福田直之

福田直之ふくだ なおゆき

朝日新聞記者=産業、テック、中国
関心ジャンル:金融・財政外交・安全保障国際ビジネスIT・テック

最新コメント一覧

  • ロシア車、ソ連時代に逆戻り? 新型なのにエアバッグもABSもない

    福田直之
    福田直之
    朝日新聞記者=産業、テック、中国
    2022年6月23日18時8分 投稿

    【視点】 対ロ制裁を受け、国際資本によるロシア撤退や同国内での事業停止が相次いでいます。国内で材料供給がなんとかなる飲食チェーンとは異なり、輸入部品に依存する自動車産業の再開は難しいのではないかと見られていました。ですが、この記事によりプーチン政権が「新車の認可条件を緩和し、エアバッグやABSを搭載せず、排ガス対策が施されていない車の販売に道」という奥の手を使って、外国技術を使った代替生産できない部品を使わない車を作れるようにしたと知って驚きました。  それでも、わざわざ性能が退化した新車を買いたがる人も多くはいないでしょうから、いずれは行き詰まるでしょう。在庫の山を築くことがわかっていても、雇用と威信を守る政治的な意義があるのかも知れません。記事が指摘するように、ロシア経済は「ソ連時代への逆行」が進んでいるように見えます。

  • サイト訪問が号砲、千分の1秒の広告入札 個人情報がお金になるまで

    福田直之
    福田直之
    朝日新聞記者=産業、テック、中国
    2022年6月15日14時19分 投稿

    【視点】 自分を最もよく知っているのは、自分ではなく、家族でもなく、日本政府でもなく、それはアメリカの1ウェブサービスのグーグルなのだと思います。知っているのは、自分の情報だけではありません。サービスを展開する国・地域の利用者情報はみな、「ネット上の広告総代理店」であるグーグルが把握しているのです。  以前、グーグル幹部を取材した際、こうした個人情報の取り扱いに対する懸念を聞きました。その幹部は、グーグルの理念の一つに"Don't be evil.(邪悪になるな)"という言葉があると教えてくれました。大量の個人情報を取り扱う企業に、そうした理念があることは重要です。ただ、それは国家の枠を超えて企業活動を縛る法律でもなく、一つの考え方に過ぎないのも事実です。  この記事では、個人情報の塊であるネット広告の市場を少数の企業が占める状態にメスが入りつつあるといいます。懸念は個人のレベルにとどまりません。数多くの国・地域の国民の個人情報が、特定の国家に本社を置く1企業に握られることは、それぞれの国家安全保障の観点から果たして適切なのでしょうか。  極端な例ですが、全てにおいて国家安全保障が優先する中国では、米国をはじめとする外国の多くのITサービスに対する接続が遮断されています。記事にあるように、足元の米国や日本だけでなく、欧州でも米IT大手に対する調査が進んでいます。  IT企業は利用者に利便性という尊い価値を提供しているのは事実です。ただ、透明性の確保と自制的な運用が担保されない限り、自らが各国・地域の規制を通じてインターネットに見えない国境を浮かびあがらせる恐れもあるのではないでしょうか。

  • 日銀黒田総裁「家計の値上げ許容度、高まっている」 物価高のなか

    福田直之
    福田直之
    朝日新聞記者=産業、テック、中国
    2022年6月7日11時50分 投稿

    【視点】 東京大学の渡辺努教授による5カ国の家計へのアンケートの結果(https://centralbank.e.u-tokyo.ac.jp/wp-content/uploads/2022/05/household_survey_May_2022.pdf)を見てみると、家計が値上げについて高めたのは「耐性」としています。10%値段が上がった場合の行動について、いつもの店で買い続けるが量や頻度を減らすという人も同時に増えており、日本銀行の黒田東彦総裁の言う「許容度」とは異なるニュアンスに思えてなりません。  一部の店が値上げをするだけなら、他の店に移るという選択が成り立ちます。ただ、現在のように多くの店が一斉に値上げをすると、逃げ場がありません。他の店に移るという選択を選ぶ人が減ったというのは、他の店に移っても仕方ないというあきらめによるものではないでしょうか。ならば「許容している」というより、「耐えている」といったほうが適切でしょう。アンケートでは1年後の物価がかなり上がると答えた割合が急増しています。  昨今の急激な円安は原材料価格の高騰に拍車をかけ、さらなる輸入物価の上昇につながるため、不安を感じている国民は多いと思います。円安は我が国の基幹産業である自動車産業など輸出産業に有利にはたらきますが、その恩恵で賃金が上昇する家計は一部に限られています。アンケートでは「自らの賃金の向こう1年間の見通しについて、欧米では上昇の予想が多いのに対し、日本の家計は『賃金は変わらない』との回答が過半であり、顕著な差がある」と指摘しています。賃金が上がらないなかで物価が上がり、家計が圧迫されると考えている人が多いわけです。  日本銀行の大規模緩和は円安を狙ったものではないとしても、政策の結果として円売りにつながっている状況は明白です。輸入物価の上昇によるコストプッシュ型インフレは、日銀が目指してきた経済の好循環で2%のインフレが実現する姿とは全く異なります。黒田総裁はコストプッシュ型インフレと日銀の政策に対する国民の見方を踏まえて、残された任期の政策運営にあたって欲しいと思います。

  • 経済安保法が成立 国の企業活動への関与を強化、透明な運用に課題

    福田直之
    福田直之
    朝日新聞記者=産業、テック、中国
    2022年5月11日14時57分 投稿

    【視点】 経済安全保障推進法が成立しました。米中対立や新型コロナウイルスの流行、ロシアのウクライナ侵攻などで供給網が混乱し、先端技術の流出に懸念が集まるなかで、非常に注目される立法となりました。  経済的依存をテコに、相手国に政治的な圧力をかけるような手法が世界で横行しています。最近でも欧州のロシアへの天然ガス依存が問題となりました。中国は自国への依存を強めることを狙っています。また、先端技術を巡る国際的争いも活発になっています。  経済安保の強化は推進法の成立で終わりではありません。先端技術の保護を狙う「セキュリティークリアランス」などさらなる法整備を慎重に議論し、十分な態勢を取る必要があります。  ただ、経済安保を推進してゆく上で重要なのは、規制と市場、自由、民主主義とのバランスです。  経済安保は政策支援や規制を通じて国家経済を守るための保険と考えるとわかりやすいと思います。保険にお金をかればかけるほど安心感は得られますが、保険料が生活を圧迫しては元も子もありません。  規制は国家や企業をリスクから守る役割があります。ただ、強めれば強めるほど、企業のコストが高まり、自由な経済活動が制限されることになります。経済が活力を失えば、国家の安定が損なわれます。また、財源が限られるなか、無限に企業を支援できるわけでもありあません。規制の強弱や支援の対象は国際情勢を念頭に不断の見直しをし、必要なものに限るべきでしょう。  経済安保を強く意識して経済に強い規制をかけてきたのが中国です。経済活動と国家の安全保障を結びつけ、穴をふさぐような立法を近年くり返してきました。ただ、たとえば2020年秋から始まったIT大手の海外上場規制などにからむ、経済安保を念頭に置いた一連の圧迫は、イノベーションが勃興していた中国の成長力を傷つけています。もとより、政府批判を許さないネット企業への規制は、自由な言論を損ねてきました。  中国は極端な例ではありますが、経済安保の推進は常に現実を踏まえたバランス感覚が重要です。推進法の立法過程では政省令による規制が多い点も批判がなされましたし、経済界からは企業活動を縛らないように要望も出ました。法律の運用には慎重さが求められます。

  • 生きた高齢者を「遺体」として引き渡し? 動画拡散で批判 上海

    福田直之
    福田直之
    朝日新聞記者=産業、テック、中国
    2022年5月6日16時16分 投稿

    【視点】 中国語に「一刀切(yidaoqie)」という言葉があります。ずさんで詰めが甘く、画一的な対応をすることです。完全に同じではないですが、日本語の「十把一絡げ」が近いかも知れません。一刀切は時として大きな弊害をもたらすので、中国でもよく批判を浴びています。  環境対策をきちんとしている工場まで大気汚染対策の名の下に操業停止にしてしまうなど、中国にいた際、一刀切の問題を日系企業からよく聞いていました。  この記事の例でも、医師はこの高齢者にいいかげんな死亡判断をしたのでしょう。葬儀場の係員が気づいて良かったです。当たり前ですが、判断を求められる対象は皆死んでいるとは限らないわけですから、個人の状況に基づいた慎重な検査が求められます。

  • ツイッター買収も「楽しんでる」? マスク氏が変えたいSNSの未来

    福田直之
    福田直之
    朝日新聞記者=産業、テック、中国
    2022年4月27日19時2分 投稿

    【視点】 Twitterが国境を越えた言論空間であり続けるには、業績が安定した企業に生まれ変わることも大切です。イーロン・マスク氏の手腕に期待する一方で、その処方箋には劇薬が含まれているような気がしてなりません。  「あなたの嫌いな人があなたのいやなことを言えるかどうかは、表現の自由が機能しているかを示すいい指標になる」  マスク氏の言う通りです。ただ、いくら表現の自由が大切だとしても、ヘイトスピーチや偽情報への対策は今後も続けるべきでしょう。表現の自由は民主主義の基本であり、その民主主義を揺るがすヘイトスピーチや偽情報の規制は、表現の自由と対立するものではありません。  Twitterを含むSNS各社は、ヘイトスピーチや偽情報への対策を強めてきました。マスク氏は「もし判断が難しい場合は、発言をそのままにしたい。我々は投稿の削除やアカウントの永久凍結に対しては、とても慎重でありたい」と言います。ですが、企業が投稿内容に対する責任をとらなければ、各国政府が法律に基づいて厳しい対応をすることになるでしょう。  最悪の場合、接続を断ち切る国も出てくるかも知れません。そこまで行かなくても、企業ブランドは毀損されるでしょうし、広告収入にも影響するでしょう。課金制にしたとしても、利用者に見限られてしまえば立ちゆきません。  Twitterは大切です。だからこそ杞憂で終わることを願っています。

  • 「中国船に海まで盗まれる」 立ち上がった漁師、でも魚を買うのは…

    福田直之
    福田直之
    朝日新聞記者=産業、テック、中国
    2022年4月25日16時49分 投稿

    【視点】 自国に対する相手の経済的な依存をテコに、相手に政治的な要求を認めさせるのが「エコノミック・ステイトクラフト(economic statecraft)」と呼ばれる手法です。テコになるのは金融的な依存もあれば、貿易、原材料の調達や生産などサプライチェーンでの依存も考えられます。  この記事でも、南シナ海について、ハーグの常設仲裁裁判所が中国の主張を全面的に退けたにもかかわらず、インドネシア政府が強く出られないのは、貿易での中国への依存があるからと伝えています。  冷戦後のグローバル化を通じて世界は中国への依存を強めてきました。ただ、債務のわなの問題や米中対立などを経て、中国への過度な依存にはリスクがあることに気づいた各国は、警戒を強めている状況です。一方、ロシアによるウクライナ侵攻では、欧州を中心とした資源大国ロシアへの依存が問題になりました。  新型コロナウイルスによる物流の混乱も相まって、世界に広がるサプライチェーンは大きく揺らいでいます。企業経営者からは「グローバル化が転換期を迎えた」というため息もよく聞くようになりました。  経済的にグローバル化が進んだ原動力の一つに、賃金が安く質が高い労働力や安価な資源を求め続けた企業活動があります。こうした動きが完全に止まることは考えられません。ただ、政治リスクが前面に出る時代となり、企業も特定の国への過度な依存を控えたり、代替の調達先を開拓したりする動きは強まってゆくでしょう。  サプライチェーンの見直しで企業が安さばかりを追求できなくなれば、消費者は値上げを受け入れざるを得ないでしょう。すでに資源や食糧価格の上昇を背景に、商品の価格は上がり始めています。世界経済が迎えつつある転換期は、我々の生活とも無縁ではありません。

  • 「国恥地図」に秘められた帝国の記憶 世界秩序揺さぶる中国の歴史観

    福田直之
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    朝日新聞記者=産業、テック、中国
    2022年4月21日11時29分 投稿

    【視点】 中国では1911年の辛亥革命によって中華民国が誕生し、西洋風の国民国家が成立しました。ただ、それから百十余年、中華人民共和国が成立して七十余年の今でも、国家、国民、国土といった要素について、我々と一部の中国人との間で認識にずれがあると感じることがあります。  北京に駐在していた数年前、国際問題を議論した学者が「日本は朝鮮半島に関与してよいので、台湾から手を引くべきだ」と主張してきました。この学者の個人的意見とはいえ、まるで19世紀の遺物のような発想を耳にして面食らったものです。  この記事にある「国恥地図」でかつての国境とされる青い線は、沖縄を取り込んでいるといいます。中国は現に沖縄県石垣市の尖閣諸島の領有権を主張し、我が国の領海に公船を頻繁に浸入させているだけにとどまりません。2013年には中国共産党機関紙の人民日報に琉球(沖縄)の帰属が未解決と主張する論文が出て、沖縄奪還論が一部で高まったこともあります。  この記事の中でウィリアム・キャラハン氏は「東アジアに君臨した帝国時代の残像は『今も中国の政府関係者や学者、一般市民の領土意識の中に息づいている』」としています。重要なのは外交・安全保障問題にせよ、経済問題にせよ、中国独特の論理を認識し、中国のペースにとりこまれることがないよう積極的に対応することでしょう。  我々が「常識」と思い込んでいることが必ずしも通じないことは、ロシアのウクライナ侵攻を見て痛感した人も多いと思います。

  • ルノー、モスクワ工場の生産を無期限停止 操業継続の姿勢に批判

    福田直之
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    朝日新聞記者=産業、テック、中国
    2022年3月24日13時0分 投稿

    【視点】 企業は営利以前に、社会的責任を果たすことが重要であるという点を改めて印象づけた出来事です。  ルノーはロシアの工場の稼働について部品供給難を理由に停止しましたが、その後再開していました。その際、ロシアでの生産をルノーと同様に停止していた日本の製造業からは、ルノーの判断に驚きの声が出ていました。結果はやはりこの記事の通り、世論の厳しい批判を受けて、再びの稼働停止に追い込まれました。  ただ、一方でプーチン政権は撤退した外資の接収方針を表明しています。現地従業員の処遇を含めて、ロシア国内で稼働を停止した工場や営業拠点を今後どう運営してゆくかは、我が国を含む外国の企業にとっては悩ましい点です。

  • 米中高官が7時間会談 中国がロシア支援なら米国は「対抗措置」示唆

    福田直之
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    朝日新聞記者=産業、テック、中国
    2022年3月15日11時54分 投稿

    【視点】 ウクライナ情勢にからみ、潜在的に存在するのが中国ビジネスに関するリスクです。中国はロシアのウクライナ侵攻にあいまいな姿勢をとってきました。ただ、ここに来てロシアが中国に対し軍事装備品や経済的支援を求めた、との米政府当局者の話を複数の米メディアが報じています。  中ロともにその内容を否定してはいますが、仮に中国がロシアを支援すれば、アメリカによる対抗措置も考えられます。14日に米国務省のプライス報道官は対中制裁の準備について問われ、「いかなる支援も結果が伴うという立場は明らかだ」と回答しています。  具体的な支援を伴わないとしても、中国がロシア側につく立場を鮮明にするなどの変化があれば、アメリカが制裁をしなくても、中国ビジネスに対する国際世論の風当たりが厳しくなることが予想されます。  中国がロシア側につき、アメリカが制裁などで反撃した場合、世界経済への影響は深刻なものになるでしょう。日本にも中国に依存している企業が多く、経済的には切っても切り離せない関係ですが、アメリカとの関係も強いので板挟みになる企業も出るでしょう。一方で、中国には外国の制裁に協力した者に報復できる反外国制裁法もあります。アメリカはそうした破局が現実化するのを避けるべく、中国に思いとどまるように警告している状況です。  ただ、論理的に考えれば中国にとってたとえロシアが緊密な友好国でも、自国経済を支える対外経済関係、国際サプライチェーンまで犠牲にできないと思います。国外に影響力を行使する武器であると同時に、国内を安定させるための生命線でもあるからです。そうしたリスクを覚悟の上でロシア支援に転じようとしているのかどうか、中国の選択に注目したいと思います。

  • 1750万都市・中国深圳、コロナ感染86人で封鎖 日系企業も多数

    福田直之
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    朝日新聞記者=産業、テック、中国
    2022年3月14日18時29分 投稿

    【視点】 秋に共産党大会を控える中国は今年の全国人民代表大会の政府活動報告で、市場予想より高めとなる年5.5%前後の成長率目標を掲げました。ただ、湖北省武漢市での流行が続いていた2020年2月以来の規模での新型コロナウイルスの感染拡大(3122人、12日)が、全人代閉幕の直後に起こるとは誰も予想しなかったでしょう。市場関係者からは、目標の達成に早くも疑問の声が出ています。  中国は感染力が強いオミクロン株に対しても、従来通りの封鎖・検査・隔離を軸にしたゼロコロナ政策を堅持しています。記事にあるように、広東省深圳市も事実上のロックダウンとなりました。その影響で、フォックスコンが米アップルのiPhone生産を停止したとも報じられています。吉林省長春市も事実上のロックダウンとなり、トヨタ自動車の工場が止まりました。各地の厳しい対策は消費の低迷や企業収益への打撃、ひいては雇用問題にもつながり、サプライチェーンを通じて世界経済への影響も心配されます。  米コンサルティング会社ユーラシア・グループは年初、恒例の「世界の10大リスク」の1位に中国のゼロコロナ政策が失敗し、世界経済が混乱する事態を予測しました。オミクロン株の流行に対しても、従来の政策に固執して都市封鎖などを続け、サプライチェーンが混乱し、インフレに拍車がかかり、世界経済が不安定化するとの見立てでした。ロシアのウクライナ侵攻もあって世界のサプライチェーンはすでに十分に混乱しており、これは避けたいシナリオです。  武漢での感染拡大以降、中国はこれまで何度かの感染拡大を経験してきましたが、いずれもゼロコロナ政策で乗り越えてきました。ただ、とりわけ感染力が強いオミクロンの波をこれまで通りのやり方で抑え込めるのかどうかはわかりません。もし、抑え込めないのだとしたら、ユーラシア・グループの予測のように大変な混乱が起きるのか。それとも、ウイズコロナへと軟着陸させることができるのか。中国のコロナ対策の動向に注目したいと思います。

  • 再びデンソー襲ったサイバー攻撃 「偶然と思えない」日本企業の被害

    福田直之
    福田直之
    朝日新聞記者=産業、テック、中国
    2022年3月14日10時27分 投稿

    【視点】 記事は「日本を狙い撃ち?」との見方を伝えています。昨年、取材で閲覧した英国の国際戦略研究所(IISS)のリポート"Cyber Capabilities and National Power: A Net Assessment"(https://www.iiss.org/blogs/research-paper/2021/06/cyber-capabilities-national-power)では、日本について「サイバー空間での防衛は特に強力ではなく、多くの企業は対策を強化するためのコスト負担を望まない」としており、北朝鮮やイランなどと同じ「ティア3」(いくつかのカテゴリーで強み、あるいは潜在的な強みを持つが、他の点で重大な弱さがある)に位置づけていたのを思い出しました。サイバーセキュリティーに対する防衛意識が低い国の企業は、意識が高い国の企業に比べて攻撃するのは簡単です。  攻撃は単に情報が流出するだけにとどまりません。工場やパイプライン、レジなどのインフラの稼働が人質に取られることもあり、甚大な影響が出る事例も相次いできました。対策は急務ですが、そう簡単ではありません。大企業が自社のグループに対するセキュリティーを万全にしていたとしても、サプライチェーンが複雑になるなかで、思いもよらない取引先や外国拠点が攻撃を受けることもあるでしょう。日本企業の99%は中小企業でありノウハウや対策費用が限られますし、対策にあたる技術者の数も相当限られます。サイバー攻撃の問題は個々の企業のみならず、日本経済全体にとっても大きな課題であると認識する必要があると思います。

  • 「森のたまご」のイセ食品が会社更生手続き 外食需要減、飼料は高騰

    福田直之
    福田直之
    朝日新聞記者=産業、テック、中国
    2022年3月12日0時6分 投稿

    【視点】 コロナ禍による外食控えで卵の需要が減り、飼料価格の高騰が追い打ちをかけたとのことです。確かに配合飼料の価格は上がっています。原油価格の高騰でバイオエタノールの需要が増えたことから、その原料となるトウモロコシの価格が高騰しています。そして、大豆かすの価格も高水準です。さらに、円安が輸入飼料の値上げに追い打ちをかけています。エネルギー供給が懸念されるウクライナ情勢を見ていても、飼料価格をとりまく状況は今後、さらに厳しくなるのではないかと思います。  イセ商品ブランドの卵には思い出があります。中国では生卵を食べる習慣が日本ほど広まっておらず、スーパーでも卵は常温で売られていることが多いのです。ただ、日本式のイセブランドは中国でも売られており、他のいくつかのブランドと共に冷蔵販売されていて生食が可能でした。卵かけご飯が好きな自分は、特派員として駐在している頃、随分とお世話になったものです。  事業環境は厳しいですが、毎日の食卓にとって大切な卵を生産する会社ですので、スポンサーが見つかり再生が果たせることを願っています。

  • プーチン氏、撤退する企業に警告 「活動拠点は希望者に譲渡」

    福田直之
    福田直之
    朝日新聞記者=産業、テック、中国
    2022年3月11日20時4分 投稿

    【視点】 ロシアのウクライナ侵攻は、これまでも経済安全保障やビジネスと人権の観点から企業や国が進めてきた供給網の見直しに拍車をかけることになりそうです。  ビジネスの中断が必要になった際、機動的に決断できるように特定の国や地域に依存しすぎないことが大切でしょう。経済的な依存関係は、政治・軍事的な目的を達成するための人質に使われる恐れがあります。  この記事にあるように、ロシアは撤退すれば店舗や工場を接収すると進出企業を脅しています。ただ、依存と言えるレベルまでロシアビジネスに深入りしていれば、こうした脅しが企業の判断を難しくすることもありえます。現に世界はエネルギーやレアメタルではロシアに依存しており、ロシアはこの依存関係を経済制裁の効果を弱める効果的な武器として使えるわけです。  どうしても特定の地域との取引に依存せざるをえないなど対策に限界もあると思います。それでも、有事にあたっては供給網にどういったリスクがあり、それ発生した場合の対応策を考えておくだけでも、この不確実性の高い時代に企業や一国経済の持続性を高めることにつながるのではないでしょうか。

  • 日野自動車、エンジンの排ガス・燃費性能偽る 搭載車は計11万台超

    福田直之
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    朝日新聞記者=産業、テック、中国
    2022年3月8日19時40分 投稿

    【解説】 日野自動車による燃費不正は悪質さが目立ちます。  認証試験の燃費測定でエンジン性能を偽り、国と購入者をだましています。斉藤鉄夫国土交通大臣は8日の記者会見で「自動車ユーザーの信頼を損ない、かつ、自動車認証制度の根幹を揺るがす行為であり、極めて遺憾」と批判し、「厳正に対処していきたい」としました。  さらに不正のあった試験は2016年9~12月に行われましたが、これに先立つ同年4月には三菱自動車で燃費不正が発生して大きな問題に発展していたわけで、同業他社の不祥事から何も学んでいませんでした。さらに、不正から5年以上が経過し、問題のあるエンジンを載せたトラックはすでに11万台も出荷されています。  日野は現時点で不正が発覚したエンジン3機種とその搭載車両の出荷を止めました。すでに出荷されたトラックにはリコールが必要なものもあります。さらに出荷停止対象のトラックは年間販売の35%を占め、経営に与える影響は甚大になります。  燃費不正は発覚した場合に業績やブランドイメージに与える打撃が大きいため、常識的なリスク感覚では手を染めようとは思わないはずです。それでも不正に追い込まれたのは、数値目標の達成やスケジュール厳守のプレッシャーだったと日野は説明しており、企業風土に問題があった可能性をも示唆しています。

  • ソニーとホンダがEVで提携 狙うは化学反応、強み発揮できるか

    福田直之
    福田直之
    朝日新聞記者=産業、テック、中国
    2022年3月7日20時39分 投稿

    【視点】 ソニーグループと組んで電気自動車(EV)を製造するホンダが得るものは少なくありません。ホンダは2040年に新車をEVと燃料電池車(FCV)に限る計画ですが、現行のEVは「ホンダe」のみ。24年には軽EVを投入する方向ですが、ソニーGとの協業はEVの製造経験の蓄積に役立つでしょう。何よりソニーGの車を作ることで、エンターテインメント、ソフトウェアというソニーG特有の強みに触れることができ、ホンダの車作りのスケールが広がります。  車作りの経験がないソニーGが得るのは何と言っても車に対する信頼性でしょう。大手のホンダが作ることで、基本の走る曲がる止まるに対する顧客の不安は解消されるでしょう。ウィンウィンの提携と呼べるのではないでしょうか。  個社の事情を離れて、日本の自動車産業にとってみても、大きな意義を持つ提携になると思います。完成車工場を持たないファブレスのソニーGから受託したのが、国内大手のホンダだったからです。今後広がる可能性のある自動車の設計と製造の分離という水平分業の大きなテストケースを、外国メーカーに奪われないで済みました。  ファブレスによる車作りは、ソニーGにとどまらず、うわさされている米アップルなどこれからどんどん増えてくることが予想されます。ブランド力を持つ会社が企画した車の製造をどれだけ受託できるかは新たな国際競争の焦点になるでしょう。ホンダは順調に実績を積めば、次の受注につながると思います。  今や日本を代表できる製造業は自動車だけになってしまいました。ただ、三十数年前、半導体産業は世界シェアの半分を握るほどの強さを誇っていました。日本の優位性を突き崩した理由の一つは、国際間で進んだ水平分業でした。  今、世界で最先端の半導体製造の実力を持っているのは台湾の台湾積体電路製造(TSMC)です。この会社は、アメリカのファブレス半導体メーカーからロジック半導体の製造を受託して技術を蓄え、急速な成長を果たしてきた会社です。半導体製造を社内の垂直統合で手がけてきた日本の総合電機メーカーは、こうした国際分業に対応できませんでした。  ただ、受託製造の動きが日本に全くなかったわけではありません。東芝は他社から受託したことがありましたが、他社の下請けを潔しとしない気風があり、事業はうまくいかなかったそうです。日本の絶頂期、当時半導体部門を率いたOBは今のTSMCの隆盛を見て、受託製造を生かせなかった点を悔いていました。  半導体の経験は、日本を代表する産業が国際的なビジネス環境の変化にどう立ち向かうかを考える際に、大いに参考になると思います。自動車産業は半導体産業と同じ過ちをくり返してはいけません。

  • 中国、北京五輪前に侵攻回避をロシアに要請か 米紙報道、中国は否定

    福田直之
    福田直之
    朝日新聞記者=産業、テック、中国
    2022年3月3日10時43分 投稿

    【視点】 ロシアのウクライナ侵攻を中国が事前に知っていたかどうかに関心が集まっています。  知っていたとすると、国際的な非難を浴びるだけでなく、ウクライナにいる自国民の国外待避を適時に進めなかったと国内でも厳しく批判されるでしょう。中国では国外居留民の保護は当局自らが積極的にPRしていることもあり、大変重視されています。  知らなかったとすると、蜜月に見えた中露関係は大したことがなかったということになります。また、アメリカはロシアがウクライナに侵攻するとの情報を得て、ロシアが侵攻を思い止まるよう中国に説得を頼んでいたと報じられています。それでも事前に侵攻を把握していなかったとすれば、中国はロシアの意図を見抜けなかったことになります。  この記事によると、ニューヨーク・タイムズ紙は、中国側が事前に、ロシアの侵攻計画や意向をいくらか把握していた可能性があるとしています。中国が知っていたかどうかはまだわかりません。ただ、いずれにせよ、中国は対応を誤ったように見えます。

  • 中国の学者有志が戦争反対の声明発表→まもなく削除され閲覧不能に

    福田直之
    福田直之
    朝日新聞記者=産業、テック、中国
    2022年2月27日14時50分 投稿

    【視点】 「健全な社会では、声は一つだけになるべきではない」。2019年12月、原因不明の肺炎の存在をSNSに投稿し、警察から処分を受けた湖北省武漢市の李文亮医師が、中国メディアにそう語っていたことを思い出しました。その肺炎の原因、つまり新型コロナウイルスに感染した李氏はちょうど2年前の20年2月に亡くなりました。当局は李氏ら医療現場から上がった警鐘を封じ込めた結果、初期対応に失敗しました。  この記事にある学者有志による戦争反対の声明には「家族が離ればなれになり、極限まで飢え、領土を割譲され賠償金を支払った苦難と恥辱は、私たちの歴史認識を形づくり、ウクライナの人々の苦しみを身にしみて感じさせる」とあります。長らく戦火に踏みにじられた歴史を持つ中国では、自然とそう思う人が多いのではないでしょうか。ウクライナに攻め入ったロシアでさえ国内で反戦デモが起きているわけで、削除と閲覧不能は異常だと思います。  中国はNATOの東方拡大を批判しつつ、ロシアによるウクライナ攻撃は話し合いで解決するよう求めるという、非常に微妙な対応を示しています。国際社会からの批判が大きく、情勢の推移を注視しているところがあるようで、今後の対応が注目されます。選挙がない中国で権力が常に気にしているのは民意の動向です。一つの方向にあらかじめ世論を誘導してしまえばよいと考えているのでしょうが、将来的に国家が取り得る選択肢がそれによってしばられます。そうした観点からも、多様な意見を抱えておくことが重要なのではないでしょうか。

  • 欧米、SWIFT排除でロシアの「活動能力奪う」 ロシア中銀も制限

    福田直之
    福田直之
    朝日新聞記者=産業、テック、中国
    2022年2月27日11時44分 投稿

    【視点】 欧米が決めたロシアのSWIFTからの排除と中央銀行に対する制裁の組み合わせは、プーチン政権に大きな打撃を与えることを見込んだものです。SWIFT排除から排除されるロシアは対外貿易に制限がかかり、外貨が足りなくなるのでルーブルが下落。ただ、ロシアの中央銀行は制裁で自由に外貨を売ってルーブルを買い支えられない。市民が企業も資産を守ろうと外貨を買うので、輪をかけてルーブルは下落。インフレが止まらず、ロシア国民は政権への不満を募らせる。最も厳しい状況を想定すれば、そんな波及経路でしょうか。  ただ、コメント(https://twitter.com/asahi_comment/status/1497701589234208774)したように、ドイツなど欧州諸国のロシア産天然ガスへの依存や世界的なインフレ傾向に拍車をかけることに対する懸念もあるのか、SWIFT排除の対象になるのはロシアのすべての銀行ではないとのことです。ロシアは天然ガスと石油の輸出で稼いでいる国なので、制裁の効果はどこまで厳しくSWIFTからロシアの銀行を排除できるか次第ですが、それは副作用との見合いになりそうです。  ロシアのSWIFT排除によって、欧米と緊張関係にある国は今後、中国が作ったCIPSを利用していくかも知れません。ただ、CIPSも間接参加行の送金指示はSWIFTの機能を一部利用しており、SWIFTと隔絶して存在しているわけではありません。対外決済を暗号通貨で済ませるのも現実的ではありません。米欧が握る金融覇権は、経済的な武器としての力を当面は維持し続けるでしょう。

  • SWIFTからロシア排除「ためらわない」 仏財務相が追加制裁容認

    福田直之
    福田直之
    朝日新聞記者=産業、テック、中国
    2022年2月27日0時18分 投稿

    【視点】 SWIFTからのロシア排除はプーチン政権に打撃を与える非常に強力な武器となりますが、ロシアの対外決済を難しくするため、貿易関係にある国も傷を負うことになります。そのため、ロシアとの経済的な結びつきがとりわけ強い欧州では賛成のイギリス、フランスと反対のドイツなどで判断が分かれていると報じられています。焦点の一つはエネルギーに関する懸念です。ここでは天然ガスについて見てみます。  BP Statistical Review of World Energy <https://www.bp.com/en/global/corporate/energy-economics/statistical-review-of-world-energy.html> によると、2020年にドイツはパイプライン経由で1020億㎥の天然ガスを輸入しました。そのうち55.2%にあたる563億㎥はロシアからの輸入になります。ロシアへの依存は欧州の主要国で見ても非常に高く、欧州平均の37.5%を大きく上回る水準です。  一方、フランスの輸入は258億㎥で、うちロシア産は26億㎥に留まります。別途ロシアから50億㎥の液化天然ガスを輸入していますが、それを合計しても76億㎥です。IEAのWorld Energy Balances Highlights (2021 edition) <https://www.iea.org/data-and-statistics/data-product/world-energy-balances-highlights> によると、フランスは電源の67%割を原子力発電でまかなっており、もとより天然ガスの輸入は少くて済むことも相まって、ロシア産の天然ガスが入手できなくなってもエネルギーにおける影響はドイツに比べて少ないでしょう。  フランスとドイツの態度の差を見ると、安全保障上懸念がある国家や地域に、重要な物資で高度に依存しないことが、有事の選択肢を留保する上でも非常に重要だということがわかります。  仮にロシアがSWIFTから排除されれば、天然ガスや石油の輸出に頼るロシア経済は厳しい状況に置かれます。一方、副作用が出るのはロシアからエネルギーを大量に輸入している欧州だけに留まりません。世界のエネルギー価格が高騰し、供給制約によるインフレ傾向に拍車がかかるでしょう。アメリカが先般発表したロシア制裁はそうした懸念から、為替決済の制限からエネルギー支払いを除外するものでした。  エネルギー支払いを含めて対象とせざるをえないロシアのSWIFTからの排除について、実行されるかどうかは不透明です。ただ、G7を中心に引き続き検討がなされているという事実は、ロシアによるウクライナ侵略がもはや許しがたい事態に至っているからだと思います。

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