蟹江憲史

蟹江憲史かにえ のりちか

慶應義塾大学大学院教授
関心ジャンル:科学環境国際原発・エネルギーSDGs

最新コメント一覧

  • 10代でスポーツ引退「不幸の始まり」 室伏長官が示す全国大会改革

    蟹江憲史
    蟹江憲史
    慶應義塾大学大学院教授
    2022年6月23日23時4分 投稿

    【視点】 アメリカの少年スポーツでは、「勝つ」チャンスが色々と与えられています。同じスポーツの中でもレベルが細分化され、また、1チームの人数も限られています。例えば少年野球では、1チーム12-13人、全員が打席に入り、守備は交代しながら皆が色々なポジションにつく。これが12歳以下では徹底されています。上級者でも初心者でも同じ、全員がレギュラーです。  週末には様々なトーナメントが開催されたり、リーグ戦も様々に行われ、競争の中でとにかく優勝するチャンスが多いのです。1,2位に入ればメダルやトロフィーをもらうことが出来ます。勝つことで子どもたちには成功体験が備わり、そのスポーツを好きになっていきます。負けても、他のスポーツや別の機会があって、何らかの成功体験をしやすい環境が整っています。  アメリカで野球文化が育っているのはこういうところから来ている、ということを実感しますし、それは野球だけでなく、子どものスポーツ全般に言えることです。    全国で勝つよりも、たとえ規模は小さくとも、また、レベルが低くても、勝ってトロフィーをもらう経験を増やしていくことが、ずっと大事だと思います。また、そうすることで、他の人の成功を認める習慣も身につくでしょう。中学生ぐらいまでは、チャンピオンが沢山いる方が、社会としても楽しいのではないでしょうか。

  • バングラの石炭火力支援を中止 外務省「国際議論の潮流踏まえた」

    蟹江憲史
    蟹江憲史
    慶應義塾大学大学院教授
    2022年6月23日7時46分 投稿

    【視点】 当然といえば当然のことですが、中止をするというのはかなりの努力が必要だったと思います。こういう動きを継続していけば、日本の国際貢献ももっと評価されるようになると思います。さらに言えば、国際的な潮流の前に、日本自らのイニシャティブとして進めていただきたいところです。  選挙ですが、各党がこうした気候変動への対応をどのように進めているのか、という点も、良く調べて投票すると良いように思います。

  • 東京五輪の最終報告書 識者が批判する「組織委が書かなかったこと」

    蟹江憲史
    蟹江憲史
    慶應義塾大学大学院教授
    2022年6月22日8時38分 投稿

    【視点】 東京大会までは五輪開催について第三者が科学的に評価を行うOlympic Games Impact Study (OGI)という枠組みがありましたが、東京大会の準備期間中にこれがなくなりました。これにより、第三者評価の枠組みがなくなったことが、今回の五輪の大きな失点だと思います。この枠組みを継続すべく、組織委員会や東京都にも働きかけましたが、不発に終わりました。  適切な評価とフィードバックがないところに発展はないというのは、政策に限らずもはや世界の常識です。五輪が持続可能であろうとするのであれば、今こそ、そのことに向き合うべきではないでしょうか。

  • SDGsはうさんくさい? 斎藤幸平さん、たかまつななさんに聞いた

    蟹江憲史
    蟹江憲史
    慶應義塾大学大学院教授
    2022年6月21日6時43分 投稿

    【提案】 日本では他の国と比べて「SDGs」という言葉がかなり普及しています。これはこれで素晴らしいことだと思います。一般への浸透度はおそらく世界一だと言っていいでしょう。ただ、SDGsが一体どんな意味なのか、ということについての理解が進んでいません。したがって、SDGs実現のための行動もついてきていません。このギャップが問題にされているのだと思います。  SDGsには、だれも否定しようのない「良いこと」ばかりが並んでいます。また、17目標は多くの分野をカバーしているので、自分の会社が目指すことが一つは当てはまるはずです。こうして、ただSDGsを掲げているだけ、という会社が目につきます。このインタビューで批判されているのもそういうところです。  ただ、私はそういう本気でないところは、今後淘汰されていくことになると主張しています。今回のご指摘で欠けている視点は、SDGsには「測る」という仕組みがあることです。「測る」ところとセットで考えないと、SDGsの全体像をつかんだとは言えません。  やったふり、が気になるのであれば、それを見抜くための測り方を考えるのが、次のステップとして大事になります。  周知の段階は、日本でも一区切りがついたといって良いでしょう。2019年の国連総会では、「SDGsの周知の段階は終わった、これからは行動の10年だ。これからの課題は測ることだ」ということが言われました。それから3年が経ち、日本もようやくその段階に来たということでしょう。  私は学生たちと一緒に、彼らの視点から、きちんと行動している企業とそうではない企業とを測る指標を開発しています。どの企業が「誠実」な企業か、これを見るとわかってきます。測ることで次の行動を促す、これが目標を設定することで動かす仕組みの大事な点です。

  • 分断強まる「ウクライナ後」の世界 過渡期の国際秩序と日本の役割

    蟹江憲史
    蟹江憲史
    慶應義塾大学大学院教授
    2022年6月16日23時47分 投稿

    【視点】 竹内さんとは、あるところでしばらく「同僚」として活動させていただきました。その時の印象そのままに、今回のインタビューでも、日本と世界の利益を考えた上で毅然とした態度で目の前の事態に臨んできた姿勢が良くわかります。竹内さんのような官僚が少なくなってきたというのは、私が接触する中でも最近受ける印象です。  ただ、そうした方が官僚に少なくなってきた半面、民間では増えてきていると感じます。これは、民主主義を考える上ではむしろ良いことのように感じます。  そうした中で、ポスト・ウクライナ期の世界の課題を述べられている部分は示唆に富んでいます。ここで課題としてもう一つ今後重要になるのは、気候変動をはじめとする地球的な危機への対応だと思います。安全保障を語る際、これまでは地球システムの変動とは切り離されて考えられてきましたが、これからは、足元の課題として、この課題への対処と安全保障の課題とは一直線上に来るでしょう。これまで気候変動対策を重視してこなかった米国でさえ、今や目の前の気象現象が危機的になっていることが引き金となって、気候対策を語り始めているのです。  そういう意味でも、国連というグローバルな機関での規範作りと、個々の政策や戦略との連関を作り出していくことが大事になってくると思います。つまり、地球と人類とを持続可能にするという前提のもとで、安全保障問題も考えないと、国家間のパワーバランスを考えている間に地球自体が壊れてしまう、という冗談のような事態が現実のものになりつつあるということです。  分断が進む時だからこそ、国連への希望と日本から国連への発信は、国際秩序立て直しの努力の中で期待したいところです。

  • 日本のSDGs達成度、世界19位に低下 増えた「最低評価」

    蟹江憲史
    蟹江憲史
    慶應義塾大学大学院教授
    2022年6月3日4時53分 投稿

    【提案】 SDGsの認知度向上と反比例するように、日本のSDGs達成へ向けた評価が下がっています。なぜでしょうか?私には、本質を見失っているからだというように見えます。  SDGsに本来必要なのは、目標を達成するために物事を大きく変えていくことです。そして、「目標を達成する」ということは、17目標全てに対して良い影響を与える、あるいは少なくとも悪影響を与えない、という事なのです。一つの目標達成をする代わりに他の目標が達成できないというのではだめなのです。これは、本気で取り組まないと到底出来るものではありません。  例えば、エネルギー価格が上がるからといって、化石燃料補助金を大きくして、その場しのぎで化石燃料の価格を下げようという今の政策では、目標7(持続可能なエネルギー)や目標13(気候行動)に反します。今だからこそ、再エネを促進し、構造改革を行うことで産業活性化をするようでなければ、SDGsを目指しているとは言えません。  これはほんの一例ですが、ジェンダー平等しかり、貧困対策しかり。あらゆる分野で、残念ながら、日本の政策はそういう「本気のSDGs」のレベルに達していません。それが、この結果に表れています。  企業の対策も同様です。表面的にSDGsを掲げる企業と、本気で取り組みを進めようとする企業との差が出始めてきています。  本気の変革を進める一つのきっかけは、国でSDGsにかなう目標やターゲットをきちんと作ることです。そうすることで、政治も本気になり、企業もビジネスのサイクルにSDGsを乗せることが出来るようになります。  その第一歩として、政府のSDGs円卓会議は、SDGsの目標とターゲットを日本で作る国民会議『ステークホルダー会議』をこの夏にも開催する予定です。今年一年かけて、本気のSDGsのために必要な日本のための目標・ターゲットを議論し、政府に提案します。  SDGsは日本経済が持続可能に生き残るための鍵になる道しるべです。まずは下記ホームページにご注目ください。そしてご関心のある方、この機会に、ぜひとも声をあげましょう! https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/sdgs/partnership/index.html

  • 「化石燃料はいずれ限界」 欧州で進む二つの「脱」、風力発電のいま

    蟹江憲史
    蟹江憲史
    慶應義塾大学大学院教授
    2022年5月23日7時28分 投稿

    【提案】 「既存産業からの働き手の転換を促すための技能訓練。」これは中央政府に限らず、地方自治体での政策でも支援出来る方策です。日本でも、SDGsが実現する社会へ向けて中小企業が活動領域を転換する動きが出始めています。ただ、ほとんどの地域で、それは中小企業に任されてしまっています。  日本では150を超える都市が「SDGs未来都市」になっていますが、こうした産業転換の本質をとらえた「未来都市」の出現に乏しいのが現状です。  将来的にSDGsが実現する社会でないと世界の継続が難しいと確信しているのが「SDGs未来都市」だとすれば、政策支援を中長期的に行うと示し、これによって、『これこそ未来だ』と確信できる道筋と対話をつくっていくことが、今求められています。中央政府の動きが先行するのが理想ですが、それが進まないのであれば、地方から引っ張ることも重要です。

  • 太陽光パネル、世界一からの転落 繰り返された「負けパターン」

    蟹江憲史
    蟹江憲史
    慶應義塾大学大学院教授
    2022年5月15日16時55分 投稿

    【解説】 太陽光について、堀井さんのご指摘はもっともであり、こうなることは前からわかっていたと思います(なお堀井さんは大学の同期で同じ部に所属していた友人で、いつもはあだ名で呼んでいるので、「堀井さん」というのも何か変な気もしますが)。私自身も2005年ごろのいわゆる「ポスト京都」議論が始まった頃から、気候変動対策については早く舵を切らないと「うさぎとカメ」のウサギになってしまう、と警鐘を鳴らしていたのを思い出します。気候変動の科学に基づいた議論を正面から行わず、本質的議論を避けながら政治的に気候変動をとらえすぎていたことが、結果的に日本の産業にネガティブなインパクトを与えることになったのではないでしょうか。政策のミスだと思います。  ただ、この教訓は生かさなければいけません。経済の世界でも、当時あまり信じられていなかったことが今では主流になっています。短期的利益にとらわれすぎずに中長期的な利益を考えることは、その後のリーマンショックを経て特に明らかとなりました。また、財務的情報のみならず非財務情報が投資の世界でも大事になっており、環境や社会へのインパクトや会社の姿勢を問うESG投資が今や勢いを増しています。  先を見て、そこからバックキャストすることの重要性が益々明らかになっていると言えるのではないでしょうか。SDGsはそういうことのためにもっと活用できるはずです。「紐づけ」から一歩も二歩も踏み出し、未来のあり方を考えるうえで、SDGsの活用が、「負けパターン」を繰り返さないことにも生きてくるのではないでしょうか。

  • 岸田首相「6月に水際含めたコロナ対策見直す」 経済回復に向けて

    蟹江憲史
    蟹江憲史
    慶應義塾大学大学院教授
    2022年5月7日3時44分 投稿

    【視点】 岸田さんは政府専用機なので仕方がないにしても、ゴールデンウィークで外遊している国会議員の皆さんには、VIP待遇なしに、ぜひ通常の入国手続きを経験していただきたいところです。日本と海外でこれを経験していただくことが、日本の「鎖国」が世界の常識から外れていることを体感する最も良い手段になるでしょう。空港で何時間も待たされる苦痛や、デジタルで提出している書類の「確認」のために何度も足止めされ、紙を渡される状態を体感することで、日本の問題点が実感としてわかるはずです。  経済回復から持続可能な成長につなげていくためには何が必要か、すでに他国の後塵を拝している日本に何が必要か。客観的に日本を見る良いチャンスとしていただきたいところです。。

  • ルイ・ヴィトンが日本の産地表示を検討 職人のブランド化後押し

    蟹江憲史
    蟹江憲史
    慶應義塾大学大学院教授
    2022年5月4日0時23分 投稿

    【視点】 ルイ・ヴィトンなどのいわゆる「高級ブランド」のサステナビリティへの意識は非常に高いです。確かに値段も高いです。ただ、三世代で使う、壊れたら直す、という信念に基づいているので、それを考えて価格をとらえることも必要でしょう。「高級」の裏にある価値観も含めて商品を見ることが求められるのだと思います。  高いから高級ブランド、だから持っているとかっこいい、そしてブランド品をどんどん買い替えていく、というような見方は時代遅れになっていくでしょう。  実は日本の職人がこうしたブランドの背景に多くいることは、もっと知られて良いかもしれません。サステナビリティにこだわりを持つ職人さんに目をつけるハイブランドの目利きは素晴らしいですが、足元の日本の消費者もそうした技術にもっと目を向けることが大事でしょう。高級ブランドが情報開示をすると、地元の職人さんの商品が手に入らなくなるかもしれません。そうなる前に、自らで目利きをしてみてはいかがでしょうか。

  • パイロットは結婚や出産できますか 女性初のJAL大型機機長の答え

    蟹江憲史
    蟹江憲史
    慶應義塾大学大学院教授
    2022年5月4日0時14分 投稿

    【視点】 「パイロットは結婚や出産できますか」  こういう質問が出ない世の中にしないといけないですね。当然なことが当然に映らない世界、それがジェンダーを巡る日本の問題だということの象徴のように思います。

  • 尾身氏「政府が納得しない」 夜の緊急招集、憤る専門家「話が違う」

    蟹江憲史
    蟹江憲史
    慶應義塾大学大学院教授
    2022年4月29日0時26分 投稿

    【視点】 辻さんのコメントに賛同します。この問題は、長らく日本で課題となっている、科学と政治の関係をどうするか、というものです。  SDGsが求める変革が喫緊の課題となるこの先には、益々専門的知識が必要な課題が増えてくるでしょう。基本的に、研究者はオプションを示すことはできますし、そのオプションを取ったときの帰結やシナリオを一定程度示すことはできます。しかし、それらとて、あくまで科学的な知見のもとでの過程に基づいたものです。  それらに基づいて、オープンに議論をし、判断をするのが民主政治の役割でしょう。批判もあると思いますが、そこで科学的知見や国民の考えをもとに、政治が毅然として責任をとることで、自由な研究活動も守られます。  欧州やアメリカと比較して、日本がこの点ではっきりしたポジションを取ってこなかったことが、混乱を引き起こしているように思います。

  • 安いファッションが抱える搾取の構造 日本も「他人事ではない」理由

    蟹江憲史
    蟹江憲史
    慶應義塾大学大学院教授
    2022年4月26日23時41分 投稿

    【解説】 SDGsやサステナビリティへの一般的な関心が向上しているのとは裏腹に、何をどうすればいいのかわからない、という人も企業も増えています。今回の記事のように、製品の裏にあるストーリーを見ることで、何をどうすれば、という部分が見えてくるように思います。  この記事にもあるように、答えは一つではなく、色々な問題が絡み合っています。グローバル企業だけが変わればいいという話しではなく、政策も、支援方法も変わる必要があります。投資も変わる必要があります。複合的な変化が求められているので、SDGsでは「変革」が必要なのです。  だからと言って、他が動くのを待つのではなく、それぞれ出来ることから始めることで、風穴が開き、物事が動き出すことがある、ということもわかり始めてきました。  この記事を読み、自分が出来ることは何かを考えるところから、変革が始まるように思います。

  • 新たな企業価値とSDGs 市場再編の意図をJPX清田CEOに聞く

    蟹江憲史
    蟹江憲史
    慶應義塾大学大学院教授
    2022年4月26日0時38分 投稿

    【解説】 投資家がサステナビリティを重視するようになっていますが、このインタビューを見ると、そうした動きがさらにダイナミックに市場を動かしていく様子がうかがえます。取引所としてまずは情報開示から始めて緊張感をもっていただく、というのは重要なステップだと思います。企業の側は、情報開示の先にある本格的なサステナブル経営に踏み込むことが今後大事になっていくと、そのメッセージを前向きにとらえてもらいたいと思います。  SDGsは実際に経営に反映しようとすると、会社の価値観やパラダイムを変えていく変革が要求されていることに気づくでしょう。SDGsに貢献するような一面だけを見せていくだけでは、それは実現できません。本気度を測るためには、トレードオフにどう対処しているのかを見抜くことが必要です。  そのためには客観的な基準も大事になり、世界的にそのような基準設定の動きも加速しています。  「強制することはできませんが、市場の力を使って上場企業に緊張感を持っていただくことはできます。」という言葉は、これからのサステナビリティを巡るガバナンスの方向性を的確に表現しているように思います。

  • (ひと)森田香菜子さん 親子2代でIPCC報告書を執筆した環境政策研究者

    蟹江憲史
    蟹江憲史
    慶應義塾大学大学院教授
    2022年4月23日0時9分 投稿

    【提案】 私が東工大にいた時代、森田香菜子さんが最初に私の研究室のドアをたたいて来たときの事が昨日のことのようによみがえります。東工大に着任した直後、最初に大学院に入ってきてくれたのが彼女でした。気候変動の大家のお嬢さんがやってきた、ということで、自らプレッシャーを感じたのを覚えています。  その直後に、お父様が急逝されたことには大変驚き、私のみならず、関係者全員が深い悲しみに包まれました。ご本人のショックも大きかったですが、そのお父様を引き継ぎ、こうして日本初の親子2代の主執筆者となられたのは、ご本人の一方ならぬ努力のたまものです。本当に素晴らしいことだと感服しています。  「投資とファイナンス」は、森田さんにとっては、まだまだ第一歩だと思います。これから先、世界を先導する活躍を大いに期待したいと思います。がんばれ~!

  • 「文学部なんか無意味」の呪い解けた 教え子から教授に届いたメール

    蟹江憲史
    蟹江憲史
    慶應義塾大学大学院教授
    2022年4月9日4時11分 投稿

    【視点】 ここで言われているように、文学部の重要性は現代社会で生き抜くうえでも非常に重要です。私の父も文学者でしたが、彼の知見は現代国際政治を研究する私にとって、極めて重要な視点を提供してくれます。中世文学の人の動きやそれに対する洞察は、時代を経ているからこそ、エッセンスが明らかになって生きてくる気がします。  今の日本の政策動向を見ていると、あまりにも人間への理解が足りない部分が目につきます。度々コメントをさせていただいている日本の水際対策もその一つ。人間への理解があれば、もっと違う政策になっていたと思わせる点が多々あります。そしてそのことが留学生、労働者、旅行者を日本から引き離しているとすれば、これは国益に直接響いてくることになります。  人文学軽視の弊害は、為政者が考える以上に大きそうです。

  • 「コロナ鎖国」は何だったのか 訪日望む人を足止め、透けた日本社会

    蟹江憲史
    蟹江憲史
    慶應義塾大学大学院教授
    2022年4月7日23時56分 投稿

    【視点】 この記事では「コロナ鎖国」が過去のことのように扱われていますが、「コロナ鎖国」は現在進行形です。ようやく4月10日入国者数が一日1万人まで引き上げられることになりましたが、入国者に枠を設けていること自体、鎖国状態の継続を意味します。  原因の一つには、入国時にPCR検査を実施していることがあります。その能力に限界があることで、入国者数を絞っていますが、勝田さんもおっしゃるように、市中感染が広がった今、入国時にPCR検査をする意味はもはやなくなったといって良いでしょう。国内で検査が十分に行われず、「みなし」陽性者という言葉が出ている状況で、出国前に検査をしている入国者のために、さらに入国時に検査を行う意味はありません。その分、国内での検査を充実させるべきでしょう。  米国メリーランド州では、児童生徒に対して学校でのランダム検査が行われていて、そのことが感染拡大防止に一役買っています。むしろそうした方面に検査の舵を切るべき時でしょう。  入国時のPCR検査は、日本へ入国したいという留学生をはじめとした方々の心理的圧迫にもなります。自国に戻るならまだしも、外国へ行って、入国できるかわからない状態で待たされる、結果が陽性になったら、そこからどうなるのかがわからない、という状況は、精神的にも大きな負担になるでしょう。自らが海外に行ったときにそうなった状況を想像してみてください。  記事にもあるように、留学生や海外からの方々が来日する、そして日本にいる、ということは、そのこと自体がこの国の力になります。国として何を目指すのか。世界で同時に降りかかっているパンデミックであるがゆえに、国による差が浮き彫りになります。  「日本がだめなら他に行こう」という判断が重なることが何を意味するのか、考え、行動する時ではないでしょうか。

  • 温室効果ガス「25年までに排出ピークから減少に」 IPCC報告書

    蟹江憲史
    蟹江憲史
    慶應義塾大学大学院教授
    2022年4月5日12時17分 投稿

    【視点】 日本ではSDGsがブームのようになってきていますが、言うまでもなく、気候変動対策はSDGsの掲げる目標の一つです。気候変動のパリ協定は2015年12月に採択されたため、同年9月のSDGs採択時にはまだ交渉中でした。こういう経緯があって、SDGsでは注釈で、パリ協定とリンクされていることが明記されています。つまり、SDGs達成を目指すということは、気候変動対策をしっかりするという事でもあります。  25年までにピークアウトするということは、もはやインフラを含めて移行期の対策では不十分で、一気に変革をすることが求められているということです。これは、対策を遅らせれば遅らせるほど、より強度の高い対策が今後求められるということも意味します。  SDGsも気候変動対策も、危機感を共有することから始まるということを今一度認識する必要があります。  来年には、IPCC報告書のSDGs版ともいえるグローバル持続可能な開発報告書(GSDR)が報告されます。危機感を共有しながら変革を進め、そのトップランナーを応援し、障害を取り除く政策が、今強く求められています。

  • 小学生の柔道全国大会廃止 「行き過ぎた勝利至上主義が散見される」

    蟹江憲史
    蟹江憲史
    慶應義塾大学大学院教授
    2022年3月18日12時51分 投稿

    【視点】 今回の決定は素晴らしいことだと思います。山下さんのように力のある方だからこそ出来た事のように思いますが、こうした子供たちの成長を考える動きはぜひ加速していくべきです。  小学生のスポーツ過熱化については、私が現在滞在している米国でも課題になっているようです。こちらでも、スポーツで進学する道が開けたり、奨学金をもらえるという道があったりすることが、過熱化に拍車をかけているようで、これは日本も似ていると思います。  他方で、例えば野球では球数規制が厳密だったりと、子どもの身体を考えた指導は徹底しているように思います。また、スポーツチームに色々な選択肢があり、親も子どもたちも一人の指導者、一つのチームにこだわらずに変えていけることで、選択の自由が確保されていることも大事なように思います。  コーチたちが勝利によって評価されるというのも、短期的な成果主義を助長しているのではないでしょうか。むしろ、その後の人間的側面を含めた成長で指導者を評価するといったように、指導者評価の視点を変えることも大事だと思います。

  • 「おなごのくせに…」 全国2人目の女性知事が直面したモヤモヤ

    蟹江憲史
    蟹江憲史
    慶應義塾大学大学院教授
    2022年3月10日2時30分 投稿

    【視点】 慣習の持つ問題点、それを乗り越えて変革することの難しさがとても良くわかる記事でした。SDGsは変革が大事といいますが、この記事で述べているようなことを一つ一つ、全国規模で行うことが求められています。そのチャレンジの大きさが良くわかるのではないかと思います。  抵抗があっても一人一人発言をしてもらう、知事も頭を下げる、逆風が吹かないように注意しながら登用する、家庭や制度や施設などの変革と連携しながら変革する…そうしたエッセンスを学ぶことで、横展開をしやすくすることも大事になるでしょう。  うまくいった例のエッセンスと同時に、どのように抵抗勢力に打ち勝っていったかのエッセンスを学んでいくことが大事だ、と感じさせる記事でした。

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