現在位置:
  1. asahi.com
  2. ニュース
  3. ビジネス・経済
  4. コラム
  5. 賢者に聞く グローバル時代の経営術
  6. 記事
2011年11月11日
このエントリーをはてなブックマークに追加
mixiチェック

賢者に聞く グローバル時代の経営術

グローバル化する経済 日本企業が抱える二つの課題

聞き手・冨田秀継(ZDNet Japan編集長)

写真:一橋大学イノベーション研究センター・センター長の米倉誠一郎教授(撮影:冨田秀継)一橋大学イノベーション研究センター・センター長の米倉誠一郎教授(撮影:冨田秀継)

 「経済活動がグローバル化していくなかで、日本企業は二つの課題を抱えている」――。そう指摘するのは一橋大学イノベーション研究センター・センター長の米倉誠一郎教授だ。

 経営史と技術革新(イノベーション)に詳しい米倉氏に、グローバル化にあたって日本企業が抱える課題について聞いた。

●コモディティ化する「ものづくり」

 グローバル化にあたって日本企業が抱えている課題は二つある。一つは欧米先進国とともに築いてきた経済圏におけるグローバル化であり、もう一つは新興国市場への進出だ。 日本は欧米先進国の経済圏で、これまで「ものづくり」の領域で存在感を示してきた。例えば、トヨタやソニーは、製品の品質の優位性によってグローバル化を進めてきたといえる。しかし、いまや「ものづくり」はコモディティ化し、これまで日本が優位としていた領域に韓国や中国の製品がどんどん進出してきている。今後、日本がこの成熟した経済圏の中でさらにグローバル化を進めていくためには、「モノ」を売るというグローバリゼーションから、さらに上の領域にステップアップしなければならない。それは、モノとモノを組み合わせたサービスやソリューション、社会インフラ、基準とルール作りだ。日本はこの領域での対応が少し遅れている。

 一方、新興国市場は、従来のグローバリゼーションとは全くルールが違う。インドや中国などでは、政府が次にどのような方針を出すのかが分からない。よって、企業のトップがリスクをとって意思決定する「グローバルマネジメント」を発揮する必要がある。トップが責任を負うことで、長期的な施策で大きな成果をめざすことを強くコミットメントしなければ、ミドル層では決断することができないからだ。そのため、インドや中国の企業は、マーケットの重要性を認識するとまずビジネスを始めようとする。

 一方、バブル崩壊以降、日本企業の多くは非常に慎重な姿勢を取り、すべてのことを計画した上で、ボトムアップで決断するという経営方法を取ってきた。

 そのため、迅速な決断が求められる新興国のルールに対応しきれず苦戦しているのが現状だ。

●めざすべきはトータルソリューション

 1980年代、アメリカのテレビ時代を切り開いたテレビメーカーのゼニス・エレクトロニクス社が他国の企業に買収された。テレビ大国アメリカが、ついにテレビを1台も作らなくなったということで、当時、これこそ「アメリカの凋落」だといわれたものだった。

 グローバル化の背景にあるものは、「あらゆるものはコモディティ化する」という事実だ。したがって、日本のテレビがいくら優れているといっても、遅かれ早かれアメリカと同様にその種のコモディティ化に追いつかれるのは必然だといえる。

 しかし、アメリカのテレビメーカーは衰退したが、今やCNNやディスカバリー・チャンネル、MTVを観られない国はない。つまり、彼らはコモディティ化したハードウェアから「コンテンツ」というソフトウェア領域にシフトしていったに過ぎなかった。アメリカは、見事に「コンテンツ」の領域にシフトしたのだ。では、日本はどうやってコモディティ化に対応すべきだろうか。私は、日本は強みを「組み合わせる」しかないと思っている。つまり、トータルソリューションだ。

 日本には、日立や東芝、三菱など、原発からエアコンまで幅広い領域で製品を製造しているメーカーがある。また、ソニーは音楽や映画、テレビを持っている。これらのメーカーの技術力が、実はトータルソリューションとしての威力を発揮すると考えている。

●エネルギーマネジメントの世界

 先日、ついに世界の人口は70億人に達した。世界中の人々が今後、先進国と同様の生活を享受しようとすれば、地球は破滅する。とはいえ、後発国に対して環境保護のためにエネルギーを使うなというのは、あまりにも無責任だしエゴイスティックだ。

 こうした背景から、コモディティ化以上に注目されているのが「エナジー・マネジメント」の世界だ。私は日本の次の主戦場はこの領域になると考えている。特に原発事故を体験した日本は、世界の「エナジー・マネジメント」を牽引するリーダーとして、最も近いところにいるのではないだろうか。

 昨今のテクノロジー・トレンドのひとつに「Internet of Things」(IOT:モノ同士のインターネット)と呼ばれる概念がある。IOTは、テレビや家電製品同士をネットでつなぐことで、機器同士が互いに連携しあうというコンセプトだ。これを応用して家庭内の機器同士を連携させ、消費電力をトータルに制御し、従来のエネルギー使用量を低減させることもできる。この領域では、まさにトータルソリューションが必要となるのだ。

 日本が得意とするプロセス制御技術を発揮して、これまでの半分以下のエネルギーで、これまで以上の暮らしができるテクノロジーを開発できれば、「脱原発」および「脱炭素社会」を実現できるだろう。「エナジー・マネジメント」の実現は、日本が世界にその存在を示す絶好のチャンスであり、産業構造の大転換期にもなるのではないだろうか。(つづく)

   ◇

次回掲載は11月25日の予定です。

プロフィール

冨田秀継(とみた・ひでつぐ)

1977年、北海道生まれ。IT専門誌、週刊誌、IT系オンラインメディアなどに携わり、現在は朝日インタラクティブ株式会社が運営するIT専門ニュースサイト「ZDNet Japan(ジーディーネット・ジャパン)」編集長を務める。いま話題の「クラウド・コンピューティング」の導入事例(http://japan.zdnet.com/cloud/case−study/)や、「ビッグ・データ」の解説(http://japan.zdnet.com/cio/sp_bigdata2011/)など、企業のIT活用を支援する製品・サービス情報を提供している。

PR情報
検索フォーム


朝日新聞購読のご案内
新聞購読のご案内 事業・サービス紹介