現在位置:
  1. asahi.com
  2. ニュース
  3. ビジネス・経済
  4. コラム
  5. 経済を読む
  6. 記事

ギリシャ危機、株安連鎖 「安全」国債にシフト

2010年4月29日1時32分

図:  拡大  

写真:27日、年金受給年齢の引き上げなどをIMFが求めていることに抗議する労働者ら=アテネ、南島信也撮影27日、年金受給年齢の引き上げなどをIMFが求めていることに抗議する労働者ら=アテネ、南島信也撮影

 ギリシャやポルトガルなど欧州諸国の財政不安が世界の金融市場に飛び火した。27日以降、欧米や日本の株式市場は軒並み株安になり、損失を被る危険が株式より低い国債などを買う動きが広がった。ギリシャなどへの支援がうまくいかなければ、さらに不安が広がり、経済を活発にするのに必要なお金の流れを滞らせる恐れがある。

 きっかけは、米格付け会社のスタンダード・アンド・プアーズ(S&P)が27日、ギリシャとポルトガルの国債の格付けを引き下げたことだ。「財政危機がギリシャにとどまらず、欧州諸国に広がる」との不安が市場に広がった。財政基盤が強くないスペインやアイルランド、イタリアの国債も売られ、「欧州危機」との見方も出るほどだった。

 ギリシャなどの国債を買って資金運用している欧州の金融機関が損失を出す可能性を心配する投資家もいる。損失が膨らめば、企業や家計にお金を流す金融システムが、欧州で不安定になるからだ。

 このため、株式市場は27日に欧米市場で急落した。株価は英仏で前日に比べて3%前後、ニューヨークも2%弱下げた。28日の東京市場はその影響をまともに受け、日経平均株価は一時330円下げ、前日比287円87銭(2.57%)安い1万0924円79銭で取引を終えた。

 2010年3月期決算の発表が始まった国内企業は業績が好調な見通しで、本来は株価が上がってもおかしくない。だが、市場には欧州の財政不安が世界経済に悪影響を与えるとの懸念が広がり、株式市場から資金が流れ出た。

 その行き先は比較的安全な国の安全な資産とみられる。

 東京外国為替市場の円相場は対ユーロで大幅に上がった。午後5時時点では前日の同時点より2円20銭円高ユーロ安の1ユーロ=122円99銭〜123円03銭。対ドルも円高になり、同54銭円高ドル安の1ドル=93円25〜28銭だった。

 債券価格も上昇し、住宅ローン金利などに影響を与える長期金利が大幅に下落した。代表的な指標の国債の利回りは一時、前日比0.025%幅低い1.280%まで低下(債券価格は上昇)し、約4カ月ぶりの低水準となった。

 国債は国の借金で、日本も借金は多い。だが、「日本の国債は購入者に返せなくなるような可能性は極めて低い」(債券アナリスト)と見られているからだ。米国やドイツなど経済規模の大きい国の国債も27日は買われ、両国の長期金利が軒並み低下した。

 三菱UFJ証券の藤戸則弘・投資情報部長は「株や資源が利益確定のために売られ、より安全な資産である国債や金にマネーが流れる『質への逃避』が起きている」と、この日の動きを説明する。

 ギリシャへの融資発動を決める欧州連合(EU)の首脳会議が5月10日にも開かれる方向で、「それまでは、国債などの安全資産にお金が向かう動きが続く」(為替アナリスト)との見方も出ている。(座小田英史、寺西和男、千葉卓朗)

■独支援・資金繰りなお不安

 【ベルリン=金井和之、ロンドン=有田哲文】ギリシャの長期格付けが一部格付け会社から、貸したお金が戻ってこない可能性がある「投機的」にまで下げられた。これは、ギリシャ再建に向けて不安要素がぬぐえないからだ。ギリシャが求める金融支援に対し、最大の支援国となるドイツは支援を決められるのか。来年以降の資金繰りは大丈夫か。最後は借金の棒引きを迫られるのではないか――。市場と欧州各国の神経戦はしばらく続きそうだ。

 不安要素の一番手は、支援に向けたドイツの手続きだ。総額300億ユーロ(3兆7千億円)のユーロ圏各国の支援のうち、ドイツの負担分は84億ユーロ(1兆円)とされる。実施にはドイツ国会での関連法案の通過が必要だ。ショイブレ財務相は「ギリシャを見捨てない」として5月上旬にも法案を通過させるとするが、先行きは不透明だ。

 障害は、ギリシャ支援に好意的ではない国民感情だ。5月上旬には上院勢力を左右する州議会選挙を控える。安易な支援策はメルケル政権にとって命取りになりかねない。メルケル首相は、今後3年間にわたる継続的な財政再建策の必要性をギリシャ側に26日に求めるなど、有権者感情の緩和を狙っている。

 不安要因はまだある。ユーロ圏各国の300億ユーロに、国際通貨基金(IMF)の支援100億〜150億ユーロを加えても、ギリシャの今後1年の資金繰りを助けるにすぎない。「来年、再来年の支援の道筋が見えないと、市場は落ち着かないのではないか」(金融関係者)との見方がある。

 借金の棒引きや債務の繰り延べなど、民間銀行も巻き込んだ支援が必要になるのではないかとの観測も強まる。ドイツ最大野党の社会民主党のシュタインマイヤー院内総務は、ギリシャ向けに貸し出す銀行も金融支援に参加すべきだと主張している。

 欧州連合(EU)は、経済危機に陥ったギリシャに対するユーロ圏各国とIMFによる緊急融資の発動を、近くユーロ圏(16カ国)の首脳会議を開いて決定する。ロイター通信によると、5月10日開催で最終調整している。会議の際の首脳発言も含め、市場を落ち着かせる内容が打ち出せるかどうかがカギになりそうだ。

■追加緊縮策巡りIMFと綱引き

 【アテネ=南島信也】震源地のギリシャでは、国際通貨基金(IMF)と欧州連合(EU)欧州委員会が求める年金受給年齢の引き上げなどの追加緊縮策をめぐり、政府との間で激しい綱引きが続いている。

 年金受給年齢は今年になって平均62歳になったが、政府案では2012年から段階的に65歳まで引き上げられる。しかし、IMFなどは67歳にするよう求めている。また労働者への年3回計2カ月分のボーナス支給が労働法によって定められているが、IMFはその廃止も要求している。

 こうした厳しい措置に抗議するため労働者ら数千人が27日、「IMFは帰れ」といった幕を掲げてアテネ市中心部をデモ行進した。

PR情報
検索フォーム


朝日新聞購読のご案内
新聞購読のご案内 事業・サービス紹介