林尚行

林尚行はやし たかゆき

朝日新聞政治部長=政治、経済、政策
関心ジャンル:歴史政治外交・安全保障ビジネス

最新コメント一覧

  • 私たちはまだ沖縄戦を知らない 報道の空白と教科書から消えた記述と

    林尚行
    林尚行
    朝日新聞政治部長=政治、経済、政策
    2022年6月23日21時8分 投稿

    【視点】新聞記者の第一歩を広島から踏み出し、社会部を経て政治報道に携わるようになり、初めてのデスク業は西部本社で沖縄も担当した身にとって、今日は特別な日です。まさに6月23日、8月6日、8月9日、そして8月15日は、毎年心を静かに慰霊の気持ちを持って過ごしています。 木村さんほどではありませんが、これまで4回、6月23日を摩文仁の丘で過ごしました。式典の始まるずいぶん前の早朝、平和の礎に刻まれた名前を確認しながらゆっくりと歩き、親族の名を愛おしそうになでる人たちの表情に心を揺さぶられ、1945年に想いを馳せる。そんな時間を過ごしました。 沖縄では地上戦で県民の4人に1人が亡くなったとされ、戦後は本土から切り離され、いまだに米軍関連施設が圧倒的に集中する不条理にさらされ続けています。この不条理をどう解決していくのか。日本人の一人として真正面から受け止め、考えなければいけない課題だと考えています。 デスク時代、沖縄県うるま市で起きた米軍属による女性殺害事件を担当しました。その不条理さに涙しながら、後輩たちの原稿を監修しました。そのうるま市(当時は石川市)は、宮森小学校米軍機墜落事故や由美子ちゃん事件といった凄惨で許しがたい出来事の舞台ともなってきました。私はこれらは沖縄戦から続く不条理の延長にあり、戦後失われた命も含めて「沖縄戦関連死」ととらえてもいいのではないかとすら考えています。 6月23日は、そうしたすべての沖縄の犠牲者たちに想いを馳せ、「我が事」として自分のできることを考える、そんな日であってほしいと思っています。

  • 長澤まさみさんや北村匠海さんが「投票します」 参院選向け動画公開

    林尚行
    林尚行
    朝日新聞政治部長=政治、経済、政策
    2022年6月22日10時58分 投稿

    【視点】「政治の話もフランクにできる世の中になってほしい」というメッセージ、政治報道に20年余り携わっている身としても、本当にうれしいです。動画制作の発起人のみなさん、出演している著名人のみなさんに心からお礼を言いたいです。 昨年の衆院選では、Z世代のみなさんのモヤモヤしているイシューにフォーカスした記事を発信することに力を入れました。やってみてわかったことは、社会の課題解決に関心の高い若者は少なくない、ということです。気候変動、ジェンダー平等、正規・非正規雇用、アニマルライツなどなど、キーワードにすればちょっと堅そうなテーマも、やっぱり選挙で一票を投じるときにの大切な視点になりうるんだ、と改めて思いました。 この動画では、著名人のみなさんがまさに「フランク」に政治、選挙を語っています。こうした動画に心を動かされ、「政治を語り、選挙に参加しよう」と思ってくれる若い人が一人でも増えてくれることを願います。そうした人たちに、わかりやすく、親しみやすく、でもど真ん中の政治報道を、がんばってお届けしたいと考えています。

  • 全トヨタ労連の候補者に投票「なんでだろう」 組合員に聞いた投票先

    林尚行
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    朝日新聞政治部長=政治、経済、政策
    2022年6月21日17時51分 投稿

    【視点】労働組合と選挙の関わりというのは、普段の生活ではなじみの薄いテーマだと思います。一方で、政治報道の中では労組取材は重要な案件と言えます。なぜか。労組の多くを束ねるナショナルセンター「連合」が、野党勢力の最大の支持団体のひとつだからです。 とはいえ、労組取材の対象は幹部が中心。取材内容も「どの候補をどの程度支援しているのか」「労組票はどのくらい出そうか」「選挙後、政治情勢はどのようになりそうか」といった感じで、組織としての方向性などを追う取材が基本です。 この記事はちょっと趣向が違い、労組と選挙を組合員の目から見ていくテイストになっています。「労組」という組織はあっても、そこには一人一人、様々な考えの人がいます。そうした声を丁寧に取材し、単なる集票マシンというくくりではなく労働者の権利という切り口で記事にしている点で、味わい深いと思います。

  • 「吸い取っては捨てる」自民へ接近 当初予算に賛成、国民民主の選択

    林尚行
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    朝日新聞政治部長=政治、経済、政策
    2022年6月16日19時26分 投稿

    【視点】私も、与党と野党の境界線があいまいになってきていると思います。与野党がある意味ではっきりと役割分担されていた55年体制が終わり、自民党政権vs野党(新進、民主)という対決の時代から、「安倍1強」の期間を経て現在の混沌へ、という感じがします。 政権奪取を経験した野党ベテラン議員は、与党を批判し、追及し、政権交代を実現するために野党がある、と指摘します。まさに「対決型野党」像だと思います。権力は腐敗するのでガラッと入れ替える必要があるんだと主張するのその議員の言葉には、一定の説得力があるように思います。 ただ、与野党が完全に入れ替わると、政策の継続性が不安定化しかねません。その点をどう考えるか、という視点も必要かもしれません。したたかな自民党政権は政策の幅を広げ、かつて民主党が主張してきた政策を飲み込もうとしているのは、先にコメントしてくれた千正さんのご指摘の通りです。そういう意味では、自公政権が継続すれば従来の政策の方向性が変わらないだけでなく、野党が主張してきた政策まで包含してしまう、という構図になっているとも言えます。 こうした状況を考えると、今後の野党の在り方として、「野党」というひとつの塊で政権交代を目指す手法になかなか勝算は見えづらいのかもしれません。むしろ、様々な野党が連立などの形で自民党を核とする与党と離合集散を繰り返し、政策を実現していく「拡大版疑似政権交代」という形に進んでいくのかも、などと夢想してしまいました。

  • 余裕の与党、政府提出法案は100%成立 野党は足並みそろわず

    林尚行
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    朝日新聞政治部長=政治、経済、政策
    2022年6月16日14時0分 投稿

    【視点】大局を見失ってバラバラ感の強い野党と、そうした状況にあぐらをかいて説明責任を果たさない首相ーー。今国会を一貫してウォッチしてきた岡村キャップの指摘を読み、ずーんと沈んだ気持ちになりました。 国会の機能が弱れば、「話し合い」や「歩み寄り」といった、社会のベースである民主主義の原則が弱まります。この参院選で一度リセットし、国民がどのような評価をし、今後の政治にどのような方向性を期待するのか、注視したいと思っています。

  • 「提案型」の半年、揺れる野党第一党 「響かない」から脱却なるか

    林尚行
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    朝日新聞政治部長=政治、経済、政策
    2022年6月15日19時5分 投稿

    【視点】今年1月、テレビ番組で泉代表と一緒になった際、「提案型野党」を前面に掲げ、チャレンジしていく姿勢を示していたのが印象的でした。あれから半年、通常国会を終えてみて、結果は残念ながら芳しくなかったようです。 ただ、健全な野党が必要である、という国民の意識は根強いと思います。もちろん野党にとって「政権を倒す」ことが第一の使命。さらに政権交代を果たした後、訴えてきた政策を実現して国民の信頼を得るのが、その次に求められることだとすれば、「提案型野党」の看板を素直におろすのではなく、今国会の「失敗」を教訓に、さらなる野党論を模索してほしいと思います。 そのためには、まずは参院選で存在感を示し、泉体制が「生き残る」しかありません。来週にはいよいよ選挙が公示されます。どのような戦い方をしていくのか、注目しています。

  • 衆院議員の8割「女性議員の数が不十分」と回答 男女で意識差も

    林尚行
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    朝日新聞政治部長=政治、経済、政策
    2022年6月10日16時8分 投稿

    【視点】今年4月、朝日新聞はオンラインイベント「Think Gender 超党派女性議員が討論~女性の国政進出を阻むふたつの『壁』をぶち抜け!」を開きました。7党の女性国会議員たちが一堂に会し、永田町の現状を率直に語っている光景を見ていて、「男性ばかりの議論とは質が違う」と感じました。多様な意見が議論の中で交わり、国民のための政治の中枢を成す、そんな国会が大切だとすれば、国会議員のジェンダーバランスの是正は不可欠だと確信しました。 今回の衆院議員向けのアンケートの結果はどうか。まだまだ道半ば、という印象です。とはいえ、多くの議員が、現状の議席数の男女比は問題だととらえていることがわかりました。これを手がかりに、党派を超えて取り組みを加速させてほしいと思います。そのためには、各党の女性リーダーの数を増やし、意思決定過程のジェンダーバランスを是正するところから始めてみてはどうでしょうか。 オンラインイベントで感じた熱気が再現されるような国会に、1日も早くなってほしいと思っています。

  • 沖縄返還50年、小渕優子氏が課す「宿題」 原点は父が見た名護の海

    林尚行
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    朝日新聞政治部長=政治、経済、政策
    2022年5月8日10時4分 投稿

    【視点】駆け出しの政治記者だった20年前、永田町と沖縄の関係を「基地と振興」というテーマに落とし込み、橋本元首相や野中元官房長官、山中元自民党税制調査会長らを直接取材しました。橋本さん、野中さんから「もう一人、本来であれば話を聞くべき相手」として名前が挙がったのが、小渕恵三さんでした。小渕さんは私が取材に取り組む2年ほど前にこの世を去っていました。 その橋本さん、野中さん、そして山中さんも故人となり、政治の中枢を担う政治家に沖縄への「特別な思い」があった時代は遠くなりつつあります。永田町を歩いていても、沖縄は政局の最前線のひとつのような扱いになっていると感じます。そもそもなぜ「アメとムチ」政策が講じられてきたのか。凄惨さを極めた沖縄戦、戦後の米国による統治期間、復帰後も続く米軍施設の集中、各種経済指標などに見る本土との格差--。そうした「そもそも」を我がこととしてとらえる政治家が少なくなっていると、肌で感じます。 そんな中、いわゆる「小渕ブランド」には独特の力があるように思います。それは故・恵三さんの熱量や人柄が遺したレガシーなのだと思います。米軍普天間飛行場の辺野古移設工事が進み、東アジアの安全保障環境が緊迫化する中、小渕優子さんという政治家が父の遺したレガシーも使い、今の時代に沖縄と向き合う政治家集団をどのように作り上げるのか。作り上げられるのか。注目しています。

  • 連合芳野会長が自民で講演 麻生氏歓迎「酒を飲めるところまできた」

    林尚行
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    朝日新聞政治部長=政治、経済、政策
    2022年4月19日8時47分 投稿

    【視点】連合会長が自民党本部を訪れ、自民党議員たちの真ん中で笑顔を見せるーー。政治記者にとって、なかなかシビれる光景だと思いました。参院選公示を2カ月後に控え、有権者にどのようなメッセージとなるか、注視したいと思います。 芳野会長は「過去にも古賀会長(当時)も出席している」と説明したそうですが、私も今回の芳野会長の行動だけを見るのではなく、連合の歴史、現在の労働組合の置かれた状況、組合ごとの多様なバックボーンーーなどを織り込みつつ、今何が起きているのか分析していきたいと思っています。

  • 政界進出を阻む壁 女性国会議員が語った思い

    林尚行
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    朝日新聞政治部長=政治、経済、政策
    2022年4月9日8時59分 投稿

    【視点】今回のイベントの運営に関わり、収録にも立ち会いましたが、20年余りの政治取材の経験の中でも指折りのエキサイティングな議論だったと思います。 まず、超党派の議員たちが党の立ち位置からほぼ解き放たれて「本音」で意見を交わしている点。そして、これは勉強会をリードしてきた長野さんの力に負うところが大きいと思うのですが、議員たちがある種の「同志意識」を持っている点、つまり「女性国会議員が増えない現状をなんとかしたい」という思いを強く共有している点、があると思いました。なにより、議員たちの間に「対立」ではなく「協調」の空気が流れており、政治不信という言葉を忘れてしまうような1時間半でした。 イベントの中では、多くの課題が言語化されました。とりわけこのテーマに無関心な男性議員も巻き込んで進めたいというメッセージは、とても重いと思いました。夏には参院選があります。立法府という極めて重要な場における偏ったジェンダーバランスをどのように改善していくか。政治家と有権者をつなぐ「選挙」を前に、みなさんと一緒に考えていく機会になればと思います。動画配信は13日(水)20時。ぜひご覧ください。

  • 国会は「最速ペース」予算案審議 政府の矛盾点、野党詰め切れぬまま

    林尚行
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    朝日新聞政治部長=政治、経済、政策
    2022年2月17日10時28分 投稿

    【視点】先月、泉代表とテレビ番組で一緒になったとき、「論客」不在によって国会論戦が低調になる可能性を指摘し、どんな人たちを使うのか質問しました。泉さんは、各政策テーマを深掘りする組織を作っていて、そこから質問者を国会に送り込むと言っていました。記事を読んで、そうした国会対応のための組織作りがどうなっているのか、知りたいと思いました。 番組で泉さんは、政府の施策の足らざる部分、届いていない部分を指摘し、修正させ、国民のために貢献する姿勢を強調しました。そうした取り組みがここまでどの程度できているのか。立憲自身がレビューし、可視化されたプロセスの中で改善策を講じていってほしいです。 「スキャンダル追及型」「批判一辺倒」ではない国会論戦を実現するのは、野党にとって簡単な話ではありません。ここは歯を食いしばって新しい「型」を作る正念場なのかもしれません。

  • かつては世界をリードした日本の半導体 復活に「10兆円は必要」

    林尚行
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    朝日新聞政治部長=政治、経済、政策
    2022年2月8日10時50分 投稿

    【視点】岸田政権が重要テーマのひとつに掲げる「経済安全保障」。その具体的な施策のひとつとされるのが、「産業の脳」「産業の米」と言われる半導体支援政策です。官民が描く大きな戦略が成功するためには、「インフラ整備」「人材育成」とともに、「国民の理解」がカギを握ると思います。 インフラ整備としては、熊本県へのTSMCの工場誘致、巨額の補助金投入などで最初の一歩のフレームが固まりました。今後は雇用創出や関連産業への波及効果といった目に見えた前進に加え、長い目で見た競争力強化の道筋を示していかなければなりません。 人材育成も大切です。東さんが「人材づくりは産業の一番の基盤」と指摘するように、市場が創出され、供給のインフラが整備されても、それを維持・発展させる人材の層が薄いと、激しい国際競争で後手に回ります。今回、そうした点にも目配りされた「打ち手」が講じられた点は、評価したいと思います。 今後の課題は「国民の理解」だと思います。産業育成は中長期的な戦略に基づいて進められるだけに、継続的に「なぜこうした支援が必要なのか」「なぜ政府が主体的に支えていくのか」という説明を、とりわけ政治がしていく必要があります。初期段階に数千億円を投入しながら、国民の理解が得られず結局撤退--などということになれば、すべての努力が水泡に帰しかねません。わかりやすく、粘り強く国民の理解を得ていく取り組みが求められると思います。

  • 行動する若者に向けられる「意識高い系」との視線 足かせ?それとも

    林尚行
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    朝日新聞政治部長=政治、経済、政策
    2022年1月31日8時53分 投稿

    【視点】小熊さん、能條さんのコメントを拝読しました。新聞社の中にあってコンテンツを作り出す側として、「若者特別枠」「女子ども特別枠」について、そうした視点で受け止められることをしっかりと心に刻みつつ、日々のコンテンツを作っていきたいと思いました。せっかくなので、新聞の「作り手」の視点から、どんな思いでいわゆる「若者企画」に携わっているのか、僭越ながら少し書かせていただこうと思います。 まず、新聞は小熊さんのご指摘の通り、中高年男性が主流という前提から逃れられていません。作り手も受け手も、です。そんな中、鉄板の読者である中高年男性とまだ見ぬ読者である若年層の接点となればいいなという思いもあります。まだまだ工夫は足りていませんが、あえて「若者特別枠」を意識的に作ることで、世代間の交流が生まれ、同時に新聞が生き残るための将来読者も生まれてくれればいいなと思っています。withnewsという媒体で、87歳の田原総一朗さんとZ世代のみなさんとで対談してもらう「相席なま田原」という企画をやってきたのですが、世代間交流の化学反応を見るのが記者として純粋に楽しい、という側面もあります。今回の記事に登場する露木さんも、田原さんと対談してくれました。 次に、デジタルコンテンツ重視の流れが、新聞社内のコンテンツ制作の中で「若者特別枠」の要請度合いをより高めている可能性です。能條さんの指摘する「新聞読者のメイン層ではない10代・20代は別の存在」で、でもそうした層にデジタルでリーチしていかないと既存メディアとして存在感がさらに低下してしまう、という危機感があり・・・という中で、「若者特別枠」は都合のいい「器」と言えるかもしれません。 最後に、とはいえ社内の若い記者たちは想像以上に意欲的だ、という点です。能條さんが「構造としての矛盾を感じつつも、取材してくれる記者の誠意と想い」と言及してくださっているのは、本当にありがたいです。昨年秋の衆院選に際して「withU30」という企画をやったのですが、いわゆる若手記者たちの「こういう記事を書きたい」という熱量は相当高いものがありました。中高年男性の一人として、そうした熱量を朝日新聞ブランドの中で新しいコンテンツにつなげられないかと考えています。小熊さんのおっしゃるように、全体構造の歪みの逆照射にならないよう、肝に銘じたいと思います。

  • 統計不正、問われる首相答弁 GDPへの影響は、予算委集中審議へ

    林尚行
    林尚行
    朝日新聞政治部長=政治、経済、政策
    2022年1月31日8時10分 投稿

    【視点】国会論戦を前に記者たちが見どころ、勘所を解説する記事を、社内的には「観戦ガイド」と読んでいます。読者のみなさんに、日頃取材している記者たちが自身の問題意識についてポイントを整理して提示し、国会審議をご覧になる際の一助にしてもらえれば、という思いで発信しています。 国交省による統計不正問題は、書き換えが明らかになって以降、さらなる問題点が浮上したり、政府答弁に疑義が生じたりしています。今日の集中審議で、そうした問題点・課題が整理され、政府が改善点を示し、その妥当性を国民が判断するというプロセスにつながればいいなと思います。この「観戦ガイド」がそのお役に立てばうれしいなと思います。

  • 個性より党の公約、擁立は複数 維新の躍進支えた「コンビニ」戦略

    林尚行
    林尚行
    朝日新聞政治部長=政治、経済、政策
    2022年1月31日8時2分 投稿

    【視点】楽しみにしていた連載が始まりました。昨年秋の衆院選で大躍進した維新の「実像」に迫ろうという企画です。この瞬間に表れている事象だけでなく、維新10年の大阪統治の歴史にも触れつつ、深掘りの考察がされることを期待しています。 私は2018年~19年、大阪で行政・選挙担当デスクをしていました。大阪都構想の是非を問う住民投票の再実施に向け、維新が知事・市長ダブル選などを通じて「大阪支配」を一段強めていく過程を間近に見ました。ちょうど、橋下さん、松井さんという創業者2人の絶対的な体制から脱皮し、吉村さんという次世代のリーダー候補をどう育成するかという組織的な課題も浮上していく時期でした。 橋下さん、松井さんとそれぞれ会った際、政治記者的な感覚として「この人たちは維新という政党が組織としてもう一段上のフェーズに行くにはどうすればいいか、ということを考えている」と受け止めました。そんな問題意識を背景に、当時の取材班とともに著したのが、「ポスト橋下の時代~大阪維新はなぜ強いのか」(朝日新聞出版、https://amzn.to/3rcSEwX)です。今回の連載に登場する善教さんを含め、橋下さん、松井さんへの単独インタビューも収録しています。 今回の連載は、いわば「ポストポスト橋下の時代」をどう維新が描いているのかを浮き彫りにしてくれるのではないか。そんな期待感を抱いています。大阪以外にいるとよくわからない「維新」という政党。この政党は極めてユニークで、政治取材の対象として興味深い体質を持っています。 これからどんな深掘りなエピソード、分析がなされるのか。2回目以降も楽しみにしています。

  • 沖縄の大学院大学、創業支援のファンド設立へ 世界の頭脳で地域振興

    林尚行
    林尚行
    朝日新聞政治部長=政治、経済、政策
    2022年1月27日10時54分 投稿

    【視点】沖縄科学技術大学院大学構想は2001年、当時の尾身沖縄相兼科学技術相が主導して動き出しました。「沖縄振興×科学技術立国」のひとつの取り組みとして、ノーベル賞級の学者を集めて「知の集積」を狙うというやり方で、今年で開学10年になるようです。 当時、私は政治部の沖縄担当でした。この構想自体には「なるほど」と思いましたが、どうやって沖縄振興に具体的に貢献するのか見えない、との指摘もあったことを記憶しています。開学10年、今年は沖縄の本土復帰50年の節目でもありますが、OISTは今も「地元の振興にどう貢献するか」を模索しているんだなあと思いました。 そんな中、50億円規模の創業支援ファンドを立ち上げるようです。グラノットマイヤー副学長の言う「沖縄に特化した事業にも出資できれば」という言葉に、ヒントが隠されているように思います。沖縄は近年、スタートアップ熱が高まっています。「世界最高水準の頭脳」と「新しい事業を開拓しようする起業家」がうまくマッチングされ、地元の雇用や税収が増えるような成功例がひとつでもできることを期待しながら、注目したいと思います。

  • 政府の経済・財政試算「楽観的過ぎ」 サントリー新浪氏ら委員が批判

    林尚行
    林尚行
    朝日新聞政治部長=政治、経済、政策
    2022年1月20日8時50分 投稿

    【視点】昨年6月、2026年度のPB黒字化を「予言」していた人がいます。当時の麻生副総理兼財務相です。大臣室でインタビューした際、コロナ禍で空前の財政出動をする中でも、政府が目標としてきた25年度の黒字達成は1年遅れくらいで実現しそうだ、と語っていました。 政府はこの間、黒字達成の試算を成長実現ケースで29年度→27年度と「前倒し」してきましたが、岸田政権でさらに26年度に繰り上げてきた格好です。コロナ禍にあっても好調な税収などを織り込み、実質経済成長率を高く見積もった結果の数字と言えるでしょう。 この間、昨年秋には衆院選があり、今年夏には参院選があります。財政をどう立て直すのか、常に政権・与党に問われ続ける展開になっています。安倍、菅両政権は経済成長によって財政健全化を図っていくという基本方針だったし、「富の再分配」を掲げる岸田政権にとっても分配の前提として経済のパイが広がらないと話が始まりません。 そんな中、「成長実現ケース」で高成長シナリオをもとにPB黒字化の試算をはじき出した、という構図になっています。さすがに、「楽観的」との懸念はぬぐえないようです。経済財政諮問会議の民間議員たちにすら簡単に信じてもらえない試算を出す意味が、どれだけあるのか。試算には過去の実績などを反映した「ベースラインケース」もあり、こちらだと31年度でも黒字化は達成できません。 政策決定はしっかりと現実を見据えたシミュレーションを土台に行う必要があります。借金依存の財政運営から少しでも早く脱却しなければいけないのは、その通りだと思います。感染拡大への機敏な対応と同時に、中長期的にはコロナ禍からの出口戦略も考えなければいけない中、「どこに本当にお金を使い、どこを政府がサポートしていくべきか、しっかりと考えていくことが重要」(東大大学院・柳川教授)という考え方で、地に足の着いた政策のグリップを期待したいと思います。

  • 沖縄の選挙イヤー幕開け 名護市長選、新基地「沈黙」か「阻止」か

    林尚行
    林尚行
    朝日新聞政治部長=政治、経済、政策
    2022年1月17日9時30分 投稿

    【視点】沖縄の「選挙イヤー」の幕開けです。人口約6万4千人の地方自治体の首長選が注目されるのは、米軍基地問題に翻弄される沖縄の象徴であり、秋に予定される沖縄県知事選に向けた一連の選挙の最初だからです。では、何が問われるのでしょうか。 注目自治体の選挙の争点設定は、メディアとしてはいつも悩ましいものがあります。とりわけ沖縄の選挙は、国の外交・安全保障問題までウィングが広がるため、メディアの報じる争点と有権者の考えとの温度差も指摘されます。今回の名護市長選では、辺野古移設を進める与党が支援する現職は移設を前提とした交付金の使い方に焦点を当て、市民生活がどう潤うかを前面に打ち出しているようです。対する新顔は辺野古移設に反対する知事ら「オール沖縄」に支援され、移設反対を前面に掲げているようです。そうした構図をとらえつつ、選挙戦の経過と結果をどう読み解くか、メディアの腕の見せどころになりそうです。 個人的には、沖縄で猛威を振るうコロナ禍における米軍の存在が、今回の選挙にどのような影響を及ぼすか注目しています。政府の水際対策が及ばず、沖縄での感染急拡大につながったと指摘される日米地位協定の「穴」に対して、沖縄の人たちがどの程度の「怒り」を持っているのか。一方で、すでに選挙活動に影響が出始めているようですが、感染拡大が投票行動自体をどのように縛ってしまい、選挙結果に影響を及ぼすのか。注視したいと思います。

  • 岸田首相、面会数上位とその理由 就任100日で党との関係も変化

    林尚行
    林尚行
    朝日新聞政治部長=政治、経済、政策
    2022年1月12日10時13分 投稿

    【解説】日本の最高権力者の日々の動向を追う「首相動静」。このコンテンツには、意義と限界の2つの側面があります。 まずは「意義」。まさに今回の記事がその象徴のようなもので、首相を日々ウォッチしている「総理番」と呼ばれる記者を中心に面会相手を分析し、政権の特色を浮き彫りにする取り組みです。面会相手とその頻度を詳しく見ることで、安倍政権、菅政権との違いなどが透けてきます。そこからは、岸田政権における実力者が誰で、どんなルートが政策決定に深く関わっているのかという「権力の所在」も見えてきます。 今回の100日分析では、官邸内では木原官房副長官ら岸田派側近、自民党側では茂木幹事長、麻生副総裁という党ツートップ--ということになります。党幹部との面会場所が党本部というのも、興味深い特徴です。 とはいえ、首相動静分析には「限界」もあります。現在の首相官邸は首相執務室と同じフロアに記者団は入れず、二重廊下のため記者の目を逃れて首相に会うことは容易な構造になっています。つまり、「記者の目に触れつつ首相と会う」という行動自体がある種の意味・色合いを帯び、動静を操作することも可能だ、ということです。 官邸だけでなく公邸で秘密裏に会うことも可能で、そうした「『裏日程』も含めて岸田政権の実像」ということになります。これは首相動静に常につきまとう「限界」と言えます。だからこそ、政治記者たちは日夜取材を積み重ね、裏日程も含めて把握しようとしています。それらの集大成が、日々の政治記事だと言えると思っています。 そんな首相動静を「10倍楽しく読む方法」という短い動画を3年半前に制作しました。Youtubeで今も公開しています。https://www.youtube.com/watch?v=kLLA1b8HhhE  副題は「誰と会う?料亭前の駆け引き」。もしもよろしければご覧くださいませ。

  • 官邸より総裁室、党を重視する岸田首相 見据えるのは「黄金の3年」

    林尚行
    林尚行
    朝日新聞政治部長=政治、経済、政策
    2022年1月6日14時30分 投稿

    【視点】ファンであるところのプチ鹿島さんと同じ見立てだったことにうれしさいっぱいの林です。小渕恵三さん的な総理になる気配を見せている岸田さんですが、今回の政権3カ月検証は、いわゆる「密室の協議」のシーンから始まっています。古いと言われるかもしれませんが、政治記者的には「政治連載はこうでなきゃ」と、さらにうれしくなりました。 岸田さん、麻生さん、茂木さんという、現政権を実質的に動かしている3人が、官邸ではなく自民党本部に集まり、政権にとって最重要案件である参院選の日程を話し合う。それぞれの発言にはそれぞれの立場がにじんでいて、今の政権の意思決定の雰囲気を感じ取ることができる一場面だと思います。もちろん、この場に朝日新聞の記者が同席していたわけではなく、出席者やその周辺たちへの取材を重ね、場面を再現した記事でしょう。 首相動静で岸田さんが党本部に足を運んだ回数を菅さん、安倍さんと比較する「表の動き」と、その裏で行われているキーパーソンたちによる意思決定の内容。これらを重ね合わせ、今何が起きていて、これから政権はどこへ行こうとしているのかを読者にお伝えするのが、政治報道のひとつのスタイルです。 次回は「秘書官全員と昼食 ボトムアップ型『チーム岸田』にビジョンまだ無し」という見出しで明日7日午前5時に配信予定とのこと。今度はどんな「とって出し」のエピソードから政権の現在地が描かれるか。楽しみです。

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