブラジルの主要6都市で「中間層」(月収約5万9千円以上で約25万5千円未満)は、02年12月に43.22%だったのが、09年12月には53.58%と約10ポイント増加。逆に月収約4万3千円未満の「貧困層」はこの間、29.54%から17.42%と約12ポイント減った。

 中小企業の場合、ブラジルに工場を建設する資金力がなければ、製品を輸出することになるが、関税や輸送費などで、店頭価格は日本の3倍になることもある。そのため、富裕層向けの販売戦略をとる場合が比較的多い。一方、現地生産が可能な大手企業は、購買力の高まった中間層を狙う傾向があるといい、すみ分けがある。

 日本企業のブラジル進出の歴史は古い。ブラジルが軍事独裁政権だった1960年代から70年代までは、製鉄やパルプ、造船やアルミなど、政府主導の大型プロジェクトに参加する企業が多かった。

 だが、85年に軍事政権が終わった後の超インフレや政情不安などで、日本企業の多くは撤退。転機は03年ごろで、ブラジルが、ロシア、中国、インドとともに「BRICs」(新興国)として注目を集めるようになった。

 金融危機でも、ブラジルは先進国ほどは深刻な影響を受けなかった。03年に政府が始めた低所得者への資金贈与策も効果を上げた。最低賃金を上げ、低所得者層も含めて安心して買い物が出来る環境が整ったとされる。(サンパウロ=平山亜理)

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