箱田哲也

箱田哲也はこだ てつや

朝日新聞論説委員=朝鮮半島担当
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最新コメント一覧

  • 韓国で徴用工問題の解決探る初協議 日韓の懸案、道のり険しく

    箱田哲也
    箱田哲也
    朝日新聞論説委員=朝鮮半島担当
    2022年7月5日9時33分 投稿

    【視点】 徴用工問題での被害者側も加えた協議が始まった。最大の懸案を前に進めるため、避けては通れない重要な難所だ。  日本と韓国の政府間ではとかく、1965年の国交正常化時に結んだ協定で、植民地支配下での被害の救済が解決したかどうかに焦点があたる。だがその問題とは別に、被害の実態に目を向け、その主張に耳を傾けるという過程は欠かせない。それは単に韓国国内だけの話ではなく、日本政府や、かつて徴用工が働いた企業も例外ではない。  協議会は韓国政府が解決案を作り出す上での重要な意見聴取の場だ。一定の意見が集約されれば、それらを踏まえた上で、韓国政府としての責任ある考えを提案するのだろう。  どちらが勝った負けたというような単純な議論ではなく、あらゆる関係者が、冷静かつ誠実な姿勢で臨まなければ、歴史問題の進展は難しい。

  • 韓国、日本からの観光客に「1年間、何度でも」のビザ 7月から

    箱田哲也
    箱田哲也
    朝日新聞論説委員=朝鮮半島担当
    2022年6月29日23時8分 投稿

    【視点】 日本政府の対応にしびれを切らした韓国政府が、とうとう「相互主義」の慣例をやぶってマルチビザを出す方針を固めた。  新型コロナ対策に端を発するとはいえ、これまでの日韓間の往来をめぐっては、日本政府のちぐはぐな対応が目立つ。  6月29日にやっと再開した羽田・金浦間の運航はもともと、韓国側ではなく日本政府が強く求めていた措置だった。これに対し、韓国政府が求めたのは観光客の「ノービザ」の復活だ。  まずは羽田・金浦路線から手始めに、ということで、6月1日の運航再開に向けた準備が始まった。だが今度は、再開を切望していた日本政府側から細かな問題点の指摘があり、いったんは6月15日に延期、それも間に合わず、29日とあいなった。  一方の韓国政府は、日本側の対応をみて、ノービザ復活にはまだ時間がかかると考え、1度発給されれば1年間有効というアイデアをひねり出した。  いずれにしても隣国を訪ねたいと願う日韓の市民の強い思いをみるに、両国の交流は政府より民間が先行しているという現実が改めて浮き彫りになる。

  • 「歴史問題、日韓は話し合いを」 求める米国、視線の先には中国も

    箱田哲也
    箱田哲也
    朝日新聞論説委員=朝鮮半島担当
    2022年6月29日22時47分 投稿

    【視点】 歴史問題でもつれにもつれる日本と韓国の政治関係を上向かせるには、双方の同盟国である米国の圧力が欠かせない――。こういった言説が、主に韓国でしばしば語られる。  その究極の例が、2015年の年末に発表された両政府による慰安婦合意だ。韓国の文在寅・前政権は、前任の朴槿恵政権の実績を否定するためにも、「米国の圧力」をことさら強調した。  だが実際に慰安婦合意を成就させた、水面下でひそかに進行した非公式交渉には、米政府の具体的な介入はほとんどなかった。当時の日韓の交渉当事者たちは、米国圧力説が話題にのぼるたび苦笑する。  ただ、慰安婦合意当時と現在は状況が大きく異なる。それは主に中国、ロシアに起因する懸案ゆえだ。それでもなお、米国が歴史問題で日韓の間をとりもつには限界がある。記事にある「日韓は歴史的問題を、自分たちで話しあう必要がある」という言葉以上でも以下でもない、ということだろう。

  • 韓国で元徴用工問題の解決探る「協議」設置へ 日韓関係の大きな懸案

    箱田哲也
    箱田哲也
    朝日新聞論説委員=朝鮮半島担当
    2022年6月20日23時47分 投稿

    【解説】 韓国の司法が日本企業に賠償を命じた徴用工判決で、韓国政府が何らかの決断をするには、原告や彼ら彼女らを支えてきた人々の意見を聞く作業は避けて通れない。韓国政府がその煩わしさから、勝手に判断すると、問題はむしろ悪化する可能性すらある。  官民による協議体の設置はかねて検討されてきており、まったく新しい動きはとは言えない。しかし、韓国の政権が日韓関係の改善を強く訴える尹錫悦大統領の政府に交代し、日本政府も期待を高める中での意味合いはおのずと変わってくる。  こういった行政府なりの問題解決に向けた「努力」は、韓国の司法の目にどう映るのかがとても重要だ。日本企業の資産の現金化となれば、重大な外交問題に発展することを当該の裁判官たちは当然知っている。  いずれにしても、まずは韓国国内での話である。日本側(とりわけ政治家)から、ああだこうだ言い始めると、それはそのまま韓国の対日強硬派のエネルギーとなりかねない。まずは協議の成り行きを静かに見守るべきだろう。

  • 新大統領府の名「決められないと決めた」韓国、5候補に梨泰院の字も

    箱田哲也
    箱田哲也
    朝日新聞論説委員=朝鮮半島担当
    2022年6月15日15時1分 投稿

    【解説】 市民の目線に合わせて、と青瓦台を出た尹錫悦政権ではあるが、最高指導者の新たな仕事場の名称だけに、そう簡単には決められないだろう。何しろ韓国における「青瓦台」という言葉の持つ意味やイメージが強すぎる。どんな名前が付けられようと、当分の間は、観光名所となってもなお、存在感を放ち続ける「青瓦台」の圧力にはかなわない気がする。  一般的に韓国の人は、ユニークで親しみやすい新語や造語を考えるのがうまい。2種類以上のアルコールを混ぜ合わせたカクテル(?)から政治を揶揄(やゆ)する言葉などなど、瞬く間に社会に広がる。その例で言うと、有力候補として残った案はいずれもインパクトに欠けるように思う。それゆえ、いったん保留となったのか。  権力の発信地を移すことの意味は大きいと思うが、一方で気になるのは尹大統領が検察関係者を次々と主要人事で抜擢(ばってき)していることだ。閣僚や大統領府の主要ポストに加え、金融監督院長まで元検事を任命した。野党勢力は「検察共和国」だと批判する。  執務室の名前もさることながら、元検事たちの政策判断からも目が離せない。

  • 2国間会談できなかったが…日本とも「真摯に対話」 韓国国防相演説

    箱田哲也
    箱田哲也
    朝日新聞論説委員=朝鮮半島担当
    2022年6月13日6時59分 投稿

    【解説】 対話局面ならいざ知らず、軍事挑発に転じた北朝鮮への安全保障上の向き合い方で、日本と韓国の間に大きな差異はない。それは、あれだけ南北融和を最優先させた文在寅・前政権でも同じことだった。  北朝鮮に対し、是々非々の相互主義を掲げる尹錫悦・新政権となったいま、同じ国際会議に集う日韓の防衛相が互いにひざを突き合わせないというのは、いかにも不自然ではある。  韓国の李鐘燮国防相が演説で語ったように、新政権が日本との関係を重視する姿勢に変化は見られない。にもかかわらず、「日韓」が不発に終わったのはやはり、日本で来月、参院選があることが大きく影響しているようだ。  海自哨戒機へのレーダー照射問題がまだくすぶることに加え、会議の直前にはまたぞろ竹島問題も起きた。レーダー問題は双方の現場レベルでは一定程度、原因の所在についてのイメージが重なっているが、それぞれ内向きには自らの正当性を主張せざるを得ない。  日韓の課題には、他の国との外交以上に互いの内政が深く絡み、そのために進展を難しくてしまうという繰り返しだ。

  • 日韓「立ち話」もできず 3カ国結束の陰で、先送りの関係改善

    箱田哲也
    箱田哲也
    朝日新聞論説委員=朝鮮半島担当
    2022年6月12日11時4分 投稿

    【解説】 記事はシンガポールで、日本と韓国の二国間の防衛相会談が不発に終わったことに焦点を当てている。直前に韓国側が、日韓がともに領有権を主張する島に調査船を出したことは冷や水を浴びせることになったとはいえ、尹錫悦・新政権の発足に伴う友好的なムードは今も続いている。  ただ、気になるのは、そんな中でも双方が相手国に対する手前勝手な期待を抱いていることだ。確かに尹政権となり、日本に対する基本的な考え方は大きく変わった。政権の今後をうらなう統一地方選も、尹政権を支える与党の圧勝に終わった。しかしだからといって、歴史問題で日本政府が望むような重い政治決断ができる環境が整った、とはとても言えない。  他方、尹政権の中からも、皮算用をもとにした発言が漏れる。それは7月の参院選で与党が勝利すれば、日本政府は韓国にもっと柔軟な姿勢をとり始めるだろうという、根拠のない淡い期待である。

  • 米韓軍がミサイル8発を発射 北朝鮮の一斉発射に対抗措置

    箱田哲也
    箱田哲也
    朝日新聞論説委員=朝鮮半島担当
    2022年6月6日18時3分 投稿

    【視点】 弾道ミサイル発射をやめようとしないどころかエスカレートさせる北朝鮮に対し、韓国の尹錫悦・新政権は負けじと対抗措置をとり続けている。北朝鮮の動きに合わせ、良い行いには相応の報いを、軍事挑発には膺懲(ようちょう)の鉄槌(てっつい)(てっ・つい)を下すという相互主義を掲げるだけに、だまってはいられないということだろう。  どんな理由であれ、北朝鮮の行動を正当化することなどできない。そもそも日本の排他的経済水域の内側であろうと外だろうと、航空機や船舶にとって危険極まりない。  一方で、韓国の新政権や日米がとっている対抗措置がどれほど有効なのかどうかはわからない。  日米韓の行動にはもちろん、北朝鮮に暴挙を繰り返させないよう抑えたいとの狙いが含まれているが、それが果たして抑止力たり得るかどうか。  過去の振る舞いから考えると北朝鮮は今後しばらく、文在寅・前政権との違いを強調し、勇ましい姿勢をとる尹錫悦・新政権を試すかのように、荒っぽい行動をとり続けるだろう。不安定化が増し続けた場合、韓国や日米はいかに対処するのか。相手の土俵に乗らないことも、北朝鮮問題をめぐって常に考えておかねばならない視点である。

  • バイデン氏の思惑に乗った尹大統領のお膳立て 2大国の間で悩む韓国

    箱田哲也
    箱田哲也
    朝日新聞論説委員=朝鮮半島担当
    2022年5月22日1時12分 投稿

    【解説】 佐橋さんもコメントされているように、韓国がバイデン氏の「思惑に乗った」というほど一方的な構図ではなかったのではないか。尹錫悦政権の外交安保統一分野の布陣をみると、その意図が非常にわかりやすいが、軍事的な安全保障に関してはむしろ、韓国側が強く要望した内容が共同声明に盛り込まれた、と言ってもよいだろう。  尹政権の布陣には、北朝鮮がやめようとしない軍事挑発を、米韓軍事同盟という圧倒的な「力」で対抗し、封じ込めてみせるという強い意思がにじむ。さしずめ、2008年から始まった李明博政権がとった対北朝鮮政策の第2ラウンドの様相を呈している。だが問題は北朝鮮に対して、それが抑止力たり得るのか、である。  事前に強い警戒感が漂った北朝鮮の軍事挑発は、米韓首脳会談まではなかった。最大の不確定要素である新型コロナウイルスのまん延が深刻で、それが影響しているのか。いずれにしても、朝鮮半島の緊張の高まりを暗示させる首脳会談となった。

  • 北朝鮮は「苦難の行軍」上回る危機か コロナ感染者?1日で10倍に

    箱田哲也
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    朝日新聞論説委員=朝鮮半島担当
    2022年5月15日1時3分 投稿

    【解説】 最高指導者、金正恩総書記自身が「建国以来の大動乱」とする新型コロナウイルスの感染拡大に、北朝鮮は韓国からの支援の申し出を受けるのか。産声をあげたばかりの韓国・尹錫悦政権と北朝鮮との今後の間合いを占う意味でも、非常に興味深い。  尹政権には李明博政権という大きな教訓がある。開発が遅れ、国際社会からの制裁も受ける北朝鮮は、同胞である南側からの食糧をはじめとする人道支援を歓迎するに違いない。李政権は安易にそう考え、支援を糸口に対話に引きだそうとしたが、北朝鮮側からはことごとく拒まれた。  そんな経緯もあり、韓国国内では、今回も支援をすんなり受け入れるとは考えにくいとの見方が一般的だ。  だがもともと北朝鮮の医療体制は脆弱(ぜいじゃく)で、ワクチンのみならず、検査システムや薬品の備蓄なども十分ではないとされる。もし結果として尹政権からの支援を受けるとなれば、「大混乱」の深刻さは尋常ならざる状態であるともいえる。  韓国としては南北間という枠組みだけにとらわれず、国際機関や米国なども絡める格好での支援とすれば、北朝鮮側の警戒感もいくぶんは、やわらげることができるかもしれない。

  • 北朝鮮、国内で新型コロナウイルス感染を確認 公式な表明は初めて

    箱田哲也
    箱田哲也
    朝日新聞論説委員=朝鮮半島担当
    2022年5月12日15時54分 投稿

    【視点】 7度目の核実験の強行も秒読み段階との観測まで出る北朝鮮は、なぜこの段階で新型コロナウイルスの感染者が出たことを初めて公式に認めたのか。今後の政治的な対応と連関しているのかを含め興味深い。  国境の封鎖など撤退した感染防止策に神経をとがらせてきた北朝鮮だが、さすがに現段階まで1人の感染者も確認されなかったとみるのは難しいだろう。どれほど正確かは不明ではあるものの、感染に関する情報は何度か報じられてきた。  すでに内部に動揺が広がっているのか、金正恩総書記は、新型ウイルスより危険な敵は「非科学的な恐怖と信念と意志の弱さだ」と述べている。  公式に確認されたからにはいずれ、ワクチンや治療薬の支援問題も出てくるだろう。北朝鮮は昨年、国連機関が提供しようとした中国製ワクチンの受け取りを拒否した。だが、韓国の情報機関は、米国によるファイザーやモデルナ製のワクチン提供には興味を示している、とみている。  北朝鮮との対話の糸口を懸命に探った文在寅・前政権下での見立てで、期待先行の感は否めないが、新型コロナ問題が影響するのかしないのか、注意深く見守る必要がありそうだ。

  • 尹政権、切り札は獄中にあり?立ちはだかる巨大野党、低支持率の船出

    箱田哲也
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    朝日新聞論説委員=朝鮮半島担当
    2022年5月11日22時39分 投稿

    【解説】 韓国政界が混乱を続ける背景には、ボス不在という政治の現状がある。ただ、ここに来て、もともと政治とは無縁の元検事、尹錫悦大統領が、韓国で久しぶりの「ボス的」存在感を示しているのは興味深い現象だ。  古くは金大中、金泳三、金鍾泌の「三金時代」と言われたように韓国は、ともすれば自民党の派閥以上の結束力をみせ、ボスをトップ(大統領)にするためには手段を選ばない、という政治家が寄り集まっていた。  「三金」時代が終わりを告げた後の盧武鉉政権は、核となる存在を見失い政界は乱れた。李明博、朴槿恵両氏は忠誠を誓う同志によるグループに支えられたものの、規模は大きいとは言えなかった。  そんな中、朴槿恵氏の弾劾・罷免で壊滅的な打撃を受けた右派が担ぎ上げた元検事総長が求心力を発揮し、集団を形作りつつある。  国会の議席数では野党に到底およばない現状だが、まずは間近に迫った統一地方選で民意がどんな判断を示すのか。野党にとっても今後を占う重要な選挙だけに、かなり熱気を帯びた戦いとなりそうだ。

  • 日韓関係、雪解けなるか 徴用工問題は資産現金化なら「最悪の事態」

    箱田哲也
    箱田哲也
    朝日新聞論説委員=朝鮮半島担当
    2022年5月11日7時36分 投稿

    【解説】 日本と韓国の政府間の歯車が確実にかみ合い始めている。徴用工、慰安婦といった植民地支配に起因する歴史の懸案が解消するだろうとの楽観は禁物だが、3月の韓国大統領選を境に、「悪化した現状を放置できない」との思いが双方にみなぎっているのは事実だ。  この流れを大きく加速させたのは、尹錫悦氏の外交安保顧問らによる政策協議代表団の4月の米国訪問だった。代表団は、バイデン米大統領の訪韓を頂点とする多くの手応えをつかんで帰国した。  他方、尹氏は当初、日本への政策協議代表団派遣は大統領就任後の早い段階で、と考えていた。背景には複合的な理由があったが、最も気になっていた一つが、日本政府側の姿勢に変化がなければ国内世論の反発を招き、逆効果を招きかねないという懸念だった。  しかし、代表団の訪米は久しぶりに日米韓3国の外交を機能させ始めた。水面下で日本政府と尹・新政権の実務当局が協議を重ね、黄金週間前の日本訪問が決定。その後は岸田首相をはじめとする要人への表敬など、文在寅政権下では実現が困難だった面会を、わずか数日でやり遂げた。  ただ、重い懸案を進展させられるかどうかは、今後のハイレベル交渉などに委ねられる。論点はおおむね出尽くしており、日韓双方の指導者が政治判断できる環境をいかに整えられるかに焦点が移るだろう。

  • 韓国新大統領が就任 対北朝鮮政策の転換を強調、「大胆な計画」も

    箱田哲也
    箱田哲也
    朝日新聞論説委員=朝鮮半島担当
    2022年5月11日0時10分 投稿

    【解説】 尹錫悦政権がいよいよ発足した。就任式での演説は、なかなかよく練られた中身で、新政権の目指すところをわかりやすく説いた。中でも北朝鮮に関する言及は、前日までの文在寅政権とはまったく異なる主張で、「政権交代したのだ」という事実を明確に印象づけた。  2008年から始まった李明博政権を支えたメンバーたちが尹政権にも多く含まれるため、当然といえば当然だが、李政権の対北政策と似た部分が目立つ。  北朝鮮に求めるのを「完全な非核化」ではなく「実質的」として、尹政権なりに一定の柔軟性をみせたつもりだろうが、そんな理屈は北朝鮮には通じないだろう。  その実質的な非核化へと転換するなら、国際社会と協力して北朝鮮経済や人民生活の質を改善していくとの考えは、李政権が掲げた「非核・開放3000」政策に似ている。北朝鮮が核放棄すれば1人当たりの国民所得を3千ドルに引き上げるという内容だったが、一顧だにされず、むしろ反発を買って南北関係は急速に悪化した。  尹政権は過去の経緯を慎重にふり返り、冷徹な分析をした上で対北政策を打ち立てる必要がある。

  • 韓国、検察の捜査権を大幅縮小へ 報復対策?法改正に野党は反発

    箱田哲也
    箱田哲也
    朝日新聞論説委員=朝鮮半島担当
    2022年5月4日22時25分 投稿

    【視点】 去りゆく文在寅政権と現・巨大与党による駆け込み法改正。検察のあり方自体には何らかの改革が必要との意見は、政治志向の違いを超えて、かなり出ているものの、政権交代数日前の露骨すぎる振る舞いは、強い政治臭を放つ。  ただ、この法改正によって「安泰だ」とみる向きは現政府・与党にもさほど多くなさそうだ。検察という名の組織が、権力捜査の牙(きば)を抜かれても、他の何らかの方法でその力を復活させる可能性がある。  捜査機関を使った政治報復という愚を繰り返すべきではないが、手荒な法改正は逆に反発を招き、負の連鎖を断ち切れないという恐れすらある。  まずは来月初めに控える統一地方選が注目される。現時点での世論調査では優位が伝えられる保守系が主要な首長選を制するなら、さらに現・与党批判の勢いは増すだろう。

  • 「軍事対決選ぶなら核動員」 金与正氏、韓国「先制攻撃」を再度牽制

    箱田哲也
    箱田哲也
    朝日新聞論説委員=朝鮮半島担当
    2022年4月5日22時28分 投稿

    【解説】 ウクライナを侵略したロシアの後を追うかのように、北朝鮮が韓国に対して核兵器の使用をちらつかせ始めた。尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権の正式な発足は1カ月あまり先だが、これからの南北間の厳しい対立を予感させるかのような牽制(けんせい)がすでに始まっていると言えるだろう。  端的に言うと、北朝鮮の韓国新政権に対するメッセージは、尹氏や周辺が大統領選でも強調しつづけた「3軸体系」に向けられている。ミサイル発射の兆候を事前に探知して先制攻撃する「キルチェーン」や韓国式のミサイル防衛といった戦力増強計画のことで、保守系の李明博(イ・ミョンバク)政権で確立された。  徐旭・国防相はこのうちの一つの軸である先制攻撃に触れ、北朝鮮を刺激した。尹氏側とは距離を置いているようだった徐氏ですら徐々に、新政権の強硬策にスタンスを移してきており、朝鮮半島の緊張が一気に高まりかねない状況だ。

  • 北朝鮮、地下核実験の準備か 核実験場で坑道を掘削、米メディア報道

    箱田哲也
    箱田哲也
    朝日新聞論説委員=朝鮮半島担当
    2022年4月2日11時24分 投稿

    【視点】 北朝鮮は4年前、核実験場のある豊渓里で大仰な廃棄式を開くとして、韓国と海外の記者団を招き、実際に爆破の様子を見せた。この時も放射性物質の流出への懸念が出たが、北朝鮮当局は安全だと主張し続けている。  過去の核実験でも放射能問題は指摘されてきた。とりわけ、6回目の過去最大といわれる核実験をした2017年9月の時は、周辺の地盤がひどく不安定化しているのではないかとの報道があった。  北朝鮮国内ではなく、外部の専門家による分析が欠かせないが、現状がどうなっているのかの詳しい情報もない。  金正恩総書記の祖父、故・金日成(キム・イルソン)主席の生誕110周年である今月15日前後の核実験の強行に警戒が高まる。北朝鮮の核保有や技術向上などに対する懸念はもちろんのことだが、放射性物質の流出をはじめとする安全性問題も極めて深刻である。

  • 韓国大統領執務室の移転 発表翌日に暗礁 文在寅政権が協力を拒否

    箱田哲也
    箱田哲也
    朝日新聞論説委員=朝鮮半島担当
    2022年3月22日22時43分 投稿

    【視点】 尹錫悦・新政権の大統領府問題は、何やら妙な雲行きになってきた。韓国の大統領選はたとえ僅差(きんさ)でも、勝敗がつけば当座、「恨みっこなし」という空気に覆われてきたが、今回はまだ神経戦が続いている感じだ。  理念や感情がぶつかり合い、対立が先鋭化しているこの国の現状を如実に表しているとも言える。  北朝鮮の軍事挑発に寛容ぶりをみせてきた文在寅政権が「安保の空白」を憂慮し、難色を示すことも少し意外だが、尹氏側の態度も柔軟性に欠ける。  新政権の発足時から移転先での執務ができないのなら、現在、政権引き継ぎ委員会が入っている場所で仕事をこなす、あるいは、大統領公邸がないなら執務室に簡易ベッドを置いて寝泊まりするなどと言い出している。  公約を守ることは大切だが、混乱のさなかにある臨時政府ではないのだから、もっと建設的な政策作りに集中できるよう、早く環境を整えるべきではないか。

  • 韓国次期大統領、執務室の移転を表明 「税金の無駄遣い」との批判も

    箱田哲也
    箱田哲也
    朝日新聞論説委員=朝鮮半島担当
    2022年3月21日14時47分 投稿

    【視点】 「青瓦台」は、良い意味でも悪い意味でも韓国にあって独特な響きを備える。その時々の大統領の性格によって、アクセスの難易度は大きく異なったが、どの政権にあっても厳粛な空気と権威に包まれてきた。  そんな特別な場所に現職の大統領はおらず、別の場所で執務にあたるとなると、単なる場所の問題以外に多くの波及効果が出てくる可能性がある。  韓国大統領が「帝王型」と呼ばれるのは、単に多くの権限を行使しうる国のトップというだけでなく、文字どおり「王」としての要素も含まれているためだ。  かつての王宮の背後に構える青瓦台を出た国のリーダーは、たとえ「権力」が不変だとしても、その「権威」は変化しうる。  多くの政界疑惑を捜査し、この国の権力構造のあり方を検察という場所から見つめてきた尹錫悦氏が、政権を発足させるにあたって青瓦台に強くこだわるのは、それなりの理由があるからかもしれない。

  • 怒りの感情、たきつけた韓国大統領選 分断社会を修復するには

    箱田哲也
    箱田哲也
    朝日新聞論説委員=朝鮮半島担当
    2022年3月18日15時7分 投稿

    【解説】 確かに今回の韓国大統領選は、以前からの地域や理念の対立に加え、世代、ジェンダーによって投票動向が変わったとされる。住宅問題や教育、就労といった韓国社会が構造的に抱える懸案を一つずつ改善していかない限り、簡単にはなくならない現象だろう。  とりわけ若い有権者の投票先が、男女で大きく分かれたとされるのは興味深い。LGBTや#MeToo運動の高まりも影響しているのだろうが、男性側が女性に対して不公平を訴えるというのは、独特な儒教的概念が崩れつつことを暗示しているかのようだ。  それにしてもソウルで勤務している時から不思議だったのは、政治の主要人物によるセクハラが左派に集中していることだ。左右双方の政界関係者に意見を聞くと、左派に根付く「甘え」の意識やご都合主義、さらには日本の学生運動の影響など、実にさまざまな指摘があった。だが真相はわからない。  いずれにしても大統領選に惜敗した左派はこれから雪辱に向けての立て直しが求められる。5年前、現役大統領の弾劾(だんがい)・罷免(ひめん)というダメージを受けた右派は、回復不能と言われながらも何とか党勢を戻した。  今回の大統領選は、過去に類例のない誹謗(ひぼう)中傷合戦の繰り返しという、何とも見苦しい戦いだった。これからは敵失ではなく、建設的な政策論争で支持を競い合うことが望まれる。

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