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政治から独立、苦心 日米の中央銀トップが講演

2010年5月27日2時5分

写真:言葉を交わすバーナンキFRB議長(左)と日銀の白川総裁=26日午前、東京都中央区、橋本弦撮影言葉を交わすバーナンキFRB議長(左)と日銀の白川総裁=26日午前、東京都中央区、橋本弦撮影

 日本銀行が26日開いた会議で、米連邦準備制度理事会(FRB)のバーナンキ議長と日銀の白川方明(まさあき)総裁が講演した。それぞれの政府や議会が中央銀行の金融政策に「介入」する動きが出ているのに対し、政治との距離を保ち、「中央銀行の独立性」を守る姿勢で歩調を合わせた。

■FRB議長「政策 自由に」 日銀総裁「物価偏重危険」

 「政治のコントロールから離れ、自由に金融政策を決めるべきだという幅広い合意ができてきた」。バーナンキ議長は講演でこう切り出した。

 講演では、中央銀行の独立性が保たれないと、不況の時には政治家から景気を必要以上に刺激するように圧力がかかる恐れがあると説明。圧力に屈すれば、「好不況の波が大きくなり、経済を不安定にしたり、高インフレを招いたりする」と訴えた。

 「独立性」を強調したのには、わけがある。

 FRBは2008年秋の金融危機以降、超低金利政策を進めるなど、景気刺激策を打つ米政府と協調してきた。だが、危機の再発を防ぐための金融規制改革の議論では、米議会などから、危機を招いた責任の一端がFRBにあるとの批判が出ている。

 下院では昨年12月にFRBの金融政策について監査する法案が可決された。上院で先週可決した法案でこの条項は盛り込まれず、FRBの独立性は保たれる見通しだが、議会の一部には不満も残る。

 「お家事情の表れ」。日銀では、議長の講演での発言をこう受け止める見方がある。実は、その日銀も政府や議会の「圧力」を受けている事情は同じだ。白川総裁もこの日の講演で政府や議会を牽制(けんせい)する発言を繰り返した。

 「物価の安定が経済の安定を自動的に保証するものではない」「(中央銀行が)短期的な物価の動きだけにクギ付けになると、かえって経済の変動を大きくする」

 物価の上昇率が低いからといって、金融緩和から引き締めへのギアチェンジをためらっていると、バブルの発生と崩壊を招く――。発言の背景にはそんな考え方がある。

 これは、民主党の一部などが求める「インフレ目標政策」への牽制と言える。菅直人副総理兼財務相も4月の国会で「魅力的な政策だなと感じてきたし、今でもその気持ちがある」と述べた。今は政府として導入を求める動きは出ていないが、日銀は政府や民主党内で導入論が本格化するのを警戒している。

 そもそもインフレ目標政策はバーナンキ氏が熱心に導入を説いていた。FRB理事だった03年には、デフレに苦しむ日本に導入を提言さえした。だが、自身がFRB議長に就いた後、FRBは07年にインフレ目標政策の導入を見送り、この議論に区切りをつけた。導入論の要だったバーナンキ氏率いるFRBが見送ったことも踏まえ、白川総裁は導入論を批判している。

 一方、白川総裁は講演で「革新性が十分に認識されていないのは残念」と述べ、金融危機対応の努力が理解されないことにいら立ちも見せた。90年代以降、日銀は銀行保有株の買い入れなど異例の政策を連発してきた。今年4月末には成長分野への投資を促す貸出制度も打ち出したが、「日銀の本来の仕事ではない」といった批判も多い。(吉原宏樹、寺西和男、北京=尾形聡彦)

     ◇

 〈インフレ目標政策〉 政府や中央銀行が物価上昇率の数値目標を定めた上で、中央銀行が目標を達成するために金融政策をすると宣言する政策。1990年代以降、英国などで物価上昇を抑えるために導入されたが、日米にはない。日本では物価が下がり続けるデフレを止める政策として、導入論がある。目標を定めることで、人々の間で「今後は物価が上がりそうだ」という予想が高まり、実際に物価が引き上げられる効果を見込む。日銀は効果に否定的だが、政策委員が「中長期的に物価が安定している」とみなす物価上昇率を「1%程度」と公表している。

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