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2012年10月30日
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はたらく気持ち

「何とかなる」がハワイ流

文・田中和彦

 ハワイで、日本人旅行者向け情報誌の編集長を務めるRさん(43)は、ホノルルで暮らして12年になる。12歳の娘と10歳の息子の母親で、移住当初は子育てで働くこともままならず、予想外の貧乏も経験したが、いつでも「人生、何とかなる」と、苦境を乗り切ってきた。

 学生時代に、友だちとツアーで初めてハワイを訪れたとき、直感的に「将来、ここに住む」と決めたという。一年中気候がよく、いるだけで幸せな気分になる。こんな天国みたいなところなら子供ものびのび育つだろうな、と。

 名古屋でフリーのライターをしていた29歳のとき、アメリカから一時帰省中の今のご主人と意気投合し、結婚。ロサンゼルスで古着の商売をしていた彼がグリーンカード(永住権)を持っていたので「アメリカに戻るのなら、絶対にハワイ!」と説得した。

 縁もゆかりもないハワイで夫婦が始めたのは、なんと「タコ焼き屋」。日本から自動タコ焼き器まで輸入して、それなりの設備投資をしたが、常夏の地でわざわざタコ焼きを食べる観光客は少なく、現地の人にも不思議な食べ物にしか見えなかったようで2か月で閉店。ハワイで人気のTシャツなどをネット販売して、なんとか生計を立てたが、乳飲み子を抱え、食べていくのにギリギリの状態が続いた。

 2人目の子供が生まれたタイミングで、夫はリムジンの観光ドライバーの仕事を始めて、会社を設立。Rさんも子供を保育所に預け、化粧品販売の仕事に就いた。5年前、勤務先に情報誌の取材があり、Rさんが対応。日本でのライター経験を話すと、編集長も兼ねていた社長から「うちで働かない?」と誘われ、転職することになった。

 最初はパート社員だったが、半年経つとリーダーを任され、去年の春には、社長から突然「今日からキミが編集長」と指名された。スタッフは、考え方も価値観も、目指すものもいろいろで、組織をまとめる難しさを痛感。編集長としても自信が持てず、なかなか独自のカラーを出せなかった。

 「らしくないなぁ」と反省し、読者が楽しくなると同時に「自分も楽しめる企画じゃなくちゃ」と開き直ると、すべてがうまく回り始めた。季刊から隔月刊にして、表紙のトーンも一変。読者からのウケもよく、今は絶好調だ。

 「ハワイにいると、どんなときでも『何とかなる』というポジティブさが身に付くのかも」。子供たちが弾くウクレレの調べを聞きながらのんびりする時間が、Rさんの至福のひとときだそうだ。

プロフィール

田中 和彦(たなか・かずひこ)

 人材コンサルタント、映画プロデューサー。1958年、大分県生まれ。リクルート社の「週刊ビーイング」「就職ジャーナル」などの編集長を務めた後、映画業界に転身。キネマ旬報社代表取締役などを経て独立。02〜07年、beでコラム「複職(ふくしょく)時代」を連載。近著『断らない人は、なぜか仕事がうまくいく』(徳間書店)など著書多数。

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