リモート時代に考えたい!先駆者に聞く、あなただけのスキルアップ戦略

転職

ライターまゆ

新型コロナウイルス禍により多くの企業で導入されたリモートワーク。オフィス以外の場所で仕事をすることも当たり前になってきました。

一方、「同僚とのコミュニケーションがとりにくい」「オンオフの切り替え方がわからない」といった課題を抱えたままの方も多いのではないでしょうか。時間と場所の制約が少なくなった分、これからの働き方についてより柔軟に考えられるようになったことで、キャリアの選択肢を広げるスキルアップに注目が集まっています。

今回お話を聞いたのはオンラインアウトソーシングサービスを運営している「ニット」の代表取締役社長 秋沢崇夫さん。なんと同社は2015年のサービス開始時からリモート勤務を前提としています。2021年には世界中から参加できるオンラインキャリアスクールのサービスも始めました。

リモートワークの「先駆者」とも言える秋沢さんに、リモートワークの課題を克服するコツやスキルアップについての考え方などを語っていただきました。

この記事の取材先

秋沢社長プロフィール欄画像

秋沢崇夫さん

青山学院大学卒業後、2004年ガイアックス入社。営業分野などに従事し、24歳にして営業部長を担う。2013年退職。約1年間海外を旅したのち、2015年にオンラインアウトソーシングサービス「HELP YOU」を立ち上げる。2017年ニット創業。同社の代表取締役社長を務める。

 

メンバーは400人 世界33カ国から業務支援

創業時からリモートワーク勤務を前提としていると聞きましたが、なぜでしょうか。

秋沢崇夫さん起業のためにIT関連企業のガイアックスを退職したのですが、当時まだ具体的な事業のアイデアはありませんでした。焦らずに事業のテーマを探そうと思い、2カ月ほどアメリカを横断することにしたんです。旅をしながら日本企業からフリーで依頼されたコンサルティングやマーケティング分野の仕事をこなしていたのですが、こんなに遠い土地にいても働けるんだと驚きでしたね。まだ2013年、初めて本格的なリモートワークを体験した瞬間でした。

そこで自分が今まで色々なことを我慢していたのだと気づきました。20代のとき必死に働いていたのも楽しかったけれど、有休をとったら周りに迷惑をかけるとかつい考えて、行動に制約をかけていたんですよね。でも好きな場所で好きな時間に仕事をすると、満足いく環境に身を置けているという納得感から仕事にも打ち込みやすくなり、生産性が上がります。この働き方は理想的だと思い、起業する会社にも取り入れることにしました。

当時、育児やパートナーの転勤に帯同するといった事情で、リモートで働きたいけれど、どうしていいかわからないという方が多いことにも問題意識を持っていました。こうした方々と人手を必要としている企業をつなげたらいいのではと考えました。

インタビューに答える秋沢崇夫社長
インタビューに答えるニット代表取締役社長の秋沢崇夫さん
=写真はいずれも植原みさと撮影

そうして「HELP YOU(ヘルプユー)」が誕生したのですね。具体的にはどのようなサービスなのでしょうか。

秋沢さん:サービスに登録しているおよそ400人のフリーランスの方々が、企業から依頼のあった業務を担当します。内容は経理作業や資料作成、採用の一次対応などです。人を雇うほどでもないけれど、いまの人員ではこなしきれない部分を担当するようなイメージですね。社員数30人以下のスタートアップからの依頼が多いのですが、リモートワークが定着したことにより大企業の顧客も増えています。オンラインでも十分にサポートしてもらえるんだという認識が広まったためです。

メンバーの方々は20代後半から40代前半の女性が多いです。お住まいの地域は日本全国はもちろん、アフリカやイスラエルなど世界33カ国に広がっています。子育てやパートナーの海外転勤のために仕事から離れたという方も多く、自分の役割ってなんだろう、知り合いのいない土地でどうしたらいいのかと喪失感を抱いている例もあります。そうした方々がサービスを通していきいきと働いている様子を見るのはうれしいですね。

リモート交流の壁 工夫で乗り越える

多くの企業でリモート勤務が導入されましたが、コミュニケーションに課題を感じる人も多いようです。

秋沢さん:すぐ近くで働いていれば、わからないことがあったとき手が空いているタイミングを見て話しかけられますが、チャット経由だと遠慮してしまいますよね。そうならないために私たちも工夫しています。例えば、バーチャルオフィスのシステムを導入しました。オフィスを模したイラスト上に社員ごとのアイコンが見えるようになっています。他のメンバーが今何をしているのか一目見ただけで分かるんです。1年目の社員でまだ業務に慣れていない場合、先輩と音声をつないだままにして、声を出せば聞こえる状態にしておくといった方法をとることもあります。

株式会社ニットで利用しているバーチャルオフィスの画像
ニットで利用しているバーチャルオフィスの画像

集中や休憩のコツなど、ニットの皆さんが取り入れているリモートワークハックはありますか。

広報担当 小澤美佳さん:私は集中したいとき、電話もチャットも、全ての通知を切ります。そうすると何にも邪魔されずに取り組めますから。ずっと机に向かっていると疲れてしまうので散歩する人も多いですね。会社がweb会議システムやバーチャル空間を通じた雑談のための時間を設けてくれるので、そこで他の社員と何でもない話をして癒されることもあります。

秋沢さん:オフィスは働く場所という認識が一般的だと思うのですが、僕たちは家で集中して、誰かと話したいときにオフィスに来るという人が多いんです。ちなみに僕は出社とリモート、半々くらいですね。1~2週間オフィスに来ないこともありますよ。それから、定住場所をもたない「アドレスホッパー」も2人います。全国各地を転々としながら仕事をしてくれています。本業がリモートだと副業の自由度もあがります。全社員のうち6~7割は副業しています。ニットで働くかたわら、狩猟などで地域活性に貢献している社員もいますよ。

スキルとキャリア 「内省」で見つける自分の軸

2021年9月にはオンラインキャリアスクール「HELP YOU Academy(ヘルプユーアカデミー)」を開始されました。

秋沢さん:主力事業の「ヘルプユー」では随時メンバーを募集していて、応募も多いのですが、ひとつ課題がありました。それは採用の合否基準である試験を突破する人が少ないことです。せっかく在宅で働きたいという意志はあるのに、納期を守るとかホウレンソウ(報告・連絡・相談)といったビジネスの基本を知らないがために機会を得られないのはもったいないと思い、スキル向上をサポートするサービスを始めることにしたんです。

HELP YOU Academyについて語る秋沢さん
HELP YOU Academy」について語る秋沢さん

秋沢さん:講座ではビジネスマナーの基礎から、資料作成やリサーチといった実務に至るまで包括的に学べます。大事にしているのは離脱させないことです。「議事録を作成してください」「このサービスを始めたいので競合を調べてください」といったお題に回答していただき、講師が手厚くフィードバックします。受講者同士で交流できる機会も設けています。

昨今スキルアップには注目が集まっていますが、どういったスキルを身につけるべきか悩む人も多いようです。

秋沢さん:まず、いまの会社で役立ちそうだからとか、この資格があれば転職や昇進に有利だからといった理由に縛られなくていいと思います。自分が得意で、かつ好きなことを探したほうが長続きしますから。得意と好きが重なるその領域内で、これからの時代に求められそうなものを選べばいいんです。好きなことって、自分自身ではなかなか見つけにくいんですけどね。

そこでおすすめなのは毎朝日記を書くことです。夜に書くとその日の振り返りになってしまいますが、朝だと一日の始まりということもあり前向きな気持ちで書けます。1週間ごとに読み返すと、共通する話題やワードが出てくるんです。自分はこの領域に興味があるのかと客観視できますよ。ちなみに僕は、健康のことがたくさん書いてありました(笑)。ビジネスのことばかり考えているつもりだったから意外でしたね。

スキルアップについて語る秋沢さん
スキルアップについて語る秋沢さん

副業の推進など、今後もビジネスパーソンの働き方は大きく変わっていきそうです。

秋沢さん:今後、一社のみに勤めるという働き方はますます減っていくと思います。本業の業務は週3回程度にして給与もその分だけ受け取り、他の時間は別の企業の業務を担うような事例が増えるでしょう。複数のスキルを組み合わせてキャリアを形成していくやり方が主流になるのではないでしょうか。

変化はやはり若い世代から起こってくると思います。僕はいま40歳ですが、新入社員だったころは毎朝満員電車で通勤し、夜も遅くまで働いていました。今とは違いますよね。でも、当時すでにメールでのやり取りが当たり前になっていて、それは上の世代の方からすると驚きだったと思うんです。これまでもこれからも、社会は常に変化しています。今の中学生が社会人になるときに何がスタンダードになっているか考えてみることは今後のキャリアを形成するうえでヒントになると思います。

家事や育児に追われて自分と向き合えていない人が多いと感じています。SNSやニュースサイトを通じた外部情報のインプットに時間をかけるだけでは、本当に好きなことや自身の価値観には気づけません。先ほどの例のように日記を書いてもいいし、「内省」の時間を大切にするべきです。何が好きで、これからどうしていきたいのか。しっかり考える時間を通して、時代の変化に左右されない軸を見つけてほしいですね

個人が自分の持つスキル次第でキャリアの選択肢を広げられる時代。逆に言えば、これというスキルがないと仕事の幅が限定されるということでもあります。世間から評価されるような資格を取得したほうがいいのだろうなと思いつつ、重い腰を上げられずにいました。

秋沢さんの、「得意」と「好き」を優先させるべきという言葉にはっとさせられました。得意なことも好きなことも人それぞれ。流行りの資格に飛びついてその他大勢の一人になるより、楽しく長く学び続けて自らのスキルを磨いていくほうが、時代の変化に惑わされない私だけのキャリアをつくっていけるのかもしれません。

ライター まゆ

大学卒業後、大手経済新聞社に入社。記者として企業やギグワーカー、農業従事者、官公庁などを取材し経験を積んだのち、フリーライターになる。TOEIC(Listening&Reading)900点台。
Twitterアカウント:mayu(writer)さん (@Liy14943906Liy)
記事一覧をみる

初回公開日:2022/05/24

記事をシェア

https://www.asahi.com/choice/jobchange/column-knit/

  • URLをコピーURLをコピー

関連記事

関連記事