【視点】使用済み核燃料の搬出問題を「最大の経営課題」と位置づけた関西電力社長の胸中には、青森県むつ市で建設中の中間貯蔵施設の共同利用案が実現することへの期待がいまだにあるだろう。 東京電力と日本原子力発電の原発から出た使用済み核燃料を受け入れる計
【視点】組織委の元理事が、自身が代表を務める会社とコンサル契約を結んでいる企業側に、「東京五輪のスポンサーをやったらどうですか」と提案していたことは、見過ごせない事実だ。コンサル料の受け取りを「五輪とは全く関係ない」とする元理事の説明は通用しにくい
【視点】ゼネコンなどの共同企業体(JV)が元請けとして請け負った工事を取り仕切る現場所長が下請け業者からリベートを受け取り、遊興費などに使う不正行為は、これまでも様々なゼネコンで発覚している。今回の銭高組への課税処分は、建設業界の悪習が依然としては
【視点】記事によると、組織委の元理事は、公務員ではない民間企業の役員出身ではあるが、代表を務める会社とコンサル契約を結んでいた企業が東京五輪・パラのスポンサー企業になった時点で、組織委理事の立場からコンサル契約がどのような評価を受けるかについて慎重
【視点】「魚離れ」の実情をめぐる論考を読んで、昭和の商店街の様子を思い出した。子どもだった私が買い物の当事者であった訳ではないのだが、魚屋の店員が、道行く買い物客に「奥さん、きょうはいいのが入っているよ」と声をかける。それが当たり前の光景だった。
【視点】様々な事例で「政治とカネ」問題の取材をしてきたが、現金買収は明確な公職選挙法違反であるにも関わらず、選挙での慣習ととらえて許容するムードが、各地の地域社会でいまだに存在しているように思う。 2019年の参院選で起きた河井克行元法相夫妻によ
【視点】谷崎潤一郎の「陰翳礼讃」を約40年前に読んだ。日本の美的感覚は陰翳の中に見出されてきたものであり、金蒔絵、仏像などは本来、陰翳のある家屋の中で映えるように作られたという内容の記述に感銘を受けた記憶がある。 「美の季想」で紹介されているシャ
【視点】1997年、当時の第一勧業銀行と四大証券による総会屋への利益供与事件が起きた際、総会屋問題を集中的に取材したことがある。当時は「暴力団の影響がない総会屋はいない」(警察庁関係者)とされ、暴力団から資金援助を受けたり、舎弟関係を結んでいたりす
【視点】戦争の犠牲者は、その人数が多ければ多いほど、ひとりひとりの存在が数字の中に埋没してしまう。後の時代からその戦争を知ろうとすれば、その大きな数字だけが目の前に現れる。 24万人以上の氏名を約250時間かけて読み上げた取り組みは、その数字だけ
【視点】火曜夕刊の看板連載「美の履歴書」では、ひとつの作品を取材した様々な美術担当記者の思いの丈がつづられる。なかでも田中ゑれ奈記者の記事には、作品の奥にある人間のドラマが浮かび上がる印象があった。今回も田中記者の記事を読みながら、夭折した田中恭吉
【視点】東日本大震災の復旧・復興工事の現場を取材するなかで、複雑な下請け構造に起因する様々な問題を見聞きしてきた。 下請けの一次と二次、二次と三次の間で工事代金の未払いがいくつも生じていた。元請けのゼネコンが介入して解消されたこともあったが、トラ
【視点】私は昨年度までの2年間、東京都内の私立大学でジャーナリズム関連の講義を受け持った。受講生は多くても約20人の小規模クラス。1年目はすべてオンライン、2年目は選択制になって対面授業を選んだ。オンライン授業では、熱心な学生ばかりでコミュニケーシ
【視点】2009年に東京地検特捜部が摘発した当時の民主党の小沢一郎氏側への違法献金事件では、検察当局による「政治介入」との批判が起こり、メディアの報道もそれに乗じたとする批判にさらされた。当時の取材班責任者として批判に応える記事を書いた。同年の衆院
【視点】選挙のたびに圧倒的な集票力を示してきた全国郵便局長会。「後継者育成マニュアル」は、その力の源泉が「育成」段階からあったことを裏付けるものとして注目される。「政治活動の必要性を教える」「配偶者の協力を確認」などとする内容は、集票マシンの要員を
【視点】東京電力福島第一原発の事故後、東電の技術系社員がこう話したことがあった。「日本の電力会社の中で、原発関連のスタッフが充実していた東電でさえ、この有り様だ。他の電力の中にはもともと人員不足が言われている会社が複数あり、そこの原発で同じ事故が起
【視点】テルアビブ事件は断じて許されるものではないが、それを「テロ行為」だけで済ませると、日本赤軍を生んだ当時の社会の問題性を考えることもやめてしまう恐れを感じる。 赤軍派のうち国内に残ったグループらが引き起こした、群馬県内の山岳ベースで仲間12
【視点】避難計画の実効性への疑問の声が絶えない。だが、計画をまとめた国と地元自治体が、原発の再稼働を優先させているためか、その声を軽視しているという印象はぬぐえない。 東京電力福島第一原発の事故を受けて、避難計画の策定が義務づけられる範囲が、半径
【視点】私が1980年代に大学の文学部でロシア文学を専攻したのは、ドストエフスキーなどの19世紀ロシアの作品群に魅了されていたからだ。だが、専攻後、旧ソ連時代に書かれた20世紀の文学の質の高さを初めて知った。今でも印象深いのは、ブルガーコフの幻想的
【視点】東京電力福島第一原発の事故以降、現在も国内の多くの原発が停止したままだ。その中には、原子力規制委員会の新基準で許可が出ても、安全対策工事で時間がかかっている原発もある。電力会社が再稼働に慎重な関係自治体を説得できるかどうか見通しが立たない地
【視点】規制が厳しい農地転用をめぐっては、転用の許可申請を審査する農業委員会の委員が、申請業者に便宜を図る見返りに現金を受け取ったなどとする贈収賄事件が、毎年のように全国各地で摘発されている。わいろの金額は多くても数百万円で、転用許可で開発に道が開